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リーフだけが持つBEVならではの魅力 日産 リーフ 試乗レビュー

今回は、日産のリーフに長距離試乗したので、レビューしていこうかと思う。

リーフといえば、どのような印象を持つだろうか。古のBEV?電気自動車の先駆け?自分はそのような印象を持っていた。
ただ、アリアやサクラも販売しており、BEVの作り方や耐久面でのノウハウを培ってきた日産にはない魅力がある。今回は、その魅力について紐解いていこうかと思う。

内外装に感動はない

内外装には特に感動はなく、普通の車だなというのが印象。
外装に関していえば、フロントのデザインは笑ったような顔の中にシンプルさはあるが、初代のような未来感や圧倒的な「よくわからないもの」感はなく、なんだかよくありそうな、普通の車になった。しかし確かにEVらしいなと感じる部分はある。何を隠そうグリルがないのだ。ガソリン車ならグリルがありそうな場所にはピアノブラックの加飾がされており、普通の車に見えるように、のっぺりしないようにデザインされている。脳死でVモーションにするだけではなく、今のセレナやサクラのようなデザインセンスを感じる。

横から見るとなんともアンバランスである。空力を意識したようなワンモーションなフォルムではあるが、前のタイヤはかなり後ろにあり、電気自動車であればもっとフロントタイヤを前出しして、ホイールベースを伸ばし、乗り心地を向上させたりバッテリーのスペースを多くしたりすることもできそうだと感じる。このせいで、前につんのめったかのような姿勢になっているのがなんとも違和感。ただ運転席の近くにフロントタイヤがあるためか運転自体は大変しやすく、同じようなボディサイズのMazda3と比べても狭い道での取り回しはかなりしやすい。

内装に関しても未来感はない。
メーターは初代のような先進感あるものでもなければ、システムオンにした時に何か音が鳴るようなギミックもなく、一昔前の日産車でよく聴く「ピピッピピッ」というような音だ。
エアコンはボタンタイプで、タッチパネルになっていないのは好感が持てる。ただエアコンの状態はディスプレイに出るようで、しかも常時表示されない。しかもこのナビ、起動まで少々時間がかかる。エアコンが今何度で設定されているのかや風量くらいは常に表に出しておいてほしいところである。

このナビシステムに関しては、言いたいことがかなりある。そもそもディスプレイが艶消しのような素材になっており、尚且つ全くドライバーの方を向いていないので、西陽がさすと全く見えない。カメラやメニュー、オーディオなどのボタンは外に出ているので使いやすく、CarPlayもついているので日常使いには困らないが、動きはもっさりしており、純正のナビも賢いとは言いづらく、このナビに頼ることはまずできないと思った方がいい。

電子シフトの使い心地は悪くなく、慣れさえすれば問題なく使える。この奥にはepedalのスイッチやプロパイロットパーキングのスイッチがある。

メーターに関して。これも一般的な車でよくあるようなタイプで、デジタルのような先進感を感じることはなく、水色の差し色も未来感というよりは差し色にしかなりえていないような印象である。電費は瞬間電費も表示され、パワーのメーターはエコ表示もあり、航続距離にかなり貢献している。

シートヒーターは、ハイロー調節出来るタイプだ。今回夏場の試乗だったので活躍することはなかったが、暖房でエネルギーを食うEVには必須装備である。


走りに現れるEVにしかない要素

走りには、EVにしかない良さがよく現れていた。今回は、その良さに関して、サクラやepower車と比較しながら解説していこうかと思う。

ワンペダルドライブはこうでなくちゃ

リーフの一番の特徴というかリーフに乗る上でかなり要になってくるのはワンペダルドライブだろう。
ワンペダルドライブとは、本来ガソリン車であれば減速時にブレーキを踏むが、ハイブリッド車や電気自動車は減速時にエネルギー回収ができる。これはガソリン車と違って走っているエネルギーを使って発電できるからなのだが、これを使って回生ブレーキで減速させることができる。もちろんエネルギーを回収することで抵抗が生まれるのでその抵抗を使ったのがワンペダルドライブなのだが、今のノートやサクラでは完全に停止することができない。安全面の理由と言われているが、真相はハテナである。
それが、リーフでは完全停止まで持っていくことができるので、ブレーキを踏むことなく停車することができる。本来ワンペダルドライブの利点は、アクセルとブレーキを踏む手間を省けることが最大なので、やはりワンペダルドライブはこうでなくちゃと思ってしまう。

もちろんリーフは回生協調ブレーキなので、epedalモード(ワンペダルドライブモード)を切っていてもブレーキを踏むことでワンペダルモードとほぼ同様の電力回収をすることができる。

その肝心なブレーキのタッチだが、かなーーり特殊である。踏んでいくとバネのように変な跳ね返りがあり、そこからさらに踏み込むとキックダウンスイッチのようにカチッとなりさらに踏みしろがある。おそらく回生ブレーキと物理ブレーキの切り替えポイントが「キックダウンスイッチみたいな場所」なのだろうが、ガソリン車ではまあまずないブレーキフィールだ。回生協調ブレーキにしては最後の止まる時のカックンは少なく、コントロール性は高い。
あまりにも不思議なブレーキフィールなのと、ワンペダルドライブがかなり楽なので、自分はほぼ全てワンペダルで走行した。

