知らない人んち(仮) 第1話 シナリオ
○和室
きいろ ノックの音に驚き、襖を見る。
襖が開くとアクが立っている。
アク きいろの手元を見る。
T『p.m.5:00』
きいろ「あの……、これは……」
アク「……知ってしまったんですね。僕たちの正体を」
きいろ「えっ? 正体って?」
アク「そう、僕たちは……」
○T『また2時間前』
○和室
T『p.m.3:00』
きいろ ノックの音に驚き、襖を見る。
襖が開くとキャンが立っている。
キャン きいろの手元を見る。
きいろ「あの……、これは……」
キャン「それ……」
きいろ「これ、あの……、リビングの棚の下に落ちてて……」
キャン「……なんだ、そんなところにあったんだ! 探してなんだ、これ」
きいろ「えっ?」
キャン「これ、あたしが小さい時に描いた家族の絵なの」
きいろ「そ、そうなんですか?」
と、訝しみながらも絵を渡す。
キャン「ありがとう」
きいろ「あの……、その絵……」
キャン「きいろちゃん、お風呂どうぞ!」
きいろ「えっ、お風呂? いや、まだ……」
キャン「いいから、いいから。あっ、着替えとかある? あたしのでよければ貸すよ。ちょっと待ってね」
と、出ていこうとする。
きいろ「キャンちゃん! ご家族って……」
キャン「……あたしの家族は、もう……」
と、涙ぐんで出ていく。
きいろ「キャンちゃん……」
○2階廊下
きいろ 風呂場に向かう
きいろ「キャンちゃん、あの時も涙ぐんで たけど……、それって、さっきのことと関係あるのかな? 家族はもうって……、もしかして……。でも、あの絵、キャンちゃんが小さいころに描いたにしては、まだ新しかったような……。やっぱり……、怪しい、この家……」
きいろ 暗室前で立ち止まる
きいろ「特にこの部屋……。カメラの暗室とか言ってたけど……(辺りを見回し)、入っちゃダメって言われると、入りたくなるのが人間のサガでしょう。こういうのがきっと、あたし、ダメなんだよな」
と、ドアノブに手をかけるが、開かない。
きいろ「あれ、開かない。鍵が掛ってる」
きいろ ドアに耳をあてる。
はじめは何も聞こえないが、もう一度耳をあてると、呻き声のようなものが聞こえる。
きいろ「えっ、な、なに!? あっ!」
と、振り返るとジェミがいる。
ジェミ 無表情で立っている。
きいろ「あ、あの、こ、これはその……」
ジェミ 無言で近づき、きいろに服を渡す。
ジェミ「これ、キャンがあなたにって」
きいろ「あ、ありがとうございます」
ジェミ 無言のまま立ち去る。
○玄関
T『p.m.3:30』
アク 帰ってくる。
ジェミ 2階から下りてくる。
アク「これ、回収してきた」
と、袋を渡す。
ジェミ「ありがとう」
アク「なかの物は全部……」
ジェミ「うん、埋めた」
キャン「全部じゃない、これ忘れてる」
と、2階から下りてきて絵を見せる。
アク「こんなの、どこで?」
キャン「彼女が見つけたの、リビングの棚の下に落ちてたって」
アク「これ、見た?」
キャン「見た。あたしが小さい時に描いたものだって言った」
アク「気が付いたかな?」
ジェミ「かもね、あの部屋のことも、ずいぶん気になっているようだし。結構強いかも」
キャン「そう、意外に鈍そうよ」
アク「とにかく、これはジェミに任せるよ」
と、絵をジェミに渡す
ジェミ「分かった、キレイにする」
アク「僕は、いまのうちにあの部屋に……」
○リビング
T『p.m.4:00』
きいろ、アク、キャンの3人が食卓に着く
きいろの目の前には豪華な料理
ふたりの目の前には質素な料理
きいろ「あの……、ジェミさんは?」
キャン「か、彼女は……」
アク「いま、暗室に籠ってるんですよ。写真の現像をしていて。急に仕事が入ったみたいで」
きいろ「ジェミさんって、ホントにプロのカメラマンさんなんだ。じゃあ、あの唸り声って、写真の機械か何かだったんかな?」
アク、キャン 顔を見合わせる
きいろ「だから、あたしがあんなに暗室に入るの嫌がってたのかな?」
アク「それは……、だれだって聖域ってありますから」
きいろ「聖域か……、そういうの、あたしってあんまり気にしないからな。だから、ダメなのかな? そのせいでバイト首になっちゃうし」
キャン「まあ、そんなこといいから、食べましょうよ」
きいろ「いただきます。でも……、あたしの料理すごいんでけど、おふたりのは……」
アク「お客様をもてなすのは、当然ですから」
キャン「そうそう! きいろちゃん、いっぱい食べて」
きいろ「はぁ~、こういうところはいい人たちなんだよなぁ~。でも、あたしひとりじゃ食べ切れないんで、キャンちゃんも……」
キャン「いや、あたしは、いまお肉は……」
と、突然口元を手で押さえ、急いでトイレに向かう。
きいろ「えっ? えっ? な、なに? キャンちゃん、どうしたの? えっ、もしかして、それって……」
と、アクの顔を見る。
アク 顔をそらし、慌てて料理を食べはじめる。
○和室
T『p.m.4:40』
きいろ スマホを前に……
きいろ「どうも~、人生いつも黄信号、ユーチューバーの黄色でぇ~す。えぇ~、今日の企画は、『知らない人んち泊まってみた』でしたが……、この家、ガチでヤバいんです。何がヤバいかって言いますと、たぶん、この家……、知らない人んちです……、いや、あの……、なに言ってるか分かんないと思いますけど、あたしも分かんないです、マジで」
○リビング
アク、キャン 向かい合って座っている
アク「キャン、もしかして……」
キャン「うん……、できちゃった」
アク「ホントなのか?」
キャン「アクにウソ言うわけないじゃん」
アク「そうか……」
キャン「アクは、嬉しくないの?」
アク「キャンは嬉しいのか?」
キャン「嬉しいよ。だって……」
○和室
きいろ「……というわけで、説明してもよく分からないと思いますが、この家、ホントにヤバいです。ヤバいけど……、(独り言のように)これって、再生回数あがるよね、チャンスだよね……、というわけで、きいろはこのまま、この家の謎に迫りたいと思います」
と、スマホの録画を停止する。
きいろ「いや~、まさかこんな展開になるとは、でもこれで、あたしも一躍トップユーチューバーに。この先、人生バラ色なんて? あっ、バラ色だと赤か! あはは」
と、笑いながら寝転がる。
きいろ「でも、これからどうしよう? どうやって、この家の謎を……、ん?」
きいろ 立ちあがり、床の間に。
床の間、高そうなツボが置いてあり、その側面を触る。
小さな穴に気がつき、なかを覗き込む。
きいろ「こ、これって……」
と、ツボから取り出したのは作動中のビデオカメラ。
きいろ「こ、これって……」
襖をノックする音
きいろ ノックの音に驚き、襖を見る。
襖が開くとアクが立っている。
アク きいろの手元を見る。
きいろ「あの……、これは……」
アク「……知ってしまったんですね。僕たちの正体を」
きいろ「えっ? 正体って?」
アク「そう、僕たちは……」
きいろ「……」
アク「ゴーストバスターなんです」
○T『続く』
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