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あのとき 私はどうすればよかったか

量販店で

ちょっとしたことで、携帯電話の画面にひびが入ってしまった。
自宅近くには、即日修理をしてくれる店舗がなかったため、少し距離はあるが、その店に予約を入れていた。来店は2度目。
携帯電話の修理コーナーは、電化製品売り場よりも、混雑していた。

案内役の30代くらいの男性から、来店の目的やデータのバックアップ等の状況を記入する用紙が渡され、それが終わると、そのすぐ後ろにある、修理窓口の前で待機する。修理窓口は4か所。
私が行ったときは、たまたまか、窓口対応はすべて女性スタッフだった。

スタッフの教育が徹底されているのか、どの人も丁寧できびきびした対応だった。
混雑はしていたが、予約もしていたためか、スムーズに流れた。
携帯周辺やバックアップ等に疎いため、スタッフの質問に必死に答えながらやっとの思いで修理にこぎつけた。
幸い、私の携帯は浅い傷だったため、画面の交換で済んだ。

ホッとして、修理が出来上がるのを待っていると、脇の方から少し声高な男性の声が聞こえてきた。

先ほどの案内役の男性に何かを言っているようだ。
特に注意して聞いていなくても、その声が耳に入ってくる。
(クレームか)
そう思い、気にも留めずにいたが、そのうちその男性の声は大きくなってきた。

「『はい』だろ!」

60歳は超えているだろうか、強い口調になっている。その後、ねちねちと何かを話していたが、また
「『はい』だろ!」を繰り返す。

そのうち
「『はい』だろ!」しか言わなくなる。
まるで、自分自身の強い口調に陶酔しているかのように。
案内役の男性スタッフを自分の言いなりに征服している喜びに浸るように。
張り詰めた気配に、周りの人間さえも制圧した独裁者のように。

案内役の男性スタッフは私に背を向けている位置なので、その返答が鮮明には分からないが、「はい」「申し訳ありません」は聞こえてくる。

こんな状況は、10分続いた。

何かしたい。どうすればいいだろう。

案内役の男性スタッフを待っていたかのように、「すみません、ちょっといいですか」と割り込み、携帯の質問をしょうか。
ますます逆鱗に触れてしまったら…

修理窓口で対応してくれた女性スタッフに「あの状況をどうにかしてあげてほしい」というべきか。
もしかしたら、このあとすぐに収まってしまったかもしれなかったのに、上の役職者が出てくることによって、男性スタッフの評価を下げてしまったら…

いっそのこと、警察を呼んでしまおうか。

いずれにしても私の出方が原因で、後日、店に放火なんてことになってしまったら…

結局、何も行動しないまま店を後にしてしまった。
帰途、ずっと”嫌な気持”だった。
家に帰ってからも、”嫌な気持ち”は続いた。

困っている人を見て、見ぬふりをする人をしてしまった。

情けない、何もできなかった自分が情けない。

あのとき、普通に考えて
窓口の女性スタッフに伝えればよかったのだろうか。

皆さんに教えてほしい。
私はどうすればよかったか。





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