マツダの乗り味について考えてみる
今回は、ここ最近ご無沙汰のマツダ車について色々考えていこうかと思う。
みなさんは、マツダ車といえばどのようなイメージを持たれているだろうか。オタクくさい?かっこいい?内装の質感が高い?
今回は、パッと見えないような所にもあるマツダ車の魅力を伝えて行きたいと思う。
なお、この記事は個人の感想になります。
(サムネ画像提供: @si_vi_vo_ta さん、@medamedado さん、@oulan4WD さん、@freed_carshare さん、@Rooshiori さん、@Zuyo_NZE121 さん)
一番の魅力は「質感の高さ」ではない
マツダ車の内装といえば、質感が高いことで評価されがちであると感じる。ただ、一番マツダの内装が評価されるべきは、質感以上に、使っていてストレスを感じないということだと感じる。
もちろん個人差はあるので、事実を優先的に述べていこうかと思う。
まず、質感に直結している部分だが、目に見えるところ、手に触れる部分の手触りを優先的に良くするように作られている。ステアリングもメッキの使われ方が左右対称で見ていて気分がいい。
ボタン類に関しても音量を上げたい、次の曲に行きたい時は出っ張っている部分を上に、逆の場合は下に操作すればいいようになっている。基本的に数値が上がる動作は上方向に、数値が下がる動作は下方向にすればできるようになっており、左右方向への操作や余計な設定項目はステアリングではなくマツコネに移行させ、運転中によく操作することのみがステアリングボタンとして直接的に、わかりやすく配置されるようになっている。
クルーズコントロールに関しても、それぞれのボタンでしっかりと役割が分けられている。速度の調整は速度の調整(set +or−)で、RESボタンは別で配置されている。速度を上げたければ上、下げたければ下、クルーズコントロールを再開したければ真ん中と、非常に直感的で分かりやすい。多くの会社が速度調整とリジュームを一緒にしている中で、不自然さがないような操作系になっている。
メーターに関しても、もう少し情報量が多くてもいいし、ヘッドアップディスプレイありきな感は否めないが、それでもヘッドアップディスプレイは下のグレードでも標準装備だし、オフにしない限りナビ含め必要な情報は、脇見運転をしなければ手に入る。
メーターは情報整理がよくされており、必要ない情報はやはりマツコネに移動されているにも関わらず、必要ある平均、瞬間燃費、ODO、TRIPメーターなどの情報は何ひとつとしてかけていない。メーターデザインを変えたとしてもこれらの情報は絶対に表示されるようになっており、あくまでもデザインを変えた部分で表示されているのは付加価値的な情報のみとなっている。
シフトレバーも抜かりはなく、一段一段が明確に分かれている割には操作は軽め、それでいて安っぽくはないという絶妙なラインをついているのがうまい。
ウインカーやワイパーのレバーも同様で、上質だが操作はしやすいように作られており、オートハイビームのスイッチまでしっかりと作られている。これが日産との大きな違いで、日産のウインカーレバーは、上質だがなかなかに重く、指の力を結構使う。オートハイビームのスイッチもグラグラで、レバー自体の質感はいいが、気になる所もある。ライトも強制オートのはずではあるが、直感的に操作できるようにポジションとオフのスイッチがしっかり分かれている。
ディミングターンシグナルというボワっと光るウインカーのライトや、室内で聞こえるウインカーの音も上質で、従来のリレーの音を現代版にアレンジしたような感じ。
マツコネに関しても手に届く範囲のボタンで操作ができる。故に目的地設定だけはスムーズにいかないが、慣れれば意外と他のナビと変わらない速度でできる。設定項目も様々で、下位グレードからしてイルミネーション関連やイコライザー、その他設定項目が大量にあり、ユーザー側のカスタマイズの選択肢が非常に多い。これは全体的に言えることで、メーターデザインに関しても瞬間燃費をバーグラフにするか数値にするかなど、「そんなの誰がやるん?」みたいな設定項目が大量に存在する。誰がそんなところまでやるのかは謎だがユーザー側の選択肢が多いことはクルマを気持ちよく使うために重要なことではないだろうか。
センターコンソール内の収納の容量も大きく、財布が余裕で入る他、ドリンクホルダーも横並びだし、スマホの置き場にも困らない。スマホを充電する際も、CarPlayを使う際も、グローブボックス内のUSBケーブルを繋ぐ必要はあるが、その出口がしっかりグロブボックス内に確保されているのもグッドポイント。
これらを総合しても、使いたいものが使いやすいところに適切に配置され、車内はそこそこ狭いが収納もよく考えて装備されており、マツコネにしてもメーターにしても、様々なクルマで使われることを想定して設計されている。これは、おおまかなデザインを共有して、マツダ車全体の特徴、個性とし、コストとの両立を図ったのだろう。車種個別でデザインするものを極力減らし、ひとつのモデルにかけられるコストだけを使って作るのではなく、すべてのモデルで共通して将来的に使うものを作ることで、コストをふんだんに使い、ここまでの完成されたシステムを作ったと考えられる。ユーザーにとっては高級感ありながら使いやすく、メーカー側もコストを下げられるというwin-winなシステムになっているあたりが素晴らしい。
