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隠れ三菱らしいクルマから万人受けするクルマに 三菱 eKワゴン 試乗レビュー

今回は、自分のクルマの車検の代車でeKワゴン、しかも最新型が当たったのでレビューしていこうかと思う。このクルマ、地味に借りられるところが少ない。ていうかハイト系の軽自動車が借りられるところがそもそも少ない。
外観は個人的には好みで、ニカっと笑った顔が可愛く、かつ顔つきもシュッとしているのでスリムな印象がある。ライトがハロゲンなのが残念ではあるが、何かしらマイチェンで変わると嬉しい。

内装は今風に

内装に関しては、上位グレードであることも相まって今風に感じる。
タッチパネル式のエアコンは初見だと若干戸惑うが、それでも以前のものより直感的に操作できるようになり、それぞれのボタンの形が変わったので操作もしやすくなった。

ステアリングは日産で見たことのある形()ではあるが三菱のマークが謎に似合っている。
ステアリングのボタンも使いやすく、マイパイロットがついていないので若干寂しい感じにはなるが、メーターもオーディオも手元でいじれるのはかなり便利である。

まずこのクルマ、何より収納が多い。

センターコンソールに当たる部分には簡易テーブルがあり、スマホを置いたり長距離走る時はお菓子を置いておくのにすごくちょうどいい。耐荷重3㎏で、あんまり丈夫そうでもないのでカバンなどをガッツリおくと多分ぶっ壊れる。

ここにはグローブボックスとは別に引き出しがついている。おそらくティッシュ箱専用になるだろう。

助手席のドアには収納が付いており、車検証等がしまえるようになっている。
2代目のeKワゴンに付いており、3代目で消えたのだが、ここでまさかの復活。個人的にこういうさりげない収納はかなりうれしい。

エアコン吹き出し口の下の部分には収納があり、スマホを置いたりそのほか名札など高さのない小物は置きやすいが、カーブを曲がった際に小さくて軽いものだと転がってしまう。現に中の人は会社の鍵をドリンクホルダーに落としたことに気づかずそのままかえしてしまい、後日取りに行った。

また、ドリンクホルダーは引き出し式から固定式に変わり、いちいち引き出す必要がなくなった。

サンバイザーには駐車券などを挟めるようになった。先代では鏡の部分についており、いちいちサンバイザーをめくる必要があったが、現行ではそのひと手間がなくなった。

ただ、ドアの肘掛けやシートの素材感が先代より落ちたのはいただけない。そもそもの縫い方が粗く、先代ではふかふかで軽としては触り心地がかなり良かったのだが、現行ではとりあえず質感のために貼りました感が否めない。

シートに関しても粗い素材になってしまっている。シートの色使いは可愛らしくていいが、素材にもう少し拘ってもいいのかなと感じた。

スタートボタンの位置も少し押しづらく、慣れの問題ではあるのだろうがせめてルークスと同じような位置の方がいいような気がした。

総じて言って、タッチパネルエアコンやパワーウインドウスイッチ周りなど、指紋がつく点は多数あり、綺麗に保つのは大変ではあるが、使いやすい内装で、軽自動車としては 質感も高い内装であると感じる。

走りは大衆ウケするものに

先代のeKは、確かに内装はよく、デザインも他にないスッキリしたものであったが、あまりにも燃費と乗り心地を優先しすぎた結果、あまり世間からの評判はよくなかったように感じる。
しかしその中にも確かに三菱らしさはあり、雪には意外と強かったり、エンジン音も非常に元気のいいもので、かつてのミニカのような系譜を感じないでもなかったり…
悪評が目立ち、このクルマと真面目に向き合い、レビューするという人は少なかったが、隠れ三菱らしい車であった先代からどのように進化したのだろうか。

加速感はかなり向上

先代のeKシリーズで一番よくなかったのは加速力のなさだろう。正直加速が良ければ、乗り心地もいいし、その分アクセルを踏まないので燃費的にも静粛性的にも非常にいいクルマであった。しかし、加速力が絶望的であるため、先代はいいクルマではあるが、乗り手を選ぶクルマとなってしまった。それくらい遅いクルマを乗りこなすって実はレベルが高いことなのだ。

現行型になり、エンジンは三菱製からルノー製に変わり、トルクも増強され、馬力も3馬力上がった。この効果は想像以上に大きい。特に低速トルクが大変改善され、先代で4000回転回さないと加速しないような上り坂でも、3000回転でしっかり交通をリードできるほどにまで改善された。CVTがかわって加速時のセッティングもかなり変更が加えられたため単純比較はできないが、エンジン単体の能力がなければこれは成せないだろう。

