「望ましい投資単位」(3)補足

最近『最後通牒ゲームの謎 ◇進化心理学からみた行動ゲーム理論入門』を読んでいて人間不信になった、ひろです。


冗談です(笑)。でも面白い本でしたからお勧めです。

最近は書籍については、図書館で入手可能な本は、多少待ってでも図書館で借りて読んで、①それで満足するなら終わり、②手元に置いておきたいと思ったら購入、という段取りを取っています。
昔は「とりあえず買う」という行動をとっていましたが、あまりエコ(環境的にも経済的にも)でもないですしね。
図書館も今どきはネットで予約でき、ネットで通知もされるので、取りに行ったりは手間暇的にもそこまで大したことではなく、かなり気に入った行動様式です。

余談が長くなりましたので本題に戻りましょう。

本記事の趣旨

さて本記事は「望ましい投資単位」についての補足として書いています。
ひろとしては(1)(2)で終わりと思っていましたが、なんと事後的にニッセイ基礎研究所から、『株式の投資単位と株式分割-株式分割による投資単位の引下げを市場は好感』というレポートが出されていたのですよね。

なかなかためになる内容があったので、補足として本記事でも紹介することにしました。

レポートにおける実証分析

さて基本的にはひろが紹介したような内容も重複してカバーされているレポートなので、重複する部分の紹介は割愛します。

本レポートで特筆すべき点は、なんといっても株式分割の株価影響について「2010年1月から2022年1月に株式分割を実施した約2,000社を対象に集計を行った」というところです。
ご想像のつく通り、「自らデータを取得し、加工し、分析する」という行動はとにかく時間も労力もかかります。著者はQUICKデータベースを用いたようですが、「株式分割」というイベントを起こした企業データや日付データ、前後の株価データ等は、このような有料のデータベースを用いなければ著しく困難ですから、実務的にはお金もかかります。
ひろでは「可能性」としてのみ提示できる内容が、著者は実際の「分析結果」を提示できる、ということになります。

著者は、約2,000社のうち、売買単位(単元株数)の変更と株式分割を同時に行った企業については除外し、純粋に株式分割のみを実施した約1,600社を対象に分析を行いました。
2010年1月~2022年1月に株式分割を実施した企業の、前後10営業日の株価騰落率の平均は、以下の通りになったとのことです。

ニッセイ基礎研究所
株式の投資単位と株式分割-株式分割による投資単位の引下げを市場は好感』より

上図の通り、公表日を境に顕著に株価向上の効果が観察され、株式市場に対して、株式分割が何かしらのポジティブなメッセージを有していることが明らかとなりました(効力発生ではほぼ変化がないことから、公表時点でその効果は発現する)。

ひろも指摘した通り、「一義的には経済的には中立的」であるはずの株式分割が好意的に評価される背景として、諸種の理由からの流動性向上等はありうる所でしょう。

前後10営業日の影響ということで短期的な内容ではありますが、中長期的な影響の分析は、他の要因の影響も大きいので、ほぼ不可能であるのが残念な所ですね。
残る話としては「イベントの公表に短期的に市場が反応しただけであり中長期的には効果は消失する」可能性、でしょうね。
これは「あり」とも「なし」とも言えないはずで(そもそも中長期的には株価自体もどんどん動くので、流動性云々の話も持続しない)、現時点では「わからない」が正しい態度でしょうね。わかっている人がいれば、是非とも教えてほしいです。

しかしこのように、様々な人が様々な角度から情報を分析、発信、交流する中で、知見が深まることには感慨深いものがありますね。

ではではまた。

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