【2020 J1 第5節】鹿島アントラーズvs横浜F・マリノス マッチレビュー
1.はじめに
前節、FC東京の的確なカウンターを受けて敗北したマリノス。次なる相手は今季から改革中の鹿島アントラーズです。マリノス相手に正面からぶつかってくるはず。その予想は見事に裏切られました。自分たちの色を出すことより、きちんと対マリノス仕様できた鹿島。できていたこと、できなかったことを整理してきましょう。
2.スタメン
■鹿島アントラーズ
・4-4-2の布陣
・両翼にアラーノとエヴェラウドを配置
・最前線には上田と遠藤康を起用
■横浜F・マリノス
・4-2-1-3の布陣
・トップ下にマルコス、左ウイングにエリキを起用
3.相手を引っ張るマルコスと隙間に入る味方
【POINT】
・マルコスが外に動いて相手ボランチを引っ張る
・空いた箇所に味方が入ってボールを前進
前半はマルコスが相手ボランチを動かし、空いた箇所を味方が使えていました。鹿島がゾーンでなく、人を捕まえる意識が高かったからでしょう。これによって、サイドから斜めに中央へ入り込めていました。特に松原は目立っていました。相手ライン間に顔を出すタイミングが抜群でしたよね。
しかし、後半になってからはゾーンの意識を強め、この動きに中々釣られなくなります。同じアプローチでボールを前進させることが難しくなりました。その中でも、中盤でワンツーを駆使するなど、相手をかわす工夫が見られたのはよかったと思います。
4.斜めのパスで相手の背後を突く
・外にパスを出すことで相手中盤の目線を逸らす
・目線が離れている間に背後からライン間へ侵入する
・エヴェラウドの背後から松原が斜めに入る
・一旦エジガルに当てることで中央に視線を釘付けできる
外にいるエリキにパスをつけた扇原。彼の持ち上がりとパスにより、アラーノの視線を奪います。その間に背後を取っていたティーラトン。相手中盤にススっと侵入します。
相手がコンパクトな4-4-2ブロックを築いて縦パスを打ち込めない。けど、外を経由して斜めにパスを入れれば、縦パスと同じ効果を得られる。急がば回れですね。
その後、エヴェラウドの背後を取った松原にパスが渡ります。元々フォワードの選手ということもあり、彼の背後は比較的取りやすかった印象です。先ほどのマルコスが引っ張る図もエヴェラウドの背後を取っていますしね。
ボールを受けた松原は仲川ではなくエジガルを選択。一番危険な地帯にボールを入れることで、相手の視線を中央に釘付け。その状態から外にいる仲川に展開し、すぐ中央へ折り返し。ここまで内や外に振られると、相手は選手を見失いやすい状態に。マルコスがフリーで決めてくれました。
実は前節もオナイウが下りてさばくことがありました。今節はエジガルがその役割を果たし、見事得点に繋げられました。この崩しは今季ベストゴールと言えるでしょう。
5.後ろに重いビルドアップと縦に急ぐ意識
この試合はパスを相手に奪われ、ディフェンスラインの背後にロングボールを放り込まれる。そこから多くのピンチを迎えました。なぜ何度も同じことをやられたのでしょう。自分の中で1つ思うところがありました。
■問題点:空洞化する中盤
・最終ラインでのビルドアップを安定させるため、多くの人を割く
・最前線は張っており、高い位置を取る
・前後分断しており、中盤が空洞化する
・その状態で縦に急ぐので、相手にボールを取られたとき中盤で自由にされる
マルコスはビルドアップを助けるために下りてくることがあります。上図はその典型ですね。それとは裏腹に、最前線の選手たちは高い位置を取っています。これが生む構図は前後分断です。図を見ていただければわかるのですが、見事に中盤が空洞化していますよね。
この状態にも関わらず、チームとしては縦に攻め急ぐ意識が高い。ティーラトンの位置取りがそれを表していると思います。そのまま前方へパスが通ればいいのですが、奪われてしまうとまずいです。というのも、中盤が空洞化しているので、相手がセカンドボールを拾いやすい。また、奪ったときにスペースと時間があるため、相手最終ラインの背後目がけたロングボールを精度高く蹴れます。
「最近マリノスの即時奪回あんまハマってないなぁ」そう思うことがあったでしょう。それは中盤が空洞化しているので、相手選手までの距離が長いから。ここの密度が高ければ、もっと早くアプローチできるでしょう。
いい攻撃ができていないからいい守備ができていない。よく聞きますが、その言葉はこういう状態を指しているのだと思います。
■改善案:段階を踏んだビルドアップで落ち着いて前進
・中盤まで人が上がりきっていないので、ボールを後ろに戻す
・前後分断でなく、中盤にも人を割くような立ち位置を取る
後ろからいきなり最前線に送るからまずいのです。そんな一気にすっ飛ばさず、段階的に1歩ずつ進んでいきましょう。
味方が中盤まで上がりきっていないときは、ボールを後方に戻して人員配置をやり直し。前後分断するのではなく、間にも人を割くような立ち位置を取ります。そうすることで、繋ぐことに失敗してもすぐ相手へ寄せることができるでしょう。
あくまでこれは相手が帰陣している場合です。こちらの方が人数が多い、または相手の陣形が明らかに崩れている。こういったときは縦に急いでいいでしょう。この使い分けができるようになることも今後の課題だと思います。
このときも同じですね。まだ畠中やチアゴが上がり切っていないのに、高い位置を取ったティーラトンへパスをつけてしまう。もちろん通れば問題ないのですが、失ったときのリスクが大きいです。
また、この状況なら扇原が下がる必要はなく、畠中がドリブルで前進すればよかったのではないでしょうか。昨季終盤のやり方が極端になり、今もそれに強いこだわりを見せているように感じます。
6.スタッツ
■sofascore
■SPAIA
7.おわりに
悪い失い方というのは『中盤が数的不利な状態で失うこと』だったのだと感じました。組み立ての段階でいい立ち位置が取れていないから、その後の守備で割を食う。まさにサッカーの攻守は表裏一体ですね。恐らく、攻撃の形が改善されれば失点数も減ると思います。
前半の方が割合多かったですが、相手の中盤を突破して攻撃できる頻度はそこそこありました。決して固い4-4-2に苦戦しているわけではないと思います。落ち着いて、段階を踏んだ攻撃ができれば自然と攻略できるはず。
試合は水曜日にすぐ行われます。短いスパンでどこまで改善できるか。何かしら変化は見れるのか。選手たちの成長を楽しみにし、次の試合を迎えましょう。
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