財務モデル構築(1)

ひろです。
ということで、過去の記事をざっとおさらいしていきたいと思います。
まずは財務三表のモデルですね。

おさらいとなりますが、財務三表は損益計算書(Profit and Loss statementでPL、またはIncome StatementでIS)、貸借対照表(Balance SheetでBS)、キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow StatementでCF)、の3つですね。

~ここから過去の記事~

「三表とは何か?」という詳細は他のサイトや書籍にお任せするとして、簡単に言うとPLは「どれだけ儲かったのか?」という当期の利益フロー、BSは「今、資産・負債はどうなっているのか?」という当期末時点のストック、CFは「現金はどう動いたのか?」という当期の現金ベースの儲かり方(フロー)を把握するためのものです。

特に「設備投資(CF)を現金支出」→「何年かで減価償却費(PL)を計上」、はCFとPLがずれる典型ですね。既に設備投資実行時にお金を支払っているので、減価償却費は費用として計上されますが、お金を計上時に実際に支払っているわけではありません。減価償却費をその性格から「ノンキャッシュ費用」と呼称することもありますが、厳密には既にキャッシュは支払った後なので、「ノンキャッシュ」でも何でもありません。簡単に言えば、「前払いした費用を期間で按分して見た時にきちんと回収できているのか?」を見ているわけです。

さて、今回は具体的な企業として、業務用食材卸であるジーエフシー株式会社(GFC: Global Food Creators)を財務モデル構築のための題材として取り上げたいと思います。
「なぜこの会社か?」というと、実は、ひょんなことから既に財務モデルを構築したことがあったので、手元にファイルがあるのですよね。さすがにゼロから作るのは面倒ですし…すみません。
もちろん、具体的なファイナンス案件・M&A案件で使用されたようなものではなく、ひろが個人的に公表情報のみから作成したものです。また、当然ですが「GFCの将来業績がこうなる」と断言する趣旨ではありません。本記事はあくまでもテクニック紹介が主眼なので、「最も正しく業績予想を作成しよう」という趣旨ではありません。投資判断は自らの責任で、自らの判断に従って行って下さい。ひろが記載・提供する如何なる情報に依拠して行動したとしても、ひろは何らの責任も負いませんし、ひろを免責するつもりがないのであれば、ひろの提供情報に何ら依拠してはいけません。

財務モデル構築には、まず過去の実績値を入力する必要があります。具体的にはPLとBSの入力は必須です。
「あれ、CFは?」と思う方もいると思いますが、財務モデル上、CFの過去値はそこまで重要ではありません。財務モデル上で必要な項目は限定的なので、たとえば設備投資の金額等は個別に把握するとしても、過去値を先に入力しておく必要はあまりありません。財務モデルの将来値策定のために使用した項目に合わせて、過去値を入力するというのもよいでしょうが、今回は一切入力しないで進めていきます。

また、今回は2013/3期~2015/3期までの実績をベースに、2016/3期の予想値を出した上で、2017/3期~2021/3期(5年間)の予想値を出しています。
これは単純にひろが個人的に作成したのが2016/3期の第3四半期決算が出たところまでだったので、一度2016/3期の予想値を出して、2016/3期末時点を基準日として、その後5年間の計画値を作成したからです。
当然、既に2016/3期決算は公表されているので実績を入力してもよいのですが、やはり面倒なので(笑)そのまま使用しています。ご了承下さい。

さて、ここからは最後にリンクを張っているファイルを、先にダウンロードしてお手元で開きながら見た方が分かりやすいと思います。

PLの入力

モデル上、PL/BS/CFを別シートで管理することもありますが、私は1枚にまとまっているのが好きなので、一番上にPL、次にBS、最後にCFを作成します。決算短信等ではBSが一番上ですが、モデル上はフローであるPLが上にあった方が分かりやすいと思います。
実績値は最低過去3年間は必要だと思います。5年間あれば長期的なトレンドもわかりやすくなります。今回は3年間入力することにします。

上場企業であれば、基本的にはInvestor Relations (IR)のページが用意されており、そこに決算情報などが開示されています。GFCも当然、こちらに準備されています。
決算情報は決算短信、または四半期報告書・有価証券報告書に記載されています。一番詳細がわかるのは有価証券報告書ですが、年度末の決算だけですし、決算短信の方が早く開示されるので、普通は決算短信を見ればよいですが、詳細を見たい時は昨年度末時点であっても有価証券報告書を見る、ということになると思います。

さて、PLは基本的に「入力可能な情報を全て入力して終わり」ということでよいでしょう。販管費の内訳もあったので入力しています。また、その際は給与手当、賞与引当金繰入額…といった項目は全て「人件費」として一まとめに記載しています。この辺りは細かすぎてもあまり意味がなさそうです。

画像2

営業利益に減価償却費を足し上げることで、EBITDAも計算済みです。のれん償却額は存在しないので、加算対象は減価償却費のみです。

また、下に今後モデル構築のために必要となりそうなパラメータも表示しています。
売上高成長率や各種マージンです。なお、販管費の荷物運搬費は売上に連動しそうなので対売上高比率ですが、人件費については売上に完全連動(「売上が下がったのでその分だけ給料下げて利益率を維持します! 人を切ります!」)、というわけにもいかないので、増減率を表示しています。今後将来値を策定する上で、固定費的に扱うための布石ですね。

とりあえずPLはこんなところでしょうか。

BSの入力

BSも同様に実績値を入力していきます。こちらも細かな項目は「その他」でまとめてしまいます。

画像2

運転資本として代表的項目である売掛金や在庫、買掛金の類は独立項目として出しておいた方がよいですね。

借入金は特に存在しない会社ですが、「レボルバー」という項目を追加しています。
これは、将来予想値を策定していく中で、「現預金が枯渇して負の値となった上でBSがバランスしている!」みたいなことを避けるため、現預金が枯渇する前に資金調達をするように設定するためです。なお、「BSがバランスしている」=「資産合計と負債純資産合計の金額が一致している」の意味です。
もともとはrevolving credit facilityなので運転資金でないと引き出せないので「現金が枯渇したから」なんて理由が認められるはずもないのですが、モデル上は引き出せることにしています。まあ、「何らかのファイナンスをこれだけ行う必要があります」と把握するために使用していると考えてください。投資銀行のファイナンス提案なんかは当然、こういった試算に基づくことがあります。

また、負債純資産合計の下に「Check」と記載して「OK」と羅列されていますが、これは資産合計と負債純資産合計の数値が合致しているかをチェックした結果を表示しています。「OK」なら合致しています。
これは、主には将来予想値を作成する中で、BSのバランスが保たれているかをチェックするためのものです。

また、各種回転期間も作成しておきました。売掛金は売上高、在庫・買掛金は売上原価に対する回転期間、としました。

さて、今回はこんなところでしょうか。次回は2016/3期を作成し、できれば2017/3期~2021/3期の予想値の作成に入りたいと思います。

~ここまで過去の記事~

以下、ここまでのファイルをアップロードしました。

ではではまた。

補足:財務モデルでの文字色

財務モデル上、主に以下の通りの色分けをしています。

黒文字:数式を使用している場合
青文字:数値をベタ打ちしている場合
緑文字:数値を他シートからリンクしている場合

うーん、noteでの文字色の変え方、分からん(笑)。

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