走りは硬派で上品
自分がマツダ車の走りに一言いうなら、硬派である、ということだ。CX60や5、30などのSUV、MAZDA2や3、アテンザなどの背の低いハッチバックやワゴンにも乗ってきたが、全モデルにおいて共通しているのは乗り心地はどちらかというと硬めである、スポーティーである、ということである。
今まで試乗してきたなかで、マツダがやりたかったことがふんだんに詰まっているのはMAZDA3とアテンザだと感じたので、今回はその2車種をベースに、マツダ車の乗り味とマツダがやりたいことの妄想を徒然なるままに書いていこうかと思う。
とにかく上品に、ただ基本には忠実
マツダ車の一番の特徴は、とにかく世界観が上品であるということだろう。エンジンの音にしても、聴かせたい音を優先して聴かせるように作られており、荒い感じはなるべく出さず、ただ静かなわけでもなく、低回転では野太い音が、高回転では軽快に回るようなセッティングにされている。
ブレーキを踏んでクルマがノーズダイブした時も、ふわっと優雅にクルマの頭の部分が下がり、荷重移動がしやすいだけでなく、その動きが大変上品である。
ステアリングもデザインだけではなく回した時のフィーリングが上品で、ただ重くもなく軽くもない。初期からしっかり反応するため、直進時の安楽さこそ薄く、レーンキープありきな感は否めないが、曲げれば反応するという当たり前のことが、当たり前にできるように設計されている。
アクセルがオルガンペダルで、ペダル配置がいいというのは巷でもよく言われており、これもストレスのなさにつながっている。人間の操作として基本的なことではあるが、コストやエンジン配置の関係でできないクルマが多い。そんな中で、マツダが作る全車種でこれがなされているのは素晴らしい。その分エンジンルームが長く、実用性は…と言われがちだが、室内の広さは十分だし、何より日常でマツダ車の内装を使っていてストレスがないので、実用性は「普通」をこれだけ実現していることを考えるとかなり良くできていると感じる。
ブレーキも良くできており、効き自体は一般的なものだが、初期からガッツリ効くわけでもなく、かといって遊びもなく、踏んだら踏んだだけ効く。初期からガッツリ効くブレーキに慣れている一般人にとっては「効かない」という感想になってしまうのが惜しい。
足回りは硬め
足回りに関して、硬いか柔らかいかでいうと硬い方だろう。ただ、ガッチガチという訳ではなく、ボディの剛性をあげて、ある程度しなやかに動かすだけの余裕を持ち合わせている。ボディの剛性が高いので、無駄な振動は伝わってこない。つまり、車体自体はダイレクトに動く。それでアシの構成の自由度をあげて、足の動きからも路面の感覚がわかるようにしたというのが正しい。路面の凹凸がわかるくらいの硬さだが、よほどの鋭い、深い突き上げでない限り、ボディまでブルブルするようなことはなく、快適性を損なわないギリギリのラインである。
CX30や5では重量や上がった重心に対応しきることができず、橋のつなぎめやちょっとしたカーブ中の段差でアシが暴れてボディまでその振動が響いてしまうようなことがあった。「マツダがやりたかったことが含まれているのはMAZDA3とアテンザ」と述べたのはここの要因が非常に大きい。
全体的で硬めではあるが路面状況がよくわかり、快適性は損なわないというのはトヨタとはまた違うやり方で、トヨタはアシのセッティングはしなやかめで、路面状況は突き上げからではなく、路面との4輪の接地感から伝えてくるような印象で、直進安定性もアシがしなやかなぶん高く感じるため、長距離が安楽なのは燃費も含めてトヨタ車のほうだろう。もちろん乗り心地だけで言えばトヨタ車のほうが断然いい。
その中でトヨタ車に対するマツダのアドバンテージとは、より直感的に物事が分かるということだろう。つまり、トヨタ車より運転していて楽しい。もちろんハイブリッドによるモーターの加速の楽しさはトヨタ車だろうが、「運転というものにまじめに向き合っていく」という意味で、楽しいのはマツダ車である。運転していて楽なのはトヨタ車で、極端な話、何も考えなくても加速して減速して曲がって…ができる。マツダ車は加速ひとつとっても踏んだ分だけ加速するようになっており、裏を返せば踏みすぎると首が動くほど加速してしまう。ブレーキも遊びがなく、ラフな踏み方をするとスマートとはいいがたい運転になってしまう。アシが硬めな分、ステアリングも丁寧に扱う必要があり、トヨタ車より疲れる分、自分の運転がよくわかる。
かといって快適ではないのかというと違う
難しいのが、トヨタ車に対して快適ではないのか?といわれるとまた違う。
静粛性は高く、外界とは一枚隔壁があるような印象。ボディの剛性感の高さがより強調されている。ルーフやフロアから入ってくる音や、ドアから入ってくる音も少なく、全体的な静粛性のバランスにも気を使われているような印象がある。しいて言うならリアからはいってくる音が多いような感じはするが、価格帯を考えれば特段気になるものではない。
