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小さな高級車としての最適解 日産 ノートオーラ 試乗レビュー

今回は、ノートの高級版、ノートオーラに試乗することができた。個人的にかなり気になっていたクルマで、去年の年末に隣の県で借りれることがわかり、急なハードスケジュールではあったが試乗することができた。それくらい興味があるクルマだったということである。
ちなみにその日は5時から予定が入っていたのでそれまでには戻らなければならず、せっかく隣の県まで行ったのに滞在時間3時間ほどで帰る、というね。たまにはそういうカツカツ旅もいいのかも。

ノートとオーラの簡単な説明

結論から言ってしまうと、ノートを高級にしたのがオーラ。
違いは内装、サイズ、パワトレ。
内装は後述するのでそちらをご覧ください。
サイズに関しては
タイヤサイズ
ノート:185/60R16
オーラ:205/50R17
ボディサイズ(全長/全幅/全高)単位はmm
ノート:4045/1695/1520
オーラ:4045/1735/1525
パワトレはモータースペックがオーラのほうが若干強化されており
モーターの最高出力/トルクは
ノート:85kW(116ps)/ 280Nm
オーラ:100kW(136ps)/300Nm
となっている。
重量もノートが1220kg(Xグレード、2駆)、オーラは1260kg(Gグレード、2駆)となっており、+40kgということになる。
このアカウントでこのような数値的な部分を説明するのは珍しく、数値は数値、大事なのは実際走ってみてどうかだと考えているが、つまりはそれだけ数値的な部分が走りに出ているということであり、素性がそれだけしっかりしているということだと考えていただきたい。

内装は質感向上

オーラの内装。
ノートの内装。
画像提供: @BR06DET さん

単純なタイトルにはなってしまったが、ノートと比べるとやはり高級志向である。特に木目。昔のクルマにはよくあったが最近はめっきり減ってしまったが、オーラのこの木目の使い方は、現代車らしい未来的な内装のデザインと、昔ながらの良さを両立していると思う。さしずめ北欧家具的なセンスを感じる。

ステアリングはノートの2駆とは違い革巻きになっている。ノートも4駆になれば革巻きステアリングになり、ヒーターもつくのでかなり快適になる。オーラでは2駆からして革巻きで、質感高い、といいたいところだが、革の素材がよろしくない。ノートではモチっとした革だったので、オーラも4駆になるとそちらのものになるのかもしれないが、2駆の革の質感ではサイズが小さいと言えど高級車には程遠い。革の素材も薄い感じで、スベスベはしているし滑りもいいのだが経年劣化も気になってきそうだ。
ダッシュボードの部分には布が貼ってあり触り心地が良く、見た目もいい。それだけに、グローブボックス周りがプラ剥き出しなのが目立っている。
エアコンパネルやナビ周りはノートと同じだろう。

もうひとつ、ノートから違うのは、豪華な光り物が増えたことだろう。
例えばメーターはカラーのフル液晶となった。表示できる情報量も増え、ブレーキランプの状況、パワーメーター、エネルギーモニター、バッテリー残量etcなどノートでは同時表示できなかった必要な情報が同時に出せるようになり、運転中にステアリングボタンに触れる頻度は圧倒的に減った。そもそものデザインも秀逸で、エクストレイルやアリアにも似合ういいデザインである。裏には共通化というワードがあるが、それは内緒で…

メーターデザインは2種類あり、切り替えた時のアニメーションもかっこいい。個人的な好みは下のメーターで、メカっぽさ満載で非常にいい。

アンビエントライトも各所に入っているが、主張しすぎない感じでメ○セデスの派手派手なやつよりも個人的には好き。コストがかけられないことでよりシンプルでセンスが良くなっているような感覚がある。

シートのデザインも黒一色ではなく、グレーや茶色が使われており、ノーマルより高級感がある。ヘッドレストはフィットのリュクスの枕のようなデザインの方が高級感があると感じるが、全体的な色使いや素材はフィットと同等と感じる。

