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故郷のカフェに来る女性

彼女を初めて見たのは、今年の3月の初めだった。
彼女の同級生が東京から脱サラして始めた小さなカフェの片隅に1人でぽつんと座っていた。

肩まである黒髪、色白の肌、清楚な感じの女性。
高級そうな黒の皮のジャケットを椅子にかけていた。黒の皮の鞄も使い込まれた物でお金の使い方から賢いひとだと思った。


物静かで、誰かと待ち合わせというのでもないので私は気になっていた。カフェで働く女性と仲良くなっていた私は、何気なく尋ね、マスターの高校の同級生だとわかったのである。

何故、月に2、3度、東京からわざわざカフェに来るのか疑問だった。
もしかしたらマスターのことが好きなのかもなどと邪推したりした。

彼女の実家は、カフェのある市の隣町で、金曜日の夜に帰ってきて、日曜日にまた東京まで帰るのは大変だと思った。

最近、彼女が何故、田舎のカフェに来るのか、少しわかった出来事があった。

カフェでコンサートがあった日の彼女は、
着ている服はいつもと変わらず、春だというのに
黒の皮のジャンバー、その下は地味な黒っぽいセーター、ジーンズの短パン、黒いタイツ。


着ている物は地味なのに、彼女の周りに3人の50代の男性が、その魅力に惹かれている様子がよくわかった。

お酒を手に彼女が微笑む。
男たちは、益々その魅力にはまっていく。
盛り上がり、次の週は、
温泉施設に行こうと1人の男がさわぐ。

彼女は立ち上がって、
男たちにシナを作る。

ねぇ
貴方、そんな冴えない男たちに
本気なの?
と私は思う。

多分、本気ではない。
彼女のとって
このカフェは、
都会から
少し、
気持ちを休ませ、
疲れを癒せる
居場所なのだろう。

バリバリ
仕事ができるらしいと聞いた。

35歳過ぎ
もしかしたら
土日に会えない愛する男性がいるのかしら

なんてまたまた
おばあさんは、嫉妬かなぁ、
邪推するのである。

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