エアコンもよく効くので、バイパスなどのまっすぐな道を走る分には内装の質感とも合わせてとっても快適。直進安定性というよりはハンドリング重視ではあるが、ステアリングにはどっしりした感があり、直進安定性も悪くはない。絶対的な直進性はトヨタ車のほうが高いが、静粛性はトヨタ車よりも作りこまれているような印象。マツダ車の特徴は、前述のとおり「操作したとおりに動く」ことなので、ステアリングをまっすぐな状態にしていれば車両に不備がない限りまっすぐ走っていく、ということである。
iDMという付加価値
マツダ車についてるiDMってご存じだろうか。Intelligent Drive Masterの略で、のばすと何ともダサいのだが、このiDM、あまり言われていないが、マツダ車の走りを支える1つの大きな柱になっている。
青、緑、白の3色が、スピードメーターのサイドに出る他、マツコネでも詳しい値を見ることができる。
基本的には青がスマートな運転で、加減速やカーブの中で車が一連の動作を綺麗に行うことができているときに出る。マツダの公式では「クルマと乗員が一体となって動く」とあるが、あまりにも抽象的というかなんというか…
運転者が一番気持ちよく運転できているときとも言える。
緑がエコ運転。一定速度で巡航できている時や、その他安定して走行できているとき。同乗者が一番快適な運転ができているとき。
白はスマートではない運転。色々な操作が急だったり、クルマの走りでカーブや加速などの一連の動作がスマートに行えていない時に白が出る。
これがなかなか難しいのだが、ゲーム感覚で自分の運転を客観的に見ることができる。
Mモードでシフトダウンし、それに合わせてじわじわとアクセルを踏むとその通りにクルマが動き、エンジンブレーキをかけつつ一気にドンっとブレーキを踏むわけではなく、ブレーキも徐々に踏んでいく。カーブに合わせてステアリングを徐々に切っていくと、減速でかかった前荷重によってステアリングを曲げた通りにクルマが動く。カーブで一定にアクセルをまるでクルマが小さくなったかのように動く。カーブ出口で徐々にアクセルを開けていくと、まるで自分とクルマが一体になったようにスムーズにクルマが動く。
もちろんiDMは青表示を出す。この一連の動きに乱れがあると白になってしまうのが難しい。
速く走るだけならば誰にでもできる。アクセルを踏めばいい話なので。その中でクルマが気持ちよく動くポイントを見つけ出し、その通りにクルマを操っていく。一見ただのセオリー通りの面白くない運転に感じるかもしれないが、人間が誰かと仲良くなれると嬉しいのと一緒で、クルマと対話できるというのもまた楽しいのである。
聞かせたい音を聞かせる
マツダ車の特徴として、聞かせたい音をしっかり聞かせるというのもあるだろう。エンジン音ひとつとっても、フロアの遮音がしっかりしており、ロードノイズの入ってくる量がかなり少ない。リア周りで若干音が回ってしまっているような感じもあるが、他の車種であれば気にならない程度に抑えられている。窓ガラスも厚めで、環境音は総じていってしっかり抑えられている。
その中で排気音がかなり強調されるセッティングになっており、ガソリン車としてのメリットをしっかり活かすようにできている。これはマツダ車全てに言えることで、Mazda2のようなエントリー車種からCX5のような割と大きなクルマまでこのようなセッティングになっている。良し悪しは個々の判断で、それなら静かに走れるクルマもあってもいいだろうとは思わなくもないが、マツダの世界観を統一させるという意味ではこのセッティングを貫くのは面白いと感じる。
まとめ
正直いうと、マツダ車は難しい。ディーゼル車はまた違う世界観になっており、2.2Lのディーゼルなんてトルクでもって暴力的な加速をする。動き自体はガソリン車同様基本に忠実で、操作した通りの反応をしてくれるのだが、例えばトヨタのハイブリッドやそのほかラクシュリーな位置付けをされているクルマたちがマツダにとってはディーゼルモデルになるのかなと感じる。
本当にマツダ車は難しい。難しいというか、どう評価すればいいのか戸惑う。一概にいいとも悪いとも言えない。こういう人にオススメです!とも言いづらい。このマツダの世界が好きな人は、自分がそんなことを言うより先にマツダ沼にハマっている。
少なくとも言えることは、マツダに対してディーゼルのイメージが強いと言う人は多いだろうが、ディーゼル車>ガソリン車ということはなく、ガソリン車にはガソリン車の良さがある。それは基本への忠実さであったり、クルマとしての本質である、「ドライバーが意図した通りの操作感」というものを突き詰めて行ったマツダの企業努力の賜物であるといえるだろう。
(ただ、その企業努力を活かしきれてる、マツダがやりたいことやれてるクルマがあまりにも少なすぎる。コスパとかいいから頑張って欲しいというのが内情。)
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