走りは良くも悪くも欲張りさん

いきなり結論となるが、ノートではなくオーラの一番の魅力は、所有満足度の高さにある。
つまり、走りだけで言えばノートでも充分いいということである。
フル液晶のメーターからはじまり、内装の質感など、カーシェアとしてではなく、所有によって価値の生まれるクルマだと言えるだろう。

静粛性は向上

静粛性は、標準のノートと同じく高い。むしろ、逆にオーラのコンセプト上うるさいわけがなく、わざわざ静粛性を落とす必要もないので当然だが、オーラになるとさらに総合的な静粛性レベルが一気に上がる。
まずメカノイズが静かになっている。ベースのノートも静かで、エンジンの音はクラス上より抑えられていると感じたが、オーラではさらにそこに磨きがかかっている。感覚的にはエンジン音はノートの2/3くらいになった感じで、高級車然としている。
車両接近音に関しても外に出ている音量は変わらないはずだが中で聞いているとノートより聞こえなくなっている。

あわせガラスが使用されており、環境音も静かになったので、総合的に音周りはワンランクテコ入れされているようだ。

タイヤノイズだけはやはりインチアップの影響をもろに受けている。ノートでは16インチの185幅だが、オーラでは17インチ、幅も3ナンバー化したボディを受け止めるために太くなっている(205幅)。扁平(タイヤの厚み)も60→50となっている。つまりは薄くなっている。

つまりはメカノイズは静かになったが、タイヤの路面への攻撃性は強くなっている、つまりはうるさい方向になっていっているということである。さすがにこの物理法則には敵わなかったようで、サーーーというタイヤノイズが気になる。
ノートではもう少し低音のゴーーという音がしていたが、あちらは室内に入ってくるメカノイズや環境音がオーラほど抑えられていないのか、逆に気にならない。

シャシーのバランスはノートに軍配か

個人的な意見ではあるが、やはりクルマにおいて一番大事なのはバランスだろう。そういう意味では、やはりノートありきの設計を感じてしまう感は否めない。しかも普段乗りでもそれが露呈してしまっている。
というのも、路面のザラザラ感がシャシーにまで伝わってきてしまっており、路面状況がオーラのコンセプトに対して不必要なほどよくわかる。よく考えたらノートでもあるのだが、音が静かになってこともあってか、オーラのほうが気になってしまう。つまりはノートのほうがバランスが取れている。
これは、静粛性のほかにも、全幅やタイヤの路面への攻撃性が上がったことも関係してそうで、シャシー的にはこれが限界なのだろうと感じてしまうのが正直なところだ。乗り心地だけで言えばノートの4駆が一番いいという結論には変わりなかった。
高級車を謳っているので2駆といえどノートを超えているかと期待しただけに残念な感じが残ってしまった。となるとオーラの4駆が気になるところで、一番乗り心地がいいのか、はたまた重量でシャシーがキャパオーバーになっているのか、、

加減速はワンクラス上

みなさんは、現行型ノートシリーズで、0からアクセルをドンっと踏み込んだことがあるだろうか。ない方はぜひとも今からでもタイムズカーに登録して安全に配慮してやってみてほしい。僕のせいでタイムズカーの印象が悪くなっても責任取れません。

加速に関してはオーラのほうがいい。トルクもパワーも上なので当然と言われれば当然だが、40kg増えた重量はしっかり相殺されている。どころか重量差に打ち勝つだけのパワーアップで、この辺りはワンクラス上を感じることができるだろう。
特に上の伸びがよく、70から上は軽いノートより俊敏な加速ができる。
エンジン音もリニア感が増しており、エンジンの回転数の上昇と加速感がノートよりリンクするようになっている。モータースペックは強化されどバッテリーやエンジンスペックは据え置きなので、ノートでもこのような制御は取り入れてほしい。

減速に関しては、相変わらずアクセルだけである程度できてしまうのが便利。ブレーキの効きもオーラでは若干改善されており、ノートのようなスカスカ感も急ブレーキで止まらない感もない。
最後のコントロール性はノートのほうが軽い分やりやすい気もするが、誤差や気のせいの範疇で、よっぽど神経を研ぎ澄ませない限り全く気にならない。

