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精霊の舎-50(連続短編小説)

何色もの光が炸裂し、
二人がやっと目を開いた時、
そこが、とあるバーであることがわかった。

薄暗い照明の中、
ロックが鳴り響き、
壁や天井には、
アイリッシュ・パブさながらの
フラッグやポスターが貼りめぐらされている。

見覚えのあるダーツ。

薔薇の模様の壁紙や椅子。

「・・・うそ・・・」

マギが思わず声をもらす。

二人はさっきの衣のまま、
バーの片隅に立ち尽くす。

だが、周りの人間には、
その姿が見えていないらしい。

ボトルがぎっしり並ぶ
カウンターの中に、
楽しそうに働くカイの姿があった。

これは、マギの過去生なのだろうか、
それとも・・・。

「アーク、灰皿ちょうだい!」

その一言で、再び空気がゆれた
ような気がした。

しかし、それは、心に受けた衝撃が
大き過ぎたせいかもしれない。

客の一人にそう言われたカイは、
にこやかに毒づきながら、
灰皿を渡す。

「帰るとき、ちゃんと返してくれよ」

マギは、ホンナの腕に
ぎゅっとつかまった。

これは、マギの過去生でも、
おそらく未来でもなく、
マギの物語の中なのだ。

マギが、当時、バーで働いていた
青年カイをモデルにして、
現実に一番近い設定で書いた物語の
一場面なのだ。

その中で、カイは、アークという名で
登場している。

「・・・どうして?
ホンナ、どうして?
これは単なる架空の世界?」

                 続

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