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ようやく“現場”が戻ってきた ~Hello! Project 2020夏コンサート~

2020年7月11日(土)に、中野サンプラザホールで開催されたコンサート『Hello! Project 2020 Summer COVERS 〜The Ballad〜』へ足を運びました。

■コンサート開催に至るまで

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、Hello! Procect(ハロー!プロジェクト。以下ハロプロ)のコンサート・舞台・イベント類も、2月末以降の公演は軒並み中止・延期に。
その後、コロナの感染が(その時点ではひとまず)落ち着き、政府からもイベント開催制限の段階的緩和のロードマップが示された事もあって、コンサート開催計画が6月15日に発表。そして、東京・大阪・仙台でのコンサート開催決定が6月23日に発表されました。

ようやく、生で見られるコンサートが再開される!
この開催決定の発表は、本当に嬉しかったです。


だからこそ、この発表からコンサート当日に至るまでの、世の中の状況の再変化には、不安を感じていました。
東京都の新型コロナ新規感染者数が100人台に戻り、200人台に増え、新宿の某小劇場では“舞台クラスター”が発生・・・と、悪化していく状況。
更なる状況の変化や、公的機関の判断次第では、コンサート中止もありえると覚悟していたのですが、無事、7月11日のコンサートは開催されました。

■コンサート当日・・・①会場前と入場の様子

7月11日、コンサート当日。
様々な感染予防対策が取られた上での開催である為、会場である中野サンプラザは、入口前広場の様子から、従来とは違っていました。

座席番号で分けられた3グループごとに集合時間が設定されており、最後のグループの集合時間に合わせて会場に行くと、待っている人が少ない。
もともと入場できる人数が絞られている上、最初の2グループは入場後だった事もありますが、かつての開場前の賑やかさは一切なし。

入口前の床には、足形がプリントされたシートが距離を開けて貼られていて、入場する人はそこに立って整列待機。
入場前の段階から、人が“密”になる状態を作らない対策が取られています。

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等間隔に整列した状態で中野サンプラザの建物に入ると、ホール入口に続く床・階段にも待機場所を示す足形シートが。
そして、フェイスシールド&マスク着用の係員による、次のようなチェックを次々に受けて、ホールのロビーに辿り着きます。

・非接触型の体温計での検温
・手の消毒
・スマホでQRコードを読み取り、感染が確認された場合の追跡を目的とした、来場者の情報収集用サイトにアクセスして、座席番号を登録。(※電子機器を持っていない人の為に、用紙も準備されている。)
・チケットは目視確認のみ。いわゆるモギリは行われない。
・消毒用マットで靴底を消毒して、いざロビーへ。

これほどのプロセスを経てホールの中に入ったのは、勿論初めての経験。
開場時間前に多くの人が入口前に集まり、長い入場列に並んで、チケットを係員にチケットをモギられて場内に入る・・・そんな、従来のコンサートでは“普通”だった光景は、この日は全く見られませんでした。

■コンサート当日・・・②会場内の様子

そうして入場したホールのロビーは、実にガランとしていて人影もまばら。
それもそのはずで、祝花が幾つか飾られていて、ホールの常設売店は営業していましたが、物販コーナーやファンクラブの窓口が設けられていないので、長時間滞留する理由が無い。
いや、人が“密”な状態で長時間滞留したり、人同士の接触を避ける為に、今回は物販が行われていないのです。
いつもは、移動したり、留まっている事も大変な場所なのですが、ここも風景が様変わりしていました。

ホールに入ると、これまた恐ろしいほどに静か。
正確に言うと、BGMで流れている歌(公式YouTubeで公開されている「愛は勝つ」、「泣いていいよ」、「負けないで」)だけは聞こえるのですが、人の話し声が全くと言っていいほど聞こえない。
なぜかと言うと、座席が千鳥格子状に指定されていて、前後左右に人がいないような配置になっているので、人同士で話すシチュエーションが生まれないんですね。
これまでの開演前までの時間は、仲間同士で集まったり、前後左右の仲間同士で話して盛り上がる光景が当たり前に見られて、ワイワイガヤガヤしていた時間帯なのですが、この日は、まるで神社仏閣か教会の建物内にいるかのような、ある種、荘厳な雰囲気すら漂っていました。

