【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第四章「偏愛の城」 106
翌朝、殿はいよいよ村重が立て籠る有岡城の近く、小屋野(昆陽)に進出、ほかの将兵にも周りを囲ませるように陣を張らせた。
このとき、織田家の進軍を恐れた村人たちが山上がりしてしまった。
戦に巻き込まれないように用心するのは、村人として当然である。
太若丸の村でも、同じようなことをしていた。
だが、殿は気に障ったようだ。
「この儂が、足軽のような乱取りをすると思うてか!」
「左様でございます」、煽ったのは乱である、「これは処断する必要がございますね」
火に