鍋から甦った帝国海軍
1945年4月7日、海上特攻として米軍上陸下の沖縄へ向かった超弩級戦艦『大和』以下わずか10隻の第二艦隊は、東シナ海海上にて圧倒的な米軍艦載機の攻撃を受け、海底深く深く眠った。この無謀とも言える作戦の戦死者数、合計3,721名。自ら死に場所を求めた『大日本帝国海軍連合艦隊』はここに壊滅し、その組織的戦闘の歴史に終止符を打ったのであった・・・。
が、しかし。しかしである。
その悲劇から55年後の2000年8月下旬、横浜の友人より、至急電が突如わてのパソコンにもたらされたのである。
この至急電によって、牛心亭こげな本舗参謀本部が色めき立ったは当然であった。あの、あの大日本帝国海軍連合艦隊が“鍋から”蘇ったのである!
これを食べずして、どうする!
折り返しの至急電が参謀本部より発信されて一週間後、その『海軍カレー』が届いたのである。さっそく試食・・・これがまさに『大和』主砲・46センチ砲並の爆発的旨さであったのだ。
■“HSB包囲網”を撃破する、乾坤一擲の味!
現在の国内における家庭用カレーのルーおよびレトルト資源は、“HSB包囲網”と呼ばれる『家帝国』と『SB帝国』に押さえられている。国内のカレー小国はこの包囲網によりスーパーや量販店という生命線を圧迫され、存亡の危機に直面しているといって過言ではない。
近年、『オリエンタル国』が羽田空港やグッズ店などでレジスタンス的に反撃を開始し、オールド・ファンはその二十数年ぶりに見る勇姿に感激の涙を流したのであるが、さらに“HSB包囲網”をうち破る強力な部隊が登場したのである!
この二品、まさに往時の二大戦艦『大和』『武蔵』の如く、超弩級の攻撃的美味力を誇るレトルト・カレーなのである!! これは大東亜のカレー小国、その自主独立を刺激する大いなる戦力と言えよう(ずっどぉーーーん!)。
■よこすか海軍カレー
■帝国海軍横須賀鎮守府發 海軍さんのカレー
■“旗艦”は『海軍さんのカレー』である!
さて、この二大海軍カレーであるが、前者は海軍の割烹術参考書から復元されたものだが、若干甘め(と言っても、あとから辛さが来る)。後者は、辛さが強くコクが深い、まさに絶品という味。両方ともとても美味しいのである。あくまでも好みの問題ではあるが、わて自身は後者『海軍さんのカレー』を“旗艦”としてお勧めする。
というわけで、この二大海軍カレーのお値段であるが、それぞれ総建造費850円ということである。ひと箱ふた袋入りであるからして、一袋425円! さすがに超弩級カレーだけはある建造費だ。“HSB包囲網”の高級戦艦建造費から比べれば少し割高ではあるが、それだけの戦力的価値はある。
というわけで、カレー連合艦隊の今後の戦果拡大に期待したい。大東亜カレー共栄圏、その解放の日は近い・・・。
ミリタリアンフードの街 横須賀が熱い!
■恩賜の新鋭艦艇群に、涙の海ゆかば。
2002年6月、東京にお住まいのSASANABAさんという球磨焼酎ファンの方が横須賀を実際に踏破されて、『海軍カレー』の実態を詳細にレポートされたのは『鍋から甦った帝国海軍』でお知らせした。
(注:現在SASANABA氏のサイトは閉鎖されている)
7月初頭、そのSASANABAさんから横須賀發の軍関連飲食物、つまり『ミリタリアン・フード』の新艦船がここ筑前にもたらされた。食事機密であるミリタリアン・フードを持ち出し、しかも身命を賭して筑前まで極秘裏に搬送いただいたSASANABAさんに感謝を申し上げると共に、その戦況報告を取りまとめるのに手間取ってしまったことを深く謝したい(重営倉入りじゃて)。
まずご寄贈いただいたのは、SASANABAさんが先のレポートで触れられている『海軍さんの珈琲』である。重複申告となるが、まず内容について報告させていただく。
■海軍さんの珈琲
さて、ハッチを開けたところで驚いた! この『海軍さんの珈琲』は、空母であった。まさに幻と消えた超弩級空母『信濃』もかくや、搭載伝単がこれでもかと甲板より上昇を開始したのである。『何かを語りかけてくる珈琲・・・』という惹句の意気や良し!
