見出し画像

究極なまでの無難 スズキ ソリオ(MA26S型) 試乗レビュー

今回は、息抜きレビューというか、最近自分が興味ある車からレビューを書いてストックしていたのだが、そのストックが3ヶ月くらいの時を経てなくなってきたので普通の車のレビューでも書いてみようと思う。
ということで選ばれたのはソリオ。過去に現行型の方はレビュー済みだが、納得行くものではないのでどこかで再レビューしようかと思っている。ネタが尽きたらやります。
今回はMA26S、先代のソリオになる。

内装は使いやすさ重視

内装はとにかく使いやすさというか収納の多さに驚く。
シフトレバーの上のあたりには大きい収納があり、ここにデキるビジネスマンならペンだったり名札だったりを、自分ならスマホなどを置いておくスペースに使える。シフトレバーとは若干干渉するが、ルーミーのように2つに分かれてないので有効活用できる。
助手席にはテーブル的に使えそうな収納があり、財布程度であれば楽勝に置ける。なんでも気兼ねなくおくことができる。
もうひとつは運転席前で、隠し収納的に使うことができそう。この収納の下にも若干のスペースがあり、ここにもスマホなどをおくことができる。

メーターはシンプルな3眼メーターで、視認性はかなり高い。デザインもかっこいい。右のディスプレイがモノクロで画素も粗いのが残念だが、新型のタコメーターがディスプレイの中に省略されてしまったメーターよりもこちらの方が質感高く感じる。
スズキではよくある機能だが、エコメーターなるものがついている。アクセル開度に応じてメーターの周りの色が、通常時は青、エコ運転時は緑へと変化する。この変化もじわっと変化するようになっており、各部までこだわっていることが伝わる。マイルドハイブリッド車では充電時にこのインジケータが白になるようだが、今回の試乗車は非マイルドハイブリッド車なのでその表示を見ることはなかった。
これまたスズキあるあるで、下位グレードはマイルドハイブリッドがつかないどころか、アイドリングストップ自体がない。これは燃費に大きく影響するほか、発進加速にも影響する。しかし、このグレードの大きなアドバンテージとして、「軽さ」がある。これはマイルドハイブリッド搭載車に対する大きなアドバンテージだろう。

クルーズコントロールが標準でついているのもいい。なぜかスズキのACCはセットした時の車間距離が真ん中にセットされてしまうが、

先にこの車の致命的とも言える内装の弱点を2つ。

ひとつ目は、メーターの操作がしづらいこと。なぜかハンドルの左側の裏にあるINFOボタンからの変更になる。隣にTRIPボタンがあることも手伝って運転中は操作しづらく、こうなるならステアリングボタンにしていただきたい。他のスズキの車種でもINFOボタンは採用されているが、ステアリングボタンとして配置されているのがガチで謎い。なんでソリオだけは新旧ともにこの配置なのか。

もうひとつ。ウインカーレバーが絶望的にやすっぽい。一昔前の軽自動車のようなガチャガチャしたような質感で、クラスを考えたとしてもダントツに安っぽい。それでも電子式よりはマシだが、事実としてウインカーレバーだけはやすっぱさが気になる。

走りはとにかく無難

走りに関して一言でまとめるとすれば、とにかく無難ということだろう。
個人的な意見にはなるが、色々な人が乗る車であればあるほど、ストレスのない車こそ至高だと感じる。

このソリオはどこをとっても上手くまとめられている一方で、乗ってから5分後には忘れているような没個性的な走りともいえる。今回は、その走りについて分析していこうと思う。

加速は過不足なし

加速については、過不足ないと言ったところである。実はこれって素晴らしいことで、このクラスでよくあるパワー不足感がないということになる。
以前トヨタのルーミーに乗った際は普通車としては絶望的なパワー不足を指摘したが、ソリオは1.0ではなく1.2Lであること、4気筒エンジンなので高回転の伸びがいいこと、低回転はCVTとエンジンの絶対的な排気量によりそこそこ力強いことや軽さも手伝って、ルーミーと比べても圧倒的にパワーがある。

このクラスにパワーを求めるのはお門違いとも言われがちだが、個人的にはこのクラスこそそこそこのパワーが必要だと考える。もちろん税金面や燃費のことも考える必要があるので、そこが小型車の難しいところなのだが、このソリオはそれを両立している。充分でストレスない加速性能と軽自動車にも引けを取らない燃費性能を両立している時点で、このクラスのベストバイはルーミーではなくソリオと言える。

燃費に関しては大体実燃費で16から18くらい、ルーミーはよくて14といったところで、1.0Lのパワーのないエンジンをトランスミッションでローギア化して、まともに走らせようとしていることの弊害が出ているのかもしれない。ただ、ルーミーはおそらくだがターボにして加速を得たとしてもNAに対しては燃費が落ちるし、それでは1.2Lのソリオとの燃費の差は開くばかりである。