ハンドリングはやはり好き好き

ハンドリングに関しては、どちらも良さがある。初期の応答性はノートとほぼ変化なしで、俊敏と言えるが、オーラのほうが全幅がある分応答したあとのロールが抑え込まれるようになっており安定感がある。
ノートには軽快さがあり、そこはオーラにはないよさにもなっているように感じる。
逆にいえばオーラのほうが重厚で、後ろまでしっかりグリップ感を持って曲がって行く感じはノートよりオーラである。しかし、ノートの4駆はもっと後ろまでしっかり使えるので、となるとオーラの4駆動に俄然興味が出てくる。

ハンドリングと関連するもので乗り心地に関して。
試乗した車両がまだほとんど新車で、まだ馴染んでないということを差し引いてもなかなか硬い部類に入ると感じる。普段乗りでも路面からの突き上げは感じるので、もう少ししなやかに動く足回りでもいいのかなと感じる。確かにノートのようなヒラヒラ感や小気味よさ、ハンドリングの良さを出して、それをノートシリーズの特徴としたいというような意思を感じるとれるには感じ取れる。しかし、ルークスやデイズからのアップサイズユーザーや、子育ても終わってセレナから乗り換える世代やその子供(初心者にオーラとか贅沢すぎるだろ)、もうフーガやスカイラインのような大きいサイズの車よりコンパクトカーが欲しいと考えている方などなど、このノートオーラという車、実はおそらく日産が本来考えているターゲット層よりもいろんな人からの需要を満たす車になっている。

それを考えると、小さな高級車としてはもう少し乗り心地を良くしてもいいのかなと思ってしまった。ただ、先にも述べた通り試乗した車両はまだ新車なので、もう少しこなれてくるとまた印象が変わってくるかもしれない。といってもこなれても硬めなような気はするけど…

まとめ

このノートオーラという車、色々述べてきたが、「小さな高級車」としてのベストバイだと感じた。確かに高級を謳うには乗り心地は硬めだが、必要十分以上の加速性能や環境音の静かさなど、高級車として必須なものは一通り揃っていると言える。
個人的な意見というか考えになるが、車において大切なのは、パッと見てわかる魅力があることである。オーラには、ノートベースといえど充分すぎるほどの魅力とコスパを兼ね備え、ノートではなくオーラを買う理由をしっかりと持たせてきた。

例えばヤリスとアクア。コンセプト的にはヤリスはスポーティーで運動性能重視、アクアは高級コンフォート重視ではあるが、電動パーキングは不採用で内装も飛び抜けていいわけでもない、ドアがベコベコで外にオーディオの音がしっかり漏れてしまっていて、走りに関してもヤリスとベースが同じということもあって、突き上げが結構あったり静粛性に関しても微妙で、正直「ただのモーターの瞬発力が上がったリアタイヤが遠いヤリス」でしかなく、これならヤリスでいいのでは、と言わざるを得なかった。もちろんいい車ではあるが、「ヤリスに対してアクアを買うだけの価値があるのか」と言われると「高級を求めるならもっと他の選択肢はある」と言いたくなってしまうのが正直な感想になってしまう。

ノートに対するオーラはどうかというと、価格差も大きい分、その辺りのコンセプトからして差別化がしっかりできている。

全体的にみてもよくできている車だと感じる。同じようなコンセプトでいくとフィットのリュクスあたりがライバルというか比較対象になるのだろうが、あちらは5ナンバー、オーラは3ナンバーというのが一番の違いである。もちろん取り回しはいいが、高級車で5ナンバーは…という方もいるだろう。
走りのバランスや完成度もフィットのほうがいいと感じるのが正直なところではあるが、サイズ感含めると、「小さな高級車」というコンセプトにおいてのベストはオーラになるだろう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。スキやフォロー、よろしくお願いします。


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