大東亜戦争敗戦記念日の当日に仰ぎ見るその伝単、大海原を征く在りし日の連合艦隊と超弩級戦艦『大和』の勇姿のシルエットが目にしみるのだ。♪海ぃ~ゆぅかば~。
さて、肝心のお味だが、拙宅に備えられた真空ポンプ付プラステイツク製乾珈琲豆渠が満杯のため、未だ公試運転が為されていない(T_T)。
そして御寄贈いただいた次ぎは、『海軍カレー』連合艦隊の一翼を担う新鋭艦である。
■よこすか海軍カレー
これまでの超弩級海軍カレーと比べて、まず一船腹しか持たないところが大きな違いである。また排水量も姉妹艦の210gと180gの中間を行く規模で、建造費にしても安価な部分はまさにポケット戦艦か。
姉妹艦同様に横須賀海軍カレーのマークが右上に燦然とひるがえっているのが美しい。というわけで、実際のお味である。
辛さについては調味商事工廠製ほどの咆吼は無いが、コクはしっかりとあり、ややマイルドな味わいで食べやすい。若いときは激辛を食いまくっていたわてであるが、いまは辛くはあっても落ち着きのある味が合うようになったため、ちょうどピッタリである(ま、いわゆる老兵化)。
■いま筑前周辺各地で、横須賀ミリタリアン・フードが進撃中!
ところで、現在筑前や周辺の県でも、横須賀のミリタリアン・フードが店頭に進出し始めている。まさに鍋から甦って量販店店頭を進撃し、消費者の目と口を砲撃しているのだ。
下記は最も筑前(および他地域でもそうであろう)で量販店の冷蔵ケースに接岸して砲撃を繰り返している、ニチロ工廠製『よこすか海軍ドライカレー』である。
■よこすか海軍ドライカレー
この『よこすか海軍ドライカレー』は、筑前市内のほとんどの量販店でその勇姿を見かけることができるほどポピュラーな存在である。
これを筑前の極大衆的超市場『マルキョウ』で初めて見かけたとき、買い物カゴを提げたおばさんやおいちゃんたちがうざうざと行き来する中で、わては思わず宮城遙拝しそうになった。まじに驚き、かつ嬉しかったのだ。
「嗚呼、ここまで進出してくれたか! それなら頼む! さらにレイテ湾に突入して敵上陸部隊を粉砕してくれ!」
あの大東亜戦争後半の分水嶺とも言うべき痛恨のレイテ湾目前の転進を想ひ、気持ちは高まった。が、わてが出来ることと言えば、家に帰って袋を開けて皿に移し「チン!」を待つことだけであった。ん~~~ん、よかカレーの香り(~Q~;)
と、ところが!
さらに、横須賀ミリタリアン・フードの熱さを感じさせてくれるアイテムが、筑前で発見された!『ペリーシチュー』である。
■ペリーシチュー
箱に曰く“開国の味”だ! 素晴らしいじょ、このキッチュさ(この場合誉め言葉)。まさに開国以来、世界大勢の最前線にあった横須賀という街の歴史を感じさせてくれる。
これをミリタリアン・フードとすることにしたのは、箱にペリー来航時に記念品としてシチュー鍋が贈呈された故事が記されており、米国海軍において『海軍カレー』と同様のポジションを有していたとの判断である。
さて、砲艦外交の尖兵としてやってきたペリーの威厳ある肖像画をあしらった外箱ではあるが、シチューを納めた内袋も相当に注目のデザインである。
線画のペリー肖像に添えて、「このペリー像を見るだけでも、日本人にとってとても恐い印象だったことがうかがえる」とあるが、まぁ、それだったら最初から恐くないかわいいキャラクターにしたほうが良かったのかもと思ったりもする。
なんか、シチューが喉を通りそうにないよなぁ~、この顔見てると。とはいえ、中身はボリューム感もあってなかなかの出来なのだ!