CVTの変更について。加速時は体感先代のDsモードくらい回転数をスッと上げてくれるので非常に軽快。エンジンのトルクが増強されたおかげかダイレクト感が増した。高速域での速度調整もやりやすく、先代よりレスポンスが上がった。
ただ、25km/h未満の範囲での加減速は常にギクシャクしており、もちろんこれはCVTが苦手とする動きではあるが、ホンダのものは全領域でスムーズだったのでもう少し頑張って欲しい。また、エンジンブレーキが非常に強い。空走させたくてもなかなかできない。実はこのクルマで隣の県まで3時間弱ほど走ったのだが、いつの間にか法定速度を下回っているということが何度かあった。epowerのワンペダルドライブもアクセルだけで減速するが、あちらは意図的に減速するのに対して、CVTのエンブレは意図せずともかかるのであまりいいとはいえない。
減速でも微妙な挙動を示す時がある。Lレンジを使用してエンブレをかけると20km/hくらいでエンブレが一瞬効かないというかギクシャクすることがある。

総じて言ってCVTはダイレクト感が上がり改善されたが、ちょこちょこギクシャクするのが気になるかなといったかんじ。不満があるというほどではないので、これで何か買い控えが起きるほどではないが、もっといいものはあると言える。

ブレーキタッチは感動

軽自動車のブレーキと言われれば、どのようなものを思い浮かべるだろうか。個人的なイメージになるが、踏み始めは効かず、かといって踏み込むといきなりグッと効き、ペダルにも剛性感がまるでなく、止まる時のコントロールも難しく、どう頑張ってもカックンブレーキになる。またはカックン回避で止まったと思えばまたすぐにカコンっと動き出してしまい、それを止めるためにブレーキを踏むので結局ショックが出る。
大半の軽自動車ってこんなもんな気がする。現行の車種でもスズキなどは、「マシになった」とは言ったが若干この感じは残ってしまっている。

先代のeKシリーズがまさにそんな感じで、本当にブレーキタッチに関してはどう頑張ってもカックン回避することができない。日産設計の新型になってどうなっているのかと期待半分、恐怖半分で踏んでみると、かなり良くなっている。

踏み始めからしっかりと身が詰まっている感じがあり、現行のノートepower より踏み始めの感触はいい。踏んだ通りに効くというよりは踏み始めから効くという感じだが、十分コントロールしやすく、どこから効いてどこから効かないのかが明確にわかりやすい。
最後の止まる時のコントロールに関しては軽としてはトップクラスにやりやすく、意識している人であれば120%カックンにならずに済むだろう。停車前にアイドリングストップがかかった時は若干カクンと止まるが、こちらもコントロールしやすく、エンジンを再始動させることなく、しかしショックは最小限で止まらせることができる。

このブレーキは軽の域を逸脱しており、新型のタントと同等くらい。あちらはどちらかというと踏んだだけ効くという感じなので、完全に好みだろう。自分は軽自動車というカテゴリーからスポーティーさやドライバビリティより、どれだけ楽に運転できるかを重視したいので、eKのブレーキタッチの方が好みである。
そもそも、コスト制約が鬼厳しい軽自動車の市場において、ブレーキのタッチが好みで選べるほどにまで成長しているというのがそもそも異常事態だろう。エンジンで各社の思想がわかるというのはよく聞く話だが、ブレーキにおいても「好み」で選べるという時代はもうそこまできている。

アイドリングストップは今ひとつ

アイドリングストップに関して。今回乗ったのはノーマルモデルなのでハイブリッドではない。よって、アイドリングストップもセルモーターを使うタイプの普通のやつとなる。
まず再始動自体は先代より若干早くなっている。先代もセルを使うタイプとしてはそこそこ早かったが、新型はこの辺りは正常進化と言える。
ただ、再始動音に関してはかなり静かになっている。振動も少なく、先代より使っていてストレスがない。
Pでもアイドリングストップさせるようで、燃費のためだろうか、日産ではよくある制御である。しかし、アイドリングでも音や振動が減り、ブレーキを離していても静かな環境が保てるので個人的にこの制御は好き。
余談だが、オートライトはワイパーを複数回作動させるとライトがつく制御になっている。これも今は日産車独自の制御だが、雨が降っていてなおかつ無灯火だと対向車の発見が遅れることがある。雨でもライトつけない運転センスなし子さんが非常に多いのでぜひとも義務化していただきたい仕様である。
また、先代のものより停車前にアイドリングストップする確率も上がり、燃費の向上にも若干貢献しているようだ。

