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【2019 J1リーグ】横浜F・マリノス ~マルコスシステム②~

1.ベースフォーメーション

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 第21節から第34節まで主に使用したフォーメーション。マルコスシステムと同じ形ですが、エジガルの負傷離脱を受け、当てはめる選手を変更。その特徴に合わせて志向するサッカーも少し変わりました。

 従来のマルコスシステムはエジガルとマルコスを軸とした遅攻も行える万能なフォーメーションでした。しかしこちらはエリキやマテウスといったスピードに定評のある選手を採用。その良さを活かすため、素早い切り替えからの激しいプレスと、前後をある程度分断した攻撃を中心としたサッカーへ変貌を遂げました。

 相手の思考時間を削るほどの切り替えの早さ。そして前線の選手たちによる迫力満点のドリブル突破。見ていて最高にスカッとする試合が多かった印象です。

 とにかく前半から攻守に渡ってぶっ飛ばすこのシステム。前線4人の体力は1試合もたず、せいぜい60~70分ほどまで。前半に複数得点できないと震えて後半を待つような特攻型でした。

2.出場選手

マルコス2出場時間

・黄色:先発フル出場
・オレンジ:先発から途中交代
・赤:途中出場
・数字:出場時間

(データ元:Football LAB

 全試合フル出場を果たしたのは畠中のみ。マルコス、エリキ、仲川も出れる試合は全て先発。また、チアゴ、ティーラトン、喜田、扇原の4人は出場停止以外は全て先発でした。キーパーもパギが負傷中は杉本が出ていましたが、基本的に先発はパギ。以上の9人はこのシステムにおいて固定されたメンバーだったと言えるでしょう。

 固定されていなかったのは右サイドバックと左ウイング。前者は最初広瀬が務めていましたが、彼が負傷してからは松原がポジションを奪取。活躍を続けてその座を譲りませんでした。後者は主にマテウスが先発で渓太が途中交代。この2人で1つのポジションとなっていました。

 前線の選手であるエリキ、マテウス、仲川、マルコスは試合開始から全力でぶっ飛ばすため、1試合もちません。大体60~70分ほどでガス欠になります。そのため、サイドの交代で渓太。試合クローズのために皓太や大津を投入することが多かったです。

3.得点とアシスト

マルコス2得点_1

マルコス2得点_2

・各数値は90分あたりのものに補正してあります。
・途中出場が多く、数値が跳ねている選手は最高値比較から除外します。
・枠内率 = 枠内シュート数 / シュート数 *100 (%)
・決定率 = 得点数 / シュート数 * 100 (%)
※高野、和田は途中出場が多いので数値が跳ねています。

(データ元:SPAIA

 最も得点を取ったのはエリキの8ゴール。アシストと合わせると11得点に関与。これは仲川も同じ数値を記録していました。新加入ながら得点を量産したエリキ。大事なところでゴールを決めてくれた仲川。この2人の活躍が大きかったことがわかります。

 たびたび議論となっていた左ウイングの2人を比較してみます。なんと、得点関与は6ゴール3アシストを決めた渓太に大きく軍配が上がりました。結果を残していたのは彼の方だったんですね。ただ、マテウスは平均シュート数とクロス数で最多を記録。独力での打開からチャンスを量産していたのは彼の方だったようです。

 もう1つ注目したいのがティーラトンの決定率と枠内率。90分あたりのシュート数が1本に満たないながらも3得点を記録。機を図ったミドルシュートに何度も救われてきました。パスだけでなくシュートもうまくなったのかもしれません。

 得点に関与した選手の中で平均パス数が最も多いのが扇原。彼がこの布陣における潤滑油だったようです。左サイドから組み立てることは多かったですよね。

4.ゲームモデル

 このシステムのゲームモデルを、サッカーにおける4局面ごとに見ていきます。

サッカーの4局面_マルコス2

■攻撃時

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・SB-CH-OMFの三角形がローテーションして後方でのボール保持を安定
・SBが内側へ入りWGへのパスコースを創出
・3トップは幅と深さを取ってアイソレーション
・強力3トップに1対1を作り出してドリブル勝負

 攻撃時はSB、CH、OMFの3人がローテーションして三角形の形を変えていきます。選手たちが絶えず移動することで、相手のマークを攪乱。ポジションに囚われない動きビルドアップを安定化させます。

 このローテーションに3トップは参加せず、横に目一杯広がって幅を取ります。スピードとドリブル突破を兼ね備えた強力ウイングを活かすべく、サイドバックは内側へ位置する。これによって後方からウイングへの直通コースが生まれます。そこへパスを出してサイドから一気に相手へ攻めかかる。

 従来のマルコスシステムではマルコスが自由に動いていましたが、この場合は相手を引っ張るなど、味方を活かす動きも多め。その意図をうまく汲み取り、ティーラトンや松原などのサイドバックが空いたスペースを埋めていました。

■ネガティブトランジション

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・多少バランスを崩してもいいので近くの選手が一斉に寄せる
・ボランチとディフェンスラインの選手は元のポジションへ戻ること優先

 ボールを失った際に近くにいる選手はポジションを問わず相手に寄せて即時奪回を狙っていきます。反対に、ボールから遠いボランチとディフェンスラインの選手は元のポジションへ戻ることを優先します。

 切り替えの早さで勝負をし、相手が準備できる前に襲い掛かることが重要。考える時間を削ぎ落してミスを狙います。

■守備時

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・そのままで4-2-1-3で守備
・どんどん前に出て人を捕まえにいく
・後方も連動して前に出ていく
・ボールサイドへスライドして横幅をコンパクトに
・逆サイドは捨てて、ボールが入ったらスライドして対応

 元のフォーメーションである4-2-1-3で守備を行います。ブロックをきちんと敷くというよりは、どんどん選手が前に出て相手を捕まえにいく守り方。ある程度バランスを崩していいので、後方の選手もこれに連動します。いわゆるストーミングというやつに近いです。

 ブロック自体は横へコンパクトな陣形を維持しつつ、ボール方向へスライド。ハイラインを敷いていることもあり、縦横に圧縮して相手へ迫っていきます。この守り方の都合上、逆サイドの選手は基本的に捨てている状態。ボールが入ったらスライドして対応しています。

■ポジティブトランジション

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・前の4人は広がりながら一斉に相手ゴール方向を目指す
・第一優先は最前線へのパス
・前に出せないのなら後ろで回して時間を作る

 前線の4人はすぐさま相手ゴール目掛けて一斉に前へ出ます。このとき横幅も少し意識しており、相手を広げようとします。

  ボールを奪った後の第一優先は最前線へのパス。カウンターで3トップに刺せるのならそこへパスを出します。それが無理なら後方でボールを回して場を整える。主にU字に回して時間を作り出します。

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