■異例のコンサート形式

今回のHello! Projectコンサート(以下、ハロコン)は、公演内容も今までとは大きく異なる、かなり異例の形式で行われています。
全グループが一堂に会するのではなく、各グループのメンバーがA・B・Cの3チームに分かれて、チーム毎に1公演ずつ開催。無論、グループでのパフォーマンスは行われません。
そして、自分達の持ち歌や新旧ハロプロ楽曲も封印して、メンバー1人1人がJ-POPのバラード曲をカバーするという趣向になっています。

ハロプロの楽曲には、スローテンポな曲やバラード調の曲もあるので、それまでも封印するのは・・・という意見も、ネット上では見かけました。
しかし、私の勝手な推測として、次のような“公演中のお願い事項”が理由なのだと考えています。

・マスクの常時着用
・着席観覧
・声援等の発声行為は一切禁止

ダンスナンバーやアップテンポな曲は、体を動かしかねないのでNG。
そして、例えスローテンポな曲やバラード調の曲でも、ハロプロの曲になると、いつもの習慣で思わずコールしかねないのでNG。
そう考えれば、敢えて自分たちの持ち歌を封印した上で、バラード曲縛りにした理由も納得できます。

異例の公演スタイルであることは、ステージセットにも表れていました。
ステージ上に大掛かりなセットが組まれ、背後にビジョンが設置される従来のスタイルから大きく変化。
公演タイトルが記されたパネルが背後に設置されているのみで、ビジョンは無く、ステージ上にはフロントスピーカーが設置されているだけという、実にシンプルなスタイルに。

公演中のMCで触れられていたのですが、従来のハロコンでは、ピーク時には100人以上のスタッフが一堂に会していたそうで、今回はスタッフの人数も最小限に絞られ、その結果生み出されたのが、このシンプルなスタイルのようです。

■公演の様子・・・ステージを見たいのに・・・

19時15分、開演。
私が見たのは、この日としては3公演目となるCチーム公演。(1公演目がAチーム、2公演目がBチームでした。)
シャ乱QのまことさんがMCを務めるのが恒例だったのですが、今回はハロプロOGがMCを務めていて、この日はモーニング娘。OGの保田圭さんでした。

出演メンバーがステージ上に立って間もなく、2階席の後ろから2列目に座っていた自分は、ある事を痛感しました。
ステージが思っていた以上に見えづらい!

ステージ上の照明が普段よりも暗めで、ピンスポットのライトも無いので、肉眼ではステージ上のメンバー表情が分からない。
もっと言えば、衣装がいつもの派手派手しい物ではなく、白と黒を基調とした落ち着いた物だった事もあって、メンバーの判別が付かない。
1階席後方や2階席からはステージが見えづらいので双眼鏡を持参した方が良い、という事前情報は得ていたのですが、“見る”という意味では、2階席の後ろから2列目は、なかなかに厳しい環境でした。

■メンバー1人1人が主役で、歌を純粋に楽しむハロコン

あくまで個人的な“見る”環境としては、相当に難がありましたが、公演自体は大変良いものでした。

普段のグループによるパフォーマンスだと、歌割やフォーメーションによって、メンバーによって目立つ・目立たないの差が出てきたり、1曲を複数のメンバーがパートごとに歌う場合が殆どなので、個人個人の歌を十分に堪能できる訳ではありません。