ひとつ個人的にいいと感じたのはアイドリングストップしない理由やする方法をメーターで表示してくれるところだ。

例えばエアコンを優先的に使用しているときは「エアコンを優先しています」と出るし、「ブレーキを踏み増すとアイドリングストップします」というような表示も出る。
ホンダではアイドリングストップができない理由の表示のレパートリーがさらに多く、水温、バッテリー充電中など、エアコン以外にも出てくるので、あともう一歩頑張れば…と感じてしまう。
エンジン自体の燃費を良くすることでアイドリングストップさせなくても十分な燃費性能を叩き出せるようになったのだろう。特に軽自動車という様々な人が様々な用途で使うクルマにおいて快適性を優先してくれるのは非常にいいと感じる。

ただ今ひとつと感じるのは再始動の動きだしのラグである。先代同様若干のラグがあり、ショックも若干出る。ひどい時はCVTがギクシャクし、スタート時に首が動くほどである。
例えばスズキではマイルドハイブリッドを使用し、モーターを使って再始動を行うためシームレスにエンジンがかかり、動き出す。実はeKのマイルドハイブリッド仕様も乗車経験があるのだが、スズキのものと比べると再始動から動力が伝わるまで若干のラグがあり、ショックも出る。ダイハツも相変わらずラグいので早く改善していただきたいが、ホンダはセルモーターを使わない純粋なアイドリングストップではあるものの、ほぼほぼラグもショックもなく再始動する。

同じ乗用車メーカーである日産が、デイズ、eKワゴン乗用車基準で設計したと言い張るなら、こういう細かいところも詰めていただきたいところではある。

乗り心地は秀逸

乗り心地に関してはかなり良くなったと感じた。
先代の乗り心地といえばとにかく柔らか系で、足も非常に柔らかく、確かに乗り心地はいいと言われればいいのだが、これは乗り心地がいいというよりはフワフワしているなと言った感じではあった。
軽自動車でこういう系の乗り心地のクルマはかなり少なく、どちらかというと現代的ではないとも言えるかもしれない。最近は特にだが、安定感を高めるために多少硬い乗り心地になっているものが多い。

もちろん新型のeKもそちら側になっている。街乗りだろうが高速だろうが安定している。高速域に関してはCVTの設定上かエンジンブレーキが強く速度維持はしづらいので結局そちらで疲れは出てしまうのだが、乗り心地だけで言えば断然安定方向になっている。
先代といえばひたすら柔らか方向で、安定感があるかといわれると微妙なところはあった。もちろんのんびりおちついて流れに身を任せて走る分にはちょうどいい車でありラクなクルマなのだが、長時間走るとなるとやはり安定感の部分で微妙なところではあった。新型では乗り心地が硬めと言われれば硬めになったのだが、決して悪い訳ではない。
フロアの剛性が上がり、先代のような「床が薄い感じ」が消えており、剛性感があるとはいえないが、しっかり感が増している。車体が軽いため足回りの負担も少ないようで、足の底付き感も消えている。ダンっと突き上がるような動きも出るには出るが、先代と比べるとかなり減った。ただ、車体が軽いからなのか、ドアが薄いのか、どことなく頼りない感じがあり、タイヤが10mmほど細くなったような印象さえ受ける。ルークスではそのような感じはなくどっしり感があったので、車高に対して意外と重心が高いのかもしれない。

ハンドリングにもその重心の高さとタイヤの細い感じは出ているようで、どことなく頼りない感じがあった。乗り心地の安定感から速度域が自然と高くなり、曲がるスピードが速いのもあるのかもしれないが、ぐにゃっと曲がる感じがあり、軽自動車といえどもう少し安定感があってもいいのではと感じてしまった。それでも街乗り域では充分な性能はあるので、危険だとかこれで困る、という人は少ないとは思うが、他のハイト軽と比べると安定感が少ないというのは事実である。

まとめ

個人的にはeKワゴン、「これで十分じゃん」と言えるような完成度だった。ハンドリングだったり色々なところに今ひとつと感じる部分はあるが、日常で乗るのに、これで不満もないし、ちょうどいいと感じるクルマだった。
ただ最後に不満をひとつ言うとしたら、燃料タンクが小さすぎる。代車で借りたのだが、燃料が減るのが燃費を考えるとかなり早く、これで長距離走るのは少し向いてないのかなと感じてしまった。車両の安定感はいいのに非常に勿体無い。

三菱らしいクルマから誰にでもおすすめできるクルマへと成長し、誰が乗っても不満は出ないだろうとは感じるが、先代乗りとしては少し寂しいような気もしてしまうのがeKへの愛情なのだろうか。

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