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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」

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愛する男のために、他の男の胸に抱かれる少年。その前に、現れた美少年。無邪気な彼の行動が、彼らの人生を狂わせていく………………。武士の野望と、少年の純愛、そして男たちの欲望が、渦を… もっと読む
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記事一覧

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 112(了)

 そして、三日には安土へと戻り、待望の十一日………………  十二間(二十二メートル)の石…

hiro75
8か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 111

 実際、有岡城周辺にほとんど動きはなかった。  ちょっとした小競り合いで、稲葉貞通が守る…

hiro75
8か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 110

 つい先日は、古池田まで遠乗りにきていた近衛前久や細川信良(昭元)も加えて、ひと合戦。 …

hiro75
8か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 109

「さてと……」、殿は立ち上がり、腰をとんとんと叩きながら、「右馬允に、ああは言うたが、皐…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 108

 明けて天正七(一五七九)年、その年の正月は、ほとんどの武将が有岡にくぎ付けになっている…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 107

「しかし、これほど有岡が堅牢とは………………」  その夜の軍議で、連枝衆の織田信包も殿と…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 106

 翌朝、殿はいよいよ村重が立て籠る有岡城の近く、小屋野(昆陽)に進出、ほかの将兵にも周りを囲ませるように陣を張らせた。  このとき、織田家の進軍を恐れた村人たちが山上がりしてしまった。  戦に巻き込まれないように用心するのは、村人として当然である。  太若丸の村でも、同じようなことをしていた。  だが、殿は気に障ったようだ。 「この儂が、足軽のような乱取りをすると思うてか!」 「左様でございます」、煽ったのは乱である、「これは処断する必要がございますね」  火に

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 105

「さて、高山殿が落ちたとなると、摂津の懐刀中川はいかにでる?」  中川瀬兵衛清秀も、摂津…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 104

 さっそく伴天連たちが、佐久間信盛、羽柴秀吉、松井夕閑、大津長昌(おおつ・ながまさ)とと…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 103

「俺もよくは知らんが……、あいつらがいうには、『隣の人を愛しなさい』ということらしい」 …

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 102

 翌日、それぞれが殿の差配された場所に移動し、砦を築きはじめた。  一方の殿は、山手の安…

hiro75
9か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 101

「摂津は……、心変わりせぬか?」  十兵衛は、太若丸と乱のほうにちらりと視線をやったあと…

hiro75
10か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 100

 十一月九日、殿は意気揚々と馬に乗られ、京を出陣、その夜は山崎に着陣し、武将たちと今後の…

hiro75
10か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 99

 十一月六日、堺から早馬が駆けてきた ―― 九鬼嘉隆の使番である。  聞けば、辰の刻に毛利水軍が押し寄せてきたとのこと。 「その数、六百あまり!」  現在、嘉隆が大船六艘を漕ぎ出して、これと交戦しているらしい。 「戦況は一進一退! 我が方、士気旺盛にて候!」  とのことだが、使番の焦りぶりから見ると、どうやら押されているようだ。  周りにいる家臣たちは、ひどく心配しているようだが、 「うむ、あい分かった。船の戦は右馬允(嘉隆)に任せる」  と、殿だけは平然とし