【2019 J1リーグ】横浜F・マリノス ~ハイライン~
1.オフサイドについて
ハイラインについて語るのに外せないオフサイド。改めてルールを見てみましょう。
競技規則第11条に以下のように記載されています。(長いため、今回注目したい箇所のみ抜粋)
2. オフサイドの反則ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた*瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる
*ボールを「プレーした」か「触れた」最初のコンタクトポイントを用いる。
簡単に言うと、パスを出した瞬間にオフサイドポジションにいたらオフサイドとなります。パスを出した後にオフサイドポジションにいてもオフサイドではありません。何当たり前の事を言ってるんだとお思いでしょう。しかし、ここがハイラインと密接に関わってきますので、よく覚えておいてください。
2.ハイライン戦術について
まずハイライン戦術とは、ディフェンスラインの選手たちが高い位置を取ることを言います。このやり方はメリットとデメリットがはっきり表れます。
■メリット
・相手選手のオフサイドを取りやすくなる
・縦にコンパクトな陣形を作れる
まず挙がるメリットとしては、オフサイドを取りやすくなることでしょう。ディフェンスラインが低いと相手がオフサイドになるエリアが狭まります。しかし高くすると広がるのです。そこへ誘導し、一斉にラインを上げる。抜け出されてもオフサイドならこちらのボールになるから怖くないです。
もう1つが、縦にコンパクトな陣形を築けることでしょう。コンパクトだと何が嬉しいか。それは、スペースが小さくなることです。サッカーは敵がいないところを縫っていくように進む競技。そのエリアが狭まるというのとは、それだけ正確な技術を求められるということです。また、稼働域も狭まるため、敵のプレーが予測しやすくなります。さらに、ボールを奪ったときの位置が高いため、素早く攻めることができるのも縦に圧縮するメリットだったりします。
■デメリット
・後方に広大なスペースができてしまうので、抜かれるとピンチになる
・細やかなラインの上げ下げがあるので、守備陣のスタミナ消耗が激しい
反対にデメリットは、ディフェンスラインの後方に広大なスペースができてしまうことです。相手をオフサイドにかけ損なうと一気にピンチ。すぐにキーパーと1対1です。これを防ぐため、ラインコントロールは大事になります。(やってみるとわかりますが、ライン上げるのすっっっっごく怖いんですよ...)
後述しますが、ボールの上下に合わせてディフェンダーも上下するため、意外とスタミナを消耗します。ハイライン体験者の自分としては、短いシャトルランをしてる感覚でした。べたっと引いてると待ち受けるだけなので、上下動が少ないですよね。スタミナ消耗までも対極なのです。
3.ハイラインの基本的な動き方
■基本その1 ~ボールの移動に合わせて上下動~
相手がバックパスなどでボールを下げたらその分ラインを上げる。相手が縦パスなどでボールをあげたらその分ラインを下げる。こうすることで、設定してる『ボールとの一定距離』を保ちます。
■基本その2 ~フリーなときはラインを上げない~
ボールを持ってる相手がフリーなときはラインを上げずにキープします。というのも、フリーならばいつどこにでもボールが蹴れ、周りを見る余裕があるからです。
「あっ!一番前はオフサイドになりそうだけど、後ろからきたサイドハーフなら入れ替わりで抜け出せそう」
こんな確認も可能でしょう。反対に、誰かが寄せている場合は相手に余裕がないため、ある程度ラインを上げてもリスクが低いです。ハイリスクの中にも安全性がないとだめですよね。
■基本その3 ~ボールを蹴る瞬間に下がる~
裏へのボールに全力ダッシュで下がるのはいつか。それは相手がボールを蹴ったときです。
なぜそうなのでしょうか?最初に述べたオフサイドになるタイミングを思い出してください。そうです『相手がボールを蹴った瞬間』です。それより後にラインを上げても意味がありません。
しかし、蹴った瞬間に下がるなんて現実的ではないです。そのため、相手がボールを蹴りそうなときにみんなで一斉にラインを下げ始めることがセオリー。
反対に、1人に照準を定めて蹴りそうなときにラインを上げるとオフサイドを取ることもできます。ここはどちらを優先するかはチームの約束事次第ですね。
4.マリノスのハイライン戦術
・最前線にいる選手をオフサイドにかけるためラインを上げる
・ボールホルダーがフリーでもラインを上げる
・明確なライン統率者が不在
・後方のスペースはキーパーが出ることによってカバー
マリノスの場合は、最前線にいる相手選手をオフサイドにかけるためラインを上げているように見えます。しかも、ボール保持者がフリーでも構わずラインを上げる。号令を出す人も明確でなく、ライン統率者が不在のように思います。
後方にできる大きなスペースはキーパーがカバー。パギの躊躇ない飛び出しに多く助けられています。また、チアゴのでたらめなスピードも強力な武器。彼のカバーリング能力にも助けられていますね。
■2列目からの飛び出しについて
今季よくやられた2列目からの飛び出し。前述した『最前線の選手をオフサイドにするため』ラインを上げていることが影響していると思います。
左図のように、前にいる選手へボールが入りそうなときにラインを上げる。そこへボールが入るとオフサイドになるでしょう。しかし、右図のように最前線の選手は囮で、本命は2列目の選手だった場合はオフサイドを取ることができません。
レビューでも何回か取り上げましたが、『義理チョコと本命チョコ』はマリノスに効果絶大でした。これを鑑みてどうするかが来季への課題でしょう。個人的にはセーフティにいくため、オフサイドを取るハイラインではなく、縦にコンパクトな陣形を敷いてすぐ攻めることができるハイラインにしてほしいと思ってます。
5.オフサイドを取った数
最後に2019シーズンにおいて、マリノスが相手をオフサイドにかけた回数をグラフ化してみました。
基本的に4本以上オフサイドを取っていたんですね。しかしFC東京はホームアウェイ双方、広島はホーム時、松本もホームアウェイ双方で少なかったようです。
FC東京に関してはしっかり対策を練っていたからだと思います。失点した形も2列目からの飛び出しでしたしね…
広島と松本に関しては、この試合は終始マリノスが相手を押し込んだものでした。その影響で攻撃回数自体が少なかったからでしょう。広島は攻撃開始がサイドにいる柏ということもあったでしょうけど。圧倒し続けたからこそ少なく、特別対策をされたわけではないと思います。
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