見出し画像

細胞の不思議


はじめに 

 人体には約37兆個の細胞があるそうです[1,2]。とてつもない数ですね。以前は60兆個と言われていましたが、37兆個がより精確な数と言われています。
 少々話がそれますが、iPhone 15に組み込まれているA17 CPUのトランジスタ数は約190億個です。シリコンベースのトランジスタは電流が変えられるON/OFFスイッチのため、多機能からなる細胞と比べてはいけませんが、37兆個のものを作り機能させることは不可能と思われます。
 人造が難しいものを与えられて生きていることを想うと感慨深いです。

細胞とは

 細胞は生物の基本単位です。私たち人間を含むすべての生物は、細胞から構成されています。細胞は微小な構造体で、肉眼では見ることができませんが、顕微鏡を使えば細胞を観察することができます。細胞の基本的な性質は以下の通りです。

細胞の種類

 生物の体は、さまざまな種類の細胞から成り立っています。例えば、人間の体には200種類以上の細胞があると言われています。皮膚細胞、筋肉細胞、神経細胞などがその例です。これらの細胞は、形や機能が違いますが、基本的な構造は同じです。

細胞の大きさ

 細胞の大きさはさまざまで、一般的に10~100マイクロメートルです。細胞の大きさは、細胞の種類や機能によって大きく異なります。例えば、赤血球は約7~8マイクロメートル、神経細胞は100マイクロメートル以上になることがあります。

細胞分裂

細胞は分裂することで数を増やします。このプロセスは主に2つ存在します:

  • 体細胞分裂: 身体を構成する細胞の複製に関与します。

  • 減数分裂: 性細胞(精子や卵子)を作る際に起こります。

 細胞分裂は、DNAが複製され、核が2つに分かれることで始まります。それから細胞質が分裂し、新たに2つの細胞が生まれます。これは、体の成長、傷の回復、あるいは生殖など、様々な目的で行われます。初期段階では、幹細胞と呼ばれる特別な細胞が増加し続けます。これらの幹細胞から、発達の過程で様々な特殊な細胞に分化していきます。この分化プロセスは、細胞内部の遺伝子がどのように発現するかによって細かく制御されており、最終的には体の様々な器官や組織を形成します。

細胞増殖時間

細胞の分裂や増殖の速さは細胞の種類によって大きく異なります。一般的に、増殖の早い細胞(例:皮膚細胞、腸上皮細胞)では、分裂に要する時間は12~24時間程度です。一方、増殖の遅い細胞(例:神経細胞、筋肉細胞)では、1週間以上かかることがあります。

細胞の寿命

 細胞の寿命も細胞の種類によって大きく異なります。赤血球は約120日、胃粘膜細胞は3~5日、神経細胞は一生涯生き続けるものもあります。細胞の寿命は、分裂回数の限界、機能の劣化、アポトーシス(細胞死プログラム)などによって決まります。

細胞の構造と役割

 細胞には、さまざまな役割を持つ部分があります。主な構造を簡単に説明します。番号は図1の番号と対応します。

細胞膜 :細胞の外側を覆う膜で、細胞の中身を保護し、外部からの物質の出入りを調節します。(図1では皮の部分)
核小体真核生物細胞核の中に存在する分子密度の高い領域で、rRNA転写リボソームの構築が行われる場所です。
②核 :細胞の命令の中心部で、DNAが入っています。DNAには、細胞の設計図が 含まれています。細胞核とも呼ばれます。
リボソーム:すべての細胞に存在し、メッセンジャーRNA分子の配列によって制御される高分子タンパク質分子を組み立てます。
小胞 :細胞内にある膜に包まれた袋状の構造で、細胞中に物質を貯蔵したり、細胞内外に物質を輸送します。⑫と同じです。
⑤粗面小胞体:リボソームが付着している小胞体の総称です。
ゴルジ体 :タンパク質を加工し、梱包する役割を持ちます。
⑦微小管:直径約 25 nm の状の構造であり、主にチューブリンと呼ばれるタンパク質から構成されます。
滑面小胞体 リボソームが付着していない小胞体の総称です。通常細管状の網目構造をとります。
ミトコンドリア : 細胞にエネルギーを供給するために、食物をエネルギーに変換する部分です。ヒトの場合、全身の平均値として1細胞中に300個から400個のミトコンドリアが存在します。
⑩液胞:代謝産物、不要物の貯蔵庫です。
⑪細胞質 : 核の外側の液体状の部分で、様々な化学反応が行われます。
⑫リソソーム:細胞内の消化器で、有用なものを細胞内に取り込み、不要なものを細胞の外へ破棄します。
リソソーム - 脳科学辞典 (neuroinf.jp)
⑬中心体:神経幹細胞の分裂制御に関連しています
中心体 - 脳科学辞典 (neuroinf.jp)


細胞の構造(参考文献[1]をもとに修正)

まとめ

 細胞は微小な構造ですが、生命活動の最小単位です。私たちの体を作り上げ、様々な働きをしています。
 細胞とその複雑な働きは、生物を理解するために非常に重要であると思います。理解したことをまとめると、身体の内臓器官や筋肉の構成要素であり、タンパク質生成工場であり、自己分裂機能を持つ不思議な要素です。

備考

 「はじめに」で、細胞をトランジスタと比較しましたが、よく考えるとトランジスタではなく、細胞は集積回路と比較するのが正しいと思われます。論理回路の論理演算、四則演算が複数集まったCPUとの比較がよいかもしれません。プログラムがDNAで、プログラムにより集積回路で使用されるデータ(タンパク質)が自動生成され、そのデータ(タンパク質)が機能を実現するというようにアナロジーできます。
 機能実現のための、0/1ではない「データ」が今後の計算機科学のブレークスルーになるような気がします(既に考えられているかもしれませんが。)。後日、「ちょっとしたアイディア」に記載したいと思います。

参考文献

[1]細胞 - Wikipedia
[2]Bianconi, Eva; Piovesan, Allison; Facchin, Federica; Beraudi, Alina; Casadei, Raffaella; Frabetti, Flavia; Vitale, Lorenza; Pelleri, Maria Chiara et al. (2013-11-01). “An estimation of the number of cells in the human body”. Annals of Human Biology 40 (6): 463–471.
An estimation of the number of cells in the human body: Annals of Human Biology: Vol 40 , No 6 - Get Access (tandfonline.com)
ビアンコニらは、人体それぞれの器官の細胞数を、文献的・数学的なアプローチを使って統計的に計算し、モデルとして30歳、身長172センチ、体重70キロの場合、細胞数は37兆2000億個と推定した。

変更履歴

Rev.1 2024.4.5 初版



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?