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精霊の舎-40(連続短編小説)

マギの心の中に潜り込んだ
ガイヤは、そこが限りなく続く緑と、
美しい花々に満ち溢れている
ことがわかった。

そして人の魂が描く世界にこれほど
穏やかな光景があることに改めて
驚いた。

そして、その心には今、まさに
ホンナが存在していた。

それは、マギの庭を覆う草木であり、
一輪の白ユリでもあり、
森を抜ける優しい風でもあった。

しかし、また、かなりの部分に
カイの姿が残っていることも
確かだった。

そこの湧く、緑に輝く泉の自分の姿が
映った瞬間、ガイヤは、マギの庭に
佇んでいるのに気づいた。

ガイヤはしばらく、
マギの美しい庭をさまよった。

ここは、彼女の心を
映し出した場所なのだろう、
色とりどりの花が咲き乱れる丘、
大きな樹々が茂る森、
桃や葡萄がたわわに実る果実園、
青々と野菜の育つ畑。

そしてエメラルド・グリーンに輝く
温かい泉。

どのくらい歩いただろう。

疲れるどころか、すっかり心洗われた
ガイヤは、美しいソプラノを耳にした。

              続


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