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ポンコツな方が、人の気持ちがよくわかるのではないだろうか。

携帯の留守電になんと!警察からメッセージが入っていた。まったく思い当たることがない。メッセージを聞いたら 「パスポートを預かっています。管理番号は○○です。2月18日まで保管しています。」

それでハッと思い出した。先日、ある申請手続きのため本人確認書類が必要になった。私は車の免許を持っていない。こういう時は、マイナンバーカードでもよいのに、最近使っていないという変な理由でパスポートを本人確認書類にしよう、と思い、仕事場近くのコンビニのコピー機でパスポートをコピーしたのだ。その時に、コピーした方だけを取り、パスポート本体はそのままだったことに気が付いた。
もし悪用されていたら、と思うと動悸がして冷や汗が出た。

 私はいわゆるポンコツタイプ。作業を効率よくやろう、として、複数のタスクを同時進行させるが、ミスして結局効率が悪くなる。

例えば、お湯を沸かそうと水道の蛇口からやかんに水を入れている間に、洗濯機を回そうとする。洗濯物はネットに入れるものがあるので、それを仕分けしている間に別のことを考えてしまう。なんだかジャージャー音がするなぁ、と思いとハッとしてやかんを見ると水があふれている。こんなことを日々繰り返している。 

警察署にパスポートを受け取りに行った帰りに、図書館に寄ったら「あなたの その「忘れもの」 コレで防げます」(NHK出版 なるほど! の本 芳賀 繁 (著))が目に入り、すぐ借りた。

この本によると、

人が注意できる量には限界がある。 

何かをしながら、何かを考えながら別のことをするとミスする可能性が大きくなる。だからアレコレ同時に考えず意識を一つに向け、動作を完結させることだそうだ。

これは腹に落ちた。量に限りがあるのだから、いっぺんに済まそうとするとうまくいかないはずだ。ポンコツならその注意が向く量は少ないに違いない。ということは、なおさら意識を1つのタスクに向けるべきなのだ。

 この本には、日常の様々な忘れものや、忘れごと(やることを忘れること)の事例が書かれており、「そうそう、こういうこと、あるある!」とうなづきながらどんどん読み進めた。忘れてしまう物や忘れごとの原因と対策も紹介されているが、著者は心理学の先生なので、専門家の知見の裏付けがあり、「なるほどね~」と納得できる。

例えば、送信メールに添付ファイルを付け忘れて送ってしまうことがある。「しまった、添付ファイル付け忘れた!」と再度メールを送る羽目になる。メールの設定で、一定時間以内なら送信取り消しができるようにしてあるにもかかわらず、気がつくのは送信された後だった、ということが幾度となくある。
この原因は、添付する、という作業よりもメール本文を書く方が頭も気も使う作業であり、先にメール本文を書くとそこで安心してしまうからだそうだ。対策は、先にファイルを添付してから、メール本文を書く。

他にも、何かをしに部屋に入ったのに、何をしに来たのか忘れる。ポケットに何かをいれたまま洗濯してしまう。などなど、色々な忘れもの、忘れごとが、人の記憶の仕組みと注意力や意識の向け方とともに解説されている。 

今後、パスポートやクレジットカードやスマホのような大事なものは、出したらまずそのものをカバンにすぐしまうことが私の対策になりそうだ。まずしまってからコピーの紙を引き取るようにしよう。 

警察にパスポートを取りに行ったとき、窓口にいた担当の男性が(70歳位と思われる)「待ってましたよー」と言った。

この「待ってましたよー」には、「アナタは大切なものを紛失してさぞご不安だったでしょう。でも無事届いてるよ、良かったねー」というニュアンスが、声のトーンと、マスクの上の優しげな眼から感じられた。 

パスポートを届けてくれたコンビニも警察も、通常の貴重品の取り扱いをしただけなのだろうが、人の失敗を沢山目にしてきたからこそ、の担当の人の言葉だったように思えて、ちょっとした会話から温かみを感じられた忘れものだった。 

失敗やミスは、その大きさにもよるが、ポンコツの人の方がミスした人の気持ちを想像できる、と思う。数を重ねているからだ。だから若手が凹んでいるとき、どうしたらいいのか、を知っている。

会社という組織のなかで、シニアの役割は、自分の成功事例を披露するのではなくて、どうしたら失敗を防げたのか、ミスした後はどうすればマイナスをできる限りプラスに近づけられるのか、分析して共有することだ。そのやり方も、しゃしゃり出ず、求められたら答えるくらいがいい。

定年まであと2年。この本を読んだことで忘れもの対策は分かったが、もとがポンコツなのでまだまだ忘れものをするだろうけど、人の温かさは忘れないようにしたい。

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