乗り心地は可もなく不可もなく

乗り心地に関しては可もなく不可もなく。何か印象に残るというよりは、5分のったら忘れてしまいそうになるような乗り味で、自分も何度も乗車経験があるからこそかろうじて覚えているような感じ。
具体的には、シャシーがそこそこしっかりしており、突き上げが響くようなことは少ない。しかし、足回りの作りが少し良くないのか、若干跳ねるような動きも見られた。新型ではこの跳ねるような動きが緩和されているので、ここは進化したと言えるだろう。なので、山道を走っていて大きな突き上げがあると、ダンっと跳ねてしまい、ルーミーほどではないが走っている位置が少しずれてしまう。横方向への動きにも弱く、ボディが強い割にペースはそこまで速く…とはいかない。
ステアリングのセッティングも良くないため、カーブではステアリングから無駄な振動が伝わってしまう。高速域での直進安定性も、ボディは丈夫で、150km/h巡航くらいならやってのけててしまうのだが、ステアリングの印象が非常によろしくない。

ここで少しステアリングについて。正直非常によろしくない。今まで握ってきたステアリングの中でワースト1位のものとも言っても過言ではない。結論から言うと、いくらなんでも重すぎる。切り返しの時は筋トレなのか?と思うほど重いし、交差点の右左折でも重さを感じる。街乗り車系というかプチバン系でここまで重いクルマはかなり珍しい。ステアリングの剛性感が皆無で、重いくせに上質感もないのが余計この印象の悪さに拍車をかけてしまっている。低いステアリング剛性でなんとか安定性を出そうとした結果、重くすることにしたのはスズキらしくいいアイデアだと思うが、本当に「ただ重いだけ」。他の出来が非常にいいだけにこれだけが目立ってしまっている。

ルーミーの乗り心地に関しては完全に不可の部類なので、ここもソリオに軍配が上がる。ルーミーはとにかくボディ剛性が低く、足の動きもバタバタしており、常に車が上下に動く、まるで一昔前のスーパーハイトワゴンのような時代遅れにも程があるというような乗り心地で、跳ねるような動きも多い。角のあるような段差を超えると後ろの荷物はダンっと跳ねる。それにローギアなCVTが組み合わされているため、スポーティーとも快適とも言えない。ハンドリングに関しても、上屋が重く、遅れてついてくる感じがあり、加速力とも相まってあまりハイペースには走れない。もちろんハイペース走行をこのクラスに求めるわけではないが、ハイペース走行ができるだけの「余裕」があるだけで、安全でストレスない車になる。

ブレーキタッチはルーミーの勝ち

ブレーキのコントロール性に関してはルーミーの勝利だろう。効き自体はソリオのほうが良いような感じで、きちんと適合されているのは伝わるのだが、コントロール性はルーミーのほうが上かなといった感じ。
ルーミーのブレーキは遊びが少なく、踏んだら踏んだだけ効くような雰囲気があった。最後のコントロール性もよく、ショックなくとまれるので割と個人的にはお気に入りだったりする。
対するソリオは、新旧ともに若干剛性感が不足しており、ルーミーは硬いゴムの塊を踏んでるような感触だが、ソリオはちょっと強く踏みつけると変形しそうな、少し頼りない雰囲気がある。最後のコントロール性もガソリン車にしては悪く、どう頑張ってもカックンになってしまう。この世代の小排気量ジヤトコCVTのクルマたちはみんなこんな感じで、ノートのガソリンも、その他スズキや三菱、日産の軽自動車もこんな感じだ。スイフトも軽い割にはコントロール性は良くないので、ソリオだけの問題ではないのだろうが、もう少し頑張ってほしいと思ってしまうのは事実だろう。

まとめ

このソリオに乗っていると、現行型がどれだけしっかりとユーザー層を見極め、その人たちに適合させてきたかが伝わってくる。MA26S型はどちらかというと万人受けするように作られており、その中でもメーターのデザインやテール回りのつくりなど、各部にコストがかかっているのが分かる。
そもそも軽自動車のスーパーハイトワゴンが全盛の時代のクルマで、「ソリオを買うなら燃費もいいし税金も安いしスペーシアでいい」といわれがちなところもあったかと思われるが、その中で、ソリオを選ぶだけの理由はしっかりあるだろう。もちろん初代のスペーシアも大変出来のいい車で、車重が軽いことの良さがしっかり表れていると感じる。しかし、ソリオにはスペーシアではなく普通車を選ぶだけの理由があるだろう。1.2L4気筒エンジンの余裕や、拡幅されている全幅による踏ん張り感や乗り心地の安定感は、スペーシアにはない。
これを作るなら正直スーパーハイト軽自動車にもっとコストを割く、というのも一つの戦略で、正直ルーミーに関してはタントに対して選ぶメリットはそこまでないような気もしてしまう。
トヨタによるソリオ絶対殺す4兄弟によって存在感が薄れてしまった不遇なクルマという印象があったが、実際は当たり障りのない、万人受けするように作られた素晴らしい完成度のクルマである。中古での購入もかなりありなのかなと思ってしまうほどだったが、プチバンにしてはありえないほどのハンドルの重さだけは念頭において試乗してみるのがいいかもしれない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。スキやフォローよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?