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精霊の舎-52(連続短編小説)

そして、ホンナの隣で目を
見張っているマギに目配せする。

「あんたの世界は居心地いいよ」

そう言って屈託なく笑うガイヤに、
ホンナはもう一度尋ねた。

「ガイヤ、ここはどこなんだ?」

アークは、ちょっと素に戻り、
そしてすぐに、それをごまかすように
髪をかき上げる。

「さあね。たぶん、普通の世界だよ。
でも、今、気が付いたんだけど、
ここはマギが作った架空の世界ってことも
ありえるわけだ。
どっちにしても、俺にとっては
実在している世界なんだから、同じさ」

自分の描くアーク同様の
いたずらっぽい笑みを浮かべる
カイを見て、マギはなぜが
胸が苦しくなった。

「あなたはここで、アークとして
生きていくの?」

「ああ、君の創造した世界で、
君の望むアークとして生きていくんだと思う」

カイの即答が、マギにはひどく意外に
思えた。

「・・・精霊としての役割を破棄しても?」

今度は、ホンナからの、
低い口調の質問に、
ガイヤは、カイ、
あるいはアークそのものが
おどけた調子で答える。

「あれは、知ってると思うけど、
あなたに近づきたい一心で
手に入れた役割にすぎない。
我ながら、健気にも、
よく精霊のポジションなんて
手に入れたもんだと思うよ。
だいたい、マギ、俺にまず
精霊なんてものが似合うと思うかい?
神様の目って、案外節穴だよね」

自分の創造したアークにそう言われて
マギは思わずうなずいた。

アークは大らかに笑う。

「正直だね」

               続

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