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ライセンス

店頭で色々と、特にスニーカーの話をする時に良く口にするワード。

『ライセンス』

直訳だと"免許"とか"許可"という意味ですが、
業界的には"ブランドの名前を使って商品作ってもいいよ"
という権利みたいなもの。

スニーカーに限って代表的なものだと
converseやVANS、PRO-Kedsなどなど。

まずはconverseについて。

converseは2001年に倒産。

そこに日本の伊藤忠商事が資本参入して翌年に
"コンバースジャパン"を設立します。

更にその翌年にアメリカのconverseはNIKEに買収され、
今もなお子会社として存続しています。

店頭でも良く尋ねられる"CT70"はアメリカコンバース社の企画モデルで、
"日本以外の国"では普通に流通しています。

日本はと言うと
前出の"コンバースジャパン"が企画したモデルのみが流通していて、
ことコンバースに関しては海外企画の商品が国内に持ち込まれることを
かなり厳しく規制されていて、
そのCT70などを店頭で売ることは原則としてNGです。

昔からのコンバース好きとしては納得行かない部分もあり、
お隣の韓国に行くだけでも普通に販売されているのですが、
2011年からは個人での持ち込みに関しても同様にNGとなりました。

最悪没収されても異議申し立ては通用しないと考えていた方が良いです。

細かな部分は割愛しますが、
本家本流としてはもちろんアメリカのコンバースです。

厳密に言うとコンバースに関しては少しだけニュアンスが違うのですが、
コンバースジャパンが作って国内で流通するコンバース製品が、
"ライセンス商品"(名前を使って作っていいよ)という事になります。

めちゃくちゃコンバース好きな一個人としては、
"純粋な血脈"って考えるとどうしてもconverse USAの商品だと思うんです。

コピー品って言葉を使うとなお悪く聞こえますが、
それでもやっぱりそう感じざるを得ないと言うか、
"儲かるから"っていうのがライセンス商品の根底で
全てが模倣なんですよね。

これはこの後に続くVANSもPRO-Kedsに関してもそう思っていて、
どれほど魅力的なプロダクトであっても、
そこには本家の血は一滴も流れていないと。

その2ブランドはと言うと、
VANS=ABC-MART(株式会社エービーシー・マート)
PRO-Keds=Asbee(株式会社ジーフット)
がライセンス商品の企画・販売を行っていますが、
この2ブランドに関しても本国アメリカはアメリカで
しっかりと本家の企画生産を行っています。

ただコンバースに比べると全然ユルさがあって、
VANSなどは海外企画の商品("インター"なんて呼びます)は
ABC-MARTにも同系のBilly'sにも並びますし、
個人で買ってこようが並行輸入しようがさほど規制はありません。
(気持ち良くはないでしょうが)

それを言えばうちで扱っている
VISION STREET WEARなどはアメリカのブランドでありながら
アメリカではもうスニーカーの企画も生産も行っておらず、
靴に関しては日本の会社が企画生産しています。
(アパレルやグッズは本国も継続中)

ここまで知った上で、
"じゃあ国内のライセンス商品の方が偽物じゃん"と思うかどうか。

そもそもライセンスブランドなんて今や溢れまくっていて、
それは靴に限った事ではありません。

恐らく僕の知らない分野にだってたくさんそんな物はあって、
ライセンス商品とはまた違うのかも知れませんが、
以前家電屋さんで店員さんから
"東芝のDVDプレーヤーは本当は〇〇社製で名前だけなんです"と聞いて、
もうブランド名だけでは何も分からないなと思いました。

なので個人的には知って納得した上で、じゃないかなと思います。

ただそこが問題で売る側にどれだけそれを知っている人間がいるか、
更に知っていてもわざわざ伝えるかどうか、という事。

僕は馬鹿正直に話します。

そしてその上で
「でも格好良くないですか?」と付け加えられるものしか仕入れないので。

"純粋な血脈じゃないから"と
切って捨てることもあれば拾うこともあります。

古い人間の性で生産国にこだわってみたり、
そういったライセンス物を毛嫌ってみたりする中で、
そこを越えてくるような魅力的なプロダクトに出会ったときは
素直に評価できるようにセレクトの基準はフラットに。

訳の分からない"レア物"なんて俗的な価値感が横行する
現在のスニーカー市場だからこそ、
背景や歴史はできるだけ伝えたいし知ってほしいと思いますが、
一番純粋なのは「あ、かっけー!」という一目惚れだけで
モノ選びをしてそれを上手に着こなせる人たちだと思います。

嘘はもちろん、無駄なコトやモノは削ぎ落として、
価値を感じてもらえるコトやモノを提案していくためにも、
今回の"ライセンス"といういかにも業界人だけが
格好つけて使っているような言葉も
参考までに知っておいてもらえたらなと思います。

それが「セレクトショップ」という非生活必需品的なお店の存在意義で、
スタッフの為すべきことだと。

僕は思います。

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