【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 後編 41
「馬鹿な話ではない、真だ。斑鳩寺は高安城に近い。また百済とのつながりも深い。あの寺を襲撃すれば、葛城や大友の後ろ盾となっている百済の旧臣や渡来系の氏族たちに衝撃を与えられる。次は、お前たちだぞと。後ろ盾が動揺すれば、葛城や大友たちにも影響しよう。そうなれば、あとは容易い。土台が脆くなれば、城は簡単に崩れる」
そんなに上手くいくものかと、安麻呂は思う。
それでも馬来田や吹負を見ると、満足そうに頷いているのだから、歴戦の猛者たちからすれば、まことに結構な策なのだろう。