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最速・最適を謳うからこそ大切にしたいこと

 広域性通信制高校の学習センターとして,サポート校・CAP高等学院を運営しています佐藤裕幸です.
 CAP高等学院のビジョンの中に,「進級・卒業に必要な単位を,最速・最適に取得する」というのがあります.今回はそのことについて,書いてみたいと思います.

学びのペースを自ら考えるということ

 現在,学年は4月生まれ〜3月生まれで構成されています.最も早く生まれた児童・生徒と最も遅く生まれた児童・生徒との間には約1年の開きがあるわけです.およそ1年の開きがある子供たちを同じ土台で考える(例えば小学校低学年のうちから運動会などで競わせる)ことって,結構残酷だと思いませんか?
 時間的な開きもさることながら,一人ひとりが持っているものは,それぞれ全く異なっていて,例えば,運動能力ひとつ取ってみても,走るのはものすごく速いけど,球技は苦手とか,ピアノは上手だけど,歌はあまり上手でないみたいなことはごく普通にあります.

 教科の学習についても,全く同様のことが言えます.
 思考過程がそれぞれ異なる児童・生徒に,スーパーマン的なマルチな能力を一律に求め,苦手なことを克服することばかりを求める教科学習は,本当に大切なのでしょうか?

 主体的に学ぶ人であれば,困難を克服する先に見えるものを描きながら,乗り越えていくことに面白さを感じることができるかもしれません.しかし,自己肯定感が低い子供に,苦手なことを克服することを強いると,教科学習が一種のトラウマにすらなりかねないのです.

 学ぶペースも自分の気持ちと相談しながら,好きなことから始めてみたり,それほど好きではないけれども,得意なことから始めて自分をポジティブな気持ちにしていくような学びがあってもいいのではないでしょうか?

最短の学びとは?

 Twitter で面白いものを見つけました.

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「最短距離が最速ではない.物理が人生を教えてくれる.」
というものです.

 「最短の学び」というと,目標まで最短の時間で学ぶことをイメージし,目標に向かって,ひたすら最短距離を進むことを考えるかもしれません.そしてこの進み方を推進しているのが,実は1週間の授業を時間割通りに進めていく学校です.学校を休みがちな生徒や理解の遅い生徒も,自力で進めていくことができる生徒も同じ土台で考えて授業を進めようとするので,授業時間数をこなすという意味では適切かもしれませんが,「誰一人取り残さない」という観点で適切な授業と言えるかは疑問です.

 一方,最初は自分の好きなことから学び始めて没頭すれば,自己肯定感が一気に上がります.そこで自分が克服したいことにチャレンジすれば,慣性の法則で一気に力をつけることもできるのではないかと思います.

 つまり,時間割にしたがって予定調和的な学びをするよりも,得意なことはさっさと終わらせ,好きなことに没頭する学びをし,なりたい自分のために努力をするという“自分の型”を身につければ,もっと自信を持てるようになるのでは?と考えています.

教材研究をし続ける教員の授業は最強か?

 教員をされている方々は,基本的には本当に真面目です.少しでもいい授業をするために,日々教材研究をされ,授業の方法なども研究されている先生も数多く存在しています.児童・生徒の皆さんもきっとそのことに気付いていると思います.

 しかし,どんなに熱心に教材研究をし,教え方が上手な先生でも,あらゆる生徒から100%の指示を得ることができるかというと,必ずしもそうとは言えません.あまりいい例えではないかもしれませんが,授業中の先生の口癖が妙に気になり(例えば「ねっ!」を何度も言う),何回言うか数えてしまう,みたいなことはありませんか?また,とてもいい授業だとはわかっていても,先生の声質が自分の耳には合わず,どうしても内容が入ってこないという経験はありませんか?

 これはもう誰のせいでもなく,本当に仕方がないことです.しかしだからと言って学ばなくていい理由にはなりませんし,児童・生徒の皆さんの学びの意欲を失わせていい理由にもなりません.
 では,どうすればいいのか?

 自分の理想の授業を選べたり,あるいは理想の授業を新たに作り出せるようになればいいのではないか?ということです.

たくさんの学習アプリの存在

 現在本当にたくさんの学習ようアプリが存在しています.テレビCMやYouTubeのCMでも流れる“スタディサプリ”.他にもatama +,Qubena,eboard,Asteria... 実に数多くのオンライン学習教材が世に送り出されています.

 自分に最適なアプリを利用して,自分の学びたい順に,学びたいタイミングで学ぶことができれば,“学びの加速度”が大きくなるはずです.

 アプリの活用中にどうしてもわからないところがあれば,質問できる環境(メンターなどの指導員やChat機能を利用した質問)を準備して対応することで,児童・生徒に寄り添った学びができます.

自分に最適な授業を作る試み(まだ妄想段階)

 Microsoft のホログラムは,かなり高い技術で作られています.

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 例えば,ホログラムの技術を利用して,最高に授業の上手な先生の声だけ別人にして聴きやすさを追求してみたり,あるいはもっと大胆に,自分が好きな俳優さんをホログラムで再現して授業をしてもらうというのはどうでしょう?

 さらに授業を受ける教室についてもバーチャル上であれば,クラスメイトもアレンジできます.

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 クラスメイトをアイドル自動生成 AI を使って生成することも可能です.人間関係で悩んでいた児童・生徒の皆さんも,ある意味理想のクラス環境を自分で作り出すことも可能になります.

 半分冗談のような話を書いているようにも思うかもしれませんが,これまでのものになんでも当てはめて,結果的に児童・生徒の学習権を奪うようなことになっているのであれば,このくらい大胆に学びの環境を考えてみるのもありかと思っています.

それでも一番大切にしたいこと

 少し恐ろしいことを提案しましたが,授業における「最速・最適化とは何か?」ということを,改めて考えてみると,大きく2つ挙げられます.

 1つ目は,最速・最適な学びは人それぞれ異なるものだから,年齢のみで区切り,一律なものを与えるだけの授業ではもはや対応できないということ.これだけ個別最適化するツールが出てきているのだから,それらを有効活用できる授業を児童・生徒たちが受けられる環境を整えましょう!ということです.

 2つ目は,知識習得のための学習はAIに任せることで,より人間らしいこと,自分が本気で没頭したいこと,AIには代用できない人間にしかできないことなどにもっと時間を割けるようにしていきましょう!ということです.

 デジタルテクノロジーを利用することは人間らしさを失うこととイコールではありません.上手にデジタルテクノロジーを使うことで学びの最適化を図り,一人ひとりの人間性を高めるための活動に費やす.デジタルテクノロジーを有効活用することで,児童・生徒の学習権を確保する.そんな未来を描いていきたいと思っています.


  


 

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