STRONG ZERO

酒は人を詩人に変える
酒に逃げた人間は逃避元の憂世に
そして逃避先の桃源郷に詩を寄せる
飲んだ酒は喉から胃へと下る
しかし悲喜交々は喉をせり上がり
溢れ出すその出口は唄うたいの口である

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また至らぬことを口にしたのではないか
目も当てられぬ醜態を晒したのではないか
もはや取り返しは付かぬのではないか
ならばもう死ぬしかないのでは

後悔と自己批判の夜が始まる予感
閉塞と陰鬱に取り込まれる悪寒
そんな僕に福音をもたらしたのは
ストロング酎ハイの缶の開く音だ

血中のアルコールに中枢神経を殴られる
極彩色のテレビがネオンサインになる
体がめり込んでゆく布団の感触だけが自分を取り巻く世界と化す

自分に鞭を打ってでも気分を上げよう
ユーロビートを聴こう 映画を観よう 鳥の語らいを聞こう
さもなくば思考は蟻地獄に沈む
手にした缶は諸刃の剣

カラフルな事象が脳髄を踏み荒らして去る
後から来るのは緩やかな気怠
聖母の胸での安らぎへの支払いは
頭痛と共に来る午前13時に

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