しかし、先に書いたように、今回のハロコンはグループによるパフォーマンスが無く、メンバーがソロで歌を披露するスタイル。
1曲を1人で歌いきり、舞台上には歌っているメンバーしかいない、メンバー1人1人が主役になるのが、今回のハロコン。
そして、ダンスパフォーマンスが無く、歌しか表現方法が無いステージであるが故に、メンバーからは歌がストレートに届けられ、観客はそれを受け取って純粋に歌を楽しめるのが、今回のハロコン。

歌唱力が高いメンバーが見せつけてくれた、真骨頂や更なる高み。
グループの中では決して歌割が多くないメンバーの歌に対する「こういう歌い方をするんだ」、「結構、歌上手いじゃない!」という発見。
あまり追いかけてこなかったグループのメンバーの歌を聞いて、「この子、こんなに歌がうまいんだ!」と驚いたり、「どのグループにも歌が上手いメンバーがいるんだ」と、実感するハロプロの層の厚さ。

歌い手側・聞き手側ともに、歌に特化したソロステージだからこそ、今までには無い多くの新発見・再発見ができたコンサートとなっているように感じました。

そして、歌唱力の違いには関係なく、どのメンバーからも、単に上手く歌おうとするのではなく、歌に真摯に向き合って、歌を届けようという思いが伝わってきていました。

公演は1時間半弱で終演。
終演後は、係員のアナウンスに従って、1階席の2列分→2階席の2列分→1階席の2列分・・・という感じに分かれて規制退場。
ハロコンに限らず、かつてのコンサート・ライブ終演後は、人込みと共に会場外へ出る事が多かったですが、そのような状態が作られる事は全くなく、最後まで“密”を作らない対策がなされていました。

■コンサートを振り返って

新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛期間を経て開かれた、新しい形のハロコン。

振り返ってみると、感染予防対策・公演内容ともに、今行える最大限の事をやってくれていると感じましたし、従来とは異なるスタイルになったことで、今までに無い楽しみ方や、新たな発見ができた、良いコンサートでした。
ただ、ハロプロの見せ場の1つであるダンス要素や、ハロプロ楽曲が無かったのは、仕方が無いこととは言え、少し残念でした。
再び、観客が生で見られるコンサートが開催できることになった時には、バラード・スローテンポな曲縛りで良いので、ハロプロ楽曲の解禁を期待したいです。

そして、これまでとは全く違う雰囲気を体感し、光景を目の当たりにして、戸惑いや違和感を感じたのも、正直なところです。

開演前のコンサート・ライブ会場の空気が、これまでは“高揚感”で作られていた物が、この日は“緊張感”によって作られていたように感じました。
その“緊張感”の元になっていたのは、これまでとは様変わりした光景への戸惑い、ウイルス感染予防に対する意識、久しぶりに見るコンサートへの期待・・・見に来た人それぞれの、様々な思いだったのだと思います。

でも、このような光景や、緊張感に包まれた空間が生み出されたのは、人が“密”になる状況を作らない、徹底した対策が奏功した結果。と前向きに捉えることも出来ます。
もしかすると、人が実際に観覧できるコンサート・ライブ会場では、これが“新しい標準様式”となって、今は戸惑いや違和感を感じている事も、時間の経過とともに“当たり前の物”になっていくのかもしれません。

2020年7月11日。コンサート・ライブがある生活が戻る、第一歩を踏み出しました。

《追記》

7/16の日本テレビ『news zero』のエンタメコーナーで、今回のハロコンの模様が、“コンサートの新たな取り組み”として取り上げてられていました。

その中では、舞台裏の様子も紹介されていて、ケータリングがお弁当になったり、メンバーの人数分用意されたマイクを手袋着用のスタッフが扱っていたり、落とした物を自分で拾わないように指示が出ていたりと、対策が徹底されている様子が伺えました。
そして、インタビューに答えていた音響責任者の方の「マイクが凶器になる」という言葉が印象的でした。

舞台裏でも徹底的に対策しているのだから、見る側の自分達も、感染拡大予防により一層努めなければならないと、思いを新たにしています。

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