さて、このシチューは近所のプロ向け食材店にて98円で安売り遊弋中を捕獲、艦籍を移したもの。意外や意外、身近なところに眠っていたとは・・・。
◇ ◇ ◇
さらに前稿『鍋から・・・』でご紹介した調味商事工廠製の『海軍さんのカレー』は、ぬぅあんと佐賀県は唐津市にある鮮魚専門販売センターの店頭にあったのを電探で発見した。横須賀海軍カレー連合艦隊司令部が、分遣隊に筑前や肥前までの進出を命令していたことに、改めて驚愕した。
逆に言えば、それだけミリタリアン・フードの街としての横須賀が、いま熱いのであろう。横須賀ミリタリアン・フードのファンとしては、海軍カレー連合艦隊の所属艦がどしどしと博多湾に「寄港」して欲しいものである。
■追加情報
つい最近のことであるが、ミリタリアン・フード艦隊に新たな精鋭が参加したことが判明した。それが下記の2つの艦艇である。「よこすか海軍カレー」の人気が牽引車となって、さらなる“軍備増強”のムードが高まって来たのは、我らミリタリアン・フードの愛好家としては歓迎すべき事である。
■よこすか海軍ドライカレー(パック)
■海軍さんのデザートようかん
海軍割烹書からの復元・・・という惹句に、愛好家の心をくすぐられてしまうミリタリアン・フードではあるが、2番手の『海軍さんのデザートようかん』についてはその辺りが明かではない。
また、この品は佐世保の海軍ゆかりの施設で極秘裏に入手したもので、横須賀とは直接的関係は無い。しかしながら「海軍さんの・・・」という“定冠詞”にグッと来てしまうのは致し方あるまひ。
■追加情報2
今年03年6月のことだが、近所にあるスーパー「ダイエー」に、またまた横須賀鎮守府を出航した新鋭艦艇が接岸しているを発見した。それは、箱書きによると横須賀の老舗割烹である『魚藍亭』さんというお店の冠が付いた、最近進水したと思しき『元祖よこすか海軍カレー』である。
当諜報部が察知した情報では、市からの依頼でこの魚藍亭の女将さんが、割烹書に忠実に海軍カレーを再現。市の認定1号店の称号を取得したという。
ま、まさに元祖!! 「海軍カレー」連合艦隊の旗艦、堂々の博多湾入港である。これが、海から甦った最初の味だったのか・・・。
■魚藍亭 元祖よこすか海軍カレー
さて、堂々たる姿を現した旗艦カレーだが、“艦長”である女将さんのお姿も箱裏書きにしっかりと掲載されていた。大河原晶子艦長、その人である。
ああ~~~~、あなただったのですか。数年前、この筑前の田舎牛を「よこすか海軍カレー」の世界にどっぷりと肩まで浸からせるきっかけを作った方は・・・。
筑前の民よ、いざ「ダイエー」へ急げ!
(了)
■2022年追記:22年前の当時は、まだまだ横須賀海軍カレーは出回っていなかった。周囲ではほとんど見たことが無かったですね。いまでは普通に、それも数多いアイテムを見られるようになりました。この稿に書いた商品も、まだまだ現役で残っているものは多いようです。
『鍋から〜』に書いていた、”現在の国内における家庭用カレーのルーおよびレトルト資源は、“HSB包囲網”と呼ばれる『家帝国』と『SB帝国』に押さえられている”という認識は今も変わりないのですが、現在の大手流通は『家帝国』の覇権主義が著しいようで。カレーだけでなく、香辛料や薬味にまで多岐に渡って、地政学的な生存圏が構築されておりますね。
個人的な話ながら。小学生時分のカレーといえば『オリエンタル国』の粉ルーを母は愛用していました。中学生くらいになって自分でカレーを作り始めると、私は『SB帝国』臣民となりました。いまでも”汝臣民”です。
理由は、ちょうどこの稿を書いていた2003年頃から出始めた「牛海綿状脳症」いわゆる”狂牛病”なんです。アメリカや日本でも感染が広がり、アメリカからの輸入も停止して、牛肉が食べられなくなりました。
その渦中、『SB帝国』はルーの一括表示の下部に「牛原料由来の成分は使っておりません」とちゃんと明記していたんですね。私は食品メーカーとしての”誠意”をしかと感じて、いまだに『SB帝国』の製品しか使っていません。
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