加速はもはや「エグい」

電気自動車の魅力といえば加速の強さだろう。今となってはしっとりさやなめらかさの方が前に出てくるようになってきたようにも感じるが、電気自動車にしかできない魅力は加速の強さや鋭さである。

このリーフという車は電気自動車にしかできないような加速を楽しませてくれる。ガソリン車なら回転数に従って力が出るが、電気なら踏んだ瞬間から100の加速力を出してくれる。心の準備をしていたとしても、首が動くほどの加速の鋭さを味合わせてくれる。それもパワートレインからの音はほぼなく、エンジンのような音は存在しない。
もちろんガソリン車でこの感覚はなかなか味わえるものではない。絶対にキックダウンでラグは存在するし、このような踏んだ瞬間から100の力を出してくれるようなことはない。そのだんだん力がみなぎるような加速感が逆に気持ちよかったりもするのだが、やはりEVのレスポンスはガソリン車ではなかなか味わえるものではない。

かといってepower車はどうなんだというと、やはりあれも若干のラグはある。モーター駆動ではあるが、全開で踏むと発電機であるエンジンの回転数が上がるまでは加速力は100にならないような感じ。半分だけ踏むとモーターらしい加速のレスポンスは多少は出るが、すくなくなったといえどエンジンの音や振動は出るし、EV車ほどの感動はない、というのが正直なところだった。

EVの一番すごいところは、このレスポンスを持ちながら、普段乗りが楽にできることである。ガソリン車ならこの両立は難しく、どうしてもスポーティーな性能を持ち合わせていると、普段から刺激的な排気音が聞こえてしまってきたり、逆に快適な車だとスポーティーに走ろうとしても刺激が足りなかったり、と言うのはよくある話である。
EVは、過激なレスポンスという刺激を持ちながら、普段乗りは快適に行うことができる。それはエアコンの効きや足回りの動きや車体サイズの掴みやすさもそうなのだが、何よりあれだけ刺激的なレスポンスを持ち合わせていながら、モーターのトルクで楽に速度をコントロールすることができ、もちろんトランスミッションを積んでいないので「ギクシャク」の概念が存在しない(無論ファイナルギアはあるが)。

個人的にガソリン車であればホンダが一番普段乗りだとなめらかでギクシャクしないと感じるが、そもそもギクシャクする、しないの土俵にはすでにEVはいない。

乗り心地から感じる古さ

乗り心地を見ていくと、この車の古さは明確に出てしまっている。バッテリーを積んでいるはずなのにフロアは常に振動しており、これではその辺のガソリン車と変わらない。EVではあるが、オーラepowerには乗り心地では完全に負けてしまっている。
静粛性に関してもいいとはいえない。エンジンがない分ガソリン車ならエンジンの音でかき消されている音が目立ってしまっている。
たとえばロードノイズ。ガソリン車であればエンジンの音で前からのロードノイズはかき消されているが、電気自動車はパワトレからの音がない分そこかしこから音が入って来てしまっている。

正直このあたりの出来を見てしまうととてもEVとは思えない出来であるといってしまうしかない。パワトレこそ感動を味合わせてくれたが、それ以外はサクラやノート、オーラ系の新しいEVやハイブリッド車には全く敵わないというのが現状である。その分親しみやすさはあるのだが、EVであることの「感動」はパワトレから以外は感じることはない。

これくらいのEVが「ちょうどいい」

EVといえばデメリットとして航続距離の少なさや充電時間の長さがよく言われている。ただ、人間の体力的に一度に走れる距離は安全的に見ても200kmくらいがちょうどいい。
急速充電すれば30分でそれなりに充電でき、その30分の間にそのあたりを散策して戻ってくるなり、車の中で休憩するなり。EVはそのようなスローライフの生きやすさを提供してくれる。もちろんガソリン車の方がスムーズな旅はできるが、静かな電気自動車で快適にのんびり旅をするというのも、気分転換としてはなかなか悪くない。

かといって、サクラとなると、航続距離が少なく常に航続距離を気にしながら走るのもなかなかに苦しいものがある。そこで航続距離がそんなに長くもなく短くもないリーフが「ちょうどいい」という話になる。

まとめ

リーフという車、電気自動車の先駆けのようなイメージが強いが、今の電気自動車にはない魅力もあるが、一方で乗り心地やデザイン面では古さを感じてしまうのもまた事実だ。

運転すれば加速感こそ鋭く、速度コントロールはしやすいが、それはあくまで運転していればの話であり、助手席や後ろの席に乗っているとその魅力もない。パワトレからの音こそ少ないが、だからこそロードノイズや環境音など、他の音が目立ってしまっている。

もちろん面白い車ではあるが、新車で今買うほどの魅力があるのかと言われればそれは疑問符が付いてしまう感は否めないというのが正直なところである。かといって、この楽しさが新型が出る際にどのようになるのか、楽しみなような不安なような複雑な心境である。

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