映画業界の現状と現実(2023)
2023年の映画作品についての話題も、アカデミー賞の受賞式が、終わり、区切がついて、アカデミー賞受賞作品が、最後のひと稼ぎをしている感じです。
さて、2023年の映画業界は、どんな感じであったのか、多くの映画賞の受賞結果から、注目された作品は、知ることが出来ます。
では、ビジネスとしてはどうだったのか、業界団体の中心とも、言える映連が、毎年発表している興行収入のデータをみれば、概要は掴むことが可能です。
ときどき、SNSなどで、コケたとか、ヒットしたならもっとクリエイターへ還元すべきだとか、といった批判や非難の発言が、見受けられます。映画は、エンターテインメント産業であり、生きる為に絶対に必要なレベルの産業を衣食住の最低限度の確保においてなければならないとするなら、それには含まれないでしょう。また、文化でもあるもののビジネスでもあります。ビジネスである以上は、損失を出してまで行うものではないとなります。
ビジネス視点で、日本の映画産業の実情をみてみるなら、集客で言えば、興行収入10億超えた作品は、大成功作品と言えます。コケた作品とは言えません。利益視点では、劇場としては、興行収入10億超えた作品は大成功作品となります。劇場にとってはコケた作品ではありません。配給、製作としては、買付原価、製作費と配給収入との関係、2次利用収入などを含めての評価になるので、作品毎に興行収入の求められる基準が変わってきます。よく言われるのが、製作費の3倍〜4倍の興行収入が無いと赤字になるといった感じでしょうか、しかし、実体としては、製作費と同額の興行収入でも充分だとされる作品もあったりします。配収、2次利用などの売上が、製作委員会の出資額の8割が戻ればまずはOKとも言われていたりします。興行収入は、作品により、契約で分配比率が決められますし、劇場への保証などもあったりするので、一括りにはいえないものの、劇場4〜6割、配給2割、製作2〜4割、程度と言われています。興行収入1億の作品なら、製作に2〜4千万となり、2次利用で4千万入るなら、6〜8千万売上、これが製作費の8割なら、製作費は8千万〜1億の作品が出来る訳です。製作費と興行収入が同じで充分となります。
さて、製作費の主な部分は、制作費に当てられます。管理費や宣伝広告費なども含まれますが、宣伝広告は、基本は配給会社が行うので、製作費には殆ど含まれないのが通例です。出資された製作費の大半は制作費に当てられます。
制作費は、企画費、ディレクション費、編集費、グラフィック制作費、音響効果費、ナレーション費、スタジオ費、撮影費、撮影機材費、ロケ費、出演料などが含まれます。実際に制作するにあたり、まず必要になるのが企画費です。このコストが予定オーバーになり製作中止になった作品も多いです。企画費の主なコストは、「映画化権料」「脚本開発費」で、一般的には映画の総製作費の2.5~5%と言われている様です。原作者、脚本家に入る収入は、企画費の予算で決まるものになります。映画のヒットに関係なく企画段階で交渉により決まるものだとなります。ここで予算内に収まらないなら映画は出来ない事になる訳です。
さて、日本の映画は、どのくらいの予算をかけれるのでしょうか、それは、興行収入から概算する目安が出てくる事になります。市場規模を超えた投資は赤字になるからです。もちろん、赤字になっても構わずに創るべき作品もあるかと思います。
2023年の邦画興行収入は、1481.81億円、作品数は676本です。平均すると1本当りの興行収入は、2.19億となります。平均製作費は約1億と言う感じになるのでしょうか。ただし、これは、10億超え大ヒット作品を含む場合です。10億超え作品を除くと、作品数642本、興行収入342.71億となり、平均すると1本当り、5338万円となります。つまり、興行収入5000万は優秀な作品と言えるレベルとなる訳です。製作費3000万は、平均的な作品なのだとも言えるでしょう。映画1本で、赤字にならない様にするのは無理な業界であり市場であるとも言える訳です。よく、10本創って1本当たれば良い、それでトントンだっと言われますが、その通りだと言えるでしょう。
残念ながら、日本のエンターテインメント市場規模は、人口減少もあり、拡大は見込めません。国内で売上規模の拡大は厳しいでしょう。今後は、海外展開を見据えていかざる得ないとも言えます。
アメリカ、インド、中国の様に市場が大きいところは、あまり参考にはならないでしょう。韓国や香港、台湾の様に国内やエリア市場の小さな国や地域が、行っている海外展開や、政府や行政の支援策を参考にすべきなのでしょう。映画文化の維持という視点では、公的な支援は不可欠になっているとも言えます。日本政府のクールジャパン施策は、問題や課題が多いのは間違えないものの無いよりはましです。より良い政策施策に政府、行政の皆さんにはしてもらう必要がありますが、その為には業界からも要望や要請、協力を行っていく必要があるでしょう。
2024年、今年は、どんな作品が登場し、どんな作品がヒットするのか、業界はどの様に変化していくのか、行政や政府などの支援はどう変化するのか、注視していきたいし、注目していきたいものだと思います。
一般社団法人日本映画製作者連盟(映連)2024年1月30日発表
【2023年興行収入】
2214億8200万円(3.9%増)
[邦画] 1481億8100万円(1.1%増)
[洋画] 733億100万円(10.2%増)
【2023年入場数】
1億5553万人 (2.3%増)
【2023年公開本数】
公開本数 1232本(7.7%増)
[邦画] 676本(6.6%増)
[洋画] 556本(9.2%増)
興収10億円超え邦画34本、
興収合計1139億1000万円
うち12本アニメ興収合計481億円と4割超
実写邦画上位
『キングダム 運命の炎』56億円
『ゴジラ-1.0』(55億9000万円)
『ミステリと言う勿れ』(48億円)
10億円超洋画15本
興収合計483億2000万円。
洋画実写上位
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(54億3000万円)
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(43億1000万円)、
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(38億3000万円)
【邦画アニメ・興行収入10億円以上】
『THE FIRST SLAM DUNK』 (158億7000万円)
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』 (138億8000万円)
『君たちはどう生きるか』 (88億4000万円)
『ドラえもん のび太と空の理想郷』 (43億4000万円)
『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』 (41億6000万円)
『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』 (29億2000万円)
『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 -とべとべ手巻き寿司-』 (24億7000万円)
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 (24億7000万円)
『映画プリキュアオールスターズF』 (14億6000万円)
『BLUE GIANT』 (13億円)
『かがみの孤城』 (10億9000万円)
『劇場版シティーハンター 天使の涙』 (10億6000万円)
(2024年1月時点)
【洋画アニメ・興行収入10億円以上】
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』 (140億2000万円)
『マイ・エレメント』 (27億円)
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 (11億1000万円)
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