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【2020 ACL グループリーグ 第1節】全北現代vs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

 我らは6年ぶりに帰ってきた!そう、アジアの舞台に!!ということで、ようやく始まりましたACL。リーグ優勝だったので本戦からのスタート。

 相手はKリーグ3連覇中である『韓国の王者』全北現代です。しかしこちらも『Jリーグ王者』。またしても王vs王という気高い戦いが繰り広げられることに!勝負の行方やいかに。では、いってみましょう。

2.スタメン

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■全北現代

・昨季から継続してる4-1-4-1のシステム

■横浜F・マリノス

・ゼロックスと同じく4-2-1-3の布陣
・エリキが打撲により出場できず。代わりに渓太が左サイドに入る
・外国籍の都合上、パギとエジガルはメンバー外
・梶川がマリノス公式戦デビューを飾る

3.全北の守り方

■全北の守備

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4-1-4-1のブロックを組む
・1トップがサイドへの追い込み役となる
・中盤の4枚で防波堤を築く。基本的にゾーン+マンツー
・アンカーはマルコス番
自陣に近づくにつれマンマークの意識が高くなる
・特に中盤はボールサイドへ寄せて横へ圧縮する
・そのため中盤の脇が空くことが多い

 全北は守備時に、元の布陣である4-1-4-1のブロックを敷いてきます。それぞれの役割を見ていきましょう。

イ ドングク「俺が相手をサイドに追い込む。お前たちはその方向へ動いて相手を囲ってくれ」
キム ボギョン「よし、こっちだな。みんなー、思いっきり寄せるぞ!」
イ スンギ「(逆サイド空くけど、そういうルールだしいいか)」
松原「ここスッといけそうじゃない?」

 サイドへの誘導役は最前線にいるイ ドングク。彼の寄せをきっかけに、中盤の4人もボールがある方向へスライド。横幅を狭くしてパスコースを限定します。敵陣では人を捕まえるというわけではなく、とにかく4人の壁を作っている感じ。背後を取られても気にする様子はありませんでした。

チョン ヒョク「俺は9番についていく...俺は9番についていく...」
マルコス「何かブツブツ言いながらついてくる!?怖っ!?」
ホン ジョンホ「後ろはそんなに狭めなくてもいいぞ。それよりとにかく相手を捕まえるんだ!」

 アンカーの選手はマルコスへマンマーク。どこまでも追いかけていきます。後方に控える4バックは中盤ほどではないが、ボール方向へスライド。後ろへ下がるほど人を捕まえる意識が強まるため、サイドバックがこちらのウイングを見る影響からかもしれません。

 これらのことによって近場のパスコースはほとんど塞がれた状態に。なるべく敵陣でボールを奪い、ショートカウンターを仕掛けることが狙いになります。

4.マリノスのビルドアップ

 前述しました通り、全北は中盤脇が空くことが多かったです。相手の包囲網をかいくぐり、逆方向へ展開できればそこを起点にボールを前進することができました。主な方法はパスを通すことか、ドリブルでの持ち上がりになります。

■中盤脇から繋ぐ

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 サイドから展開すると、全北はその方向へ人を集めて守ろうとします。この状態を作り出してから後方へ戻す。逆サイドでは松原と仲川をマンマークしているため、喜田がポッカリと空きます。扇原はここへパスを送る。

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 自分たちについてくることを利用してか、松原は中へ、仲川は外へ向かうことでオナイウへのパスコースを開門。喜田はすかさずそこへパス。オナイウは松原へ落としてワンツーで抜け出しました。

 このように、サイドに寄せる守備と人についていく意識の強さを利用し、中盤の脇からボールを進めることが何回かありました。

■中盤脇をドリブルで持ち上がる

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(※gifなのでしばらくすると画像が切り替わります)

 中盤の脇を使うのはパスをするだけではありません。同様にこちらの選手が相手を動かし、チアゴの前にスペースを作り出します。これを相手が前に出てくる限界まですることで敵陣深くまでボールを持ち運ぶことができます。

 前半8:37にも同じ方法でチアゴがドリブルで突き進んでいます。彼が上がれたのは前にいる選手たちが花道を作ってくれたからなんですね。

■中盤の後ろを取ろうとバランスを崩す

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(※gifなのでしばらくすると画像が切り替わります)

 ただ、ビルドアップが全て順風満帆にいったわけではありません。高い位置からくる相手の背後を突きたくて、選手たちが高く上がることがありました。そのまま繋げれば有利にボールを進められますが、奪われると一気にピンチとなります。

 この場面ではマルコスがチョン ヒョクと入れ代わろうとしていたところ、松原のパスが相手に引っかかりました。前後入れ替わることにより、ボールを奪われてからは数的不利の状態に。

 選手コメントより、「ゼロックスのときは消極的な入りだったので、この試合では攻撃的にいきたかった」というものがありました。その気持ちが出たプレーだったのでしょうね。とはいえ、攻守は表裏一体です。ボールを奪われたリスクも考えて立ち位置を取ったり、相手の背後を取るときも常にではなく、瞬間的な動き出しで実行できるようになることが望ましいと思います。

5.崩しの鍵は右サイドでの小さな駆け引き

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(※gifなのでしばらくすると画像が切り替わります)

 この試合で目立ったのは仲川のプルアウェイでした。ゆるゆると自陣に向けて下がり相手を引き付ける。十分引っ張ったら急に旋回して全力疾走。奥に出来上がったスペースへ飛び込みます。

 これは味方の動きを必要とせず、独力でスペースを生み出すことができます。対面するキム ジンスに対してスピードで勝っていたこともあり、この動きは効果的でした。また新しい引出しが昨季JリーグMVPに増えたようですね。

6.選手・監督コメント

Jリーグ公式の選手コメント
Jリーグ公式の監督コメント
横浜FM公式サイト
全北現代公式サイト

 ボスや選手のコメントより、前半から試合をうまくやれていたと実感を持っているようです。前半は無理なビルドアップからショートカウンターを受けることが多かったので、筆者の印象とは違いますね。

 また、梶川のミスに関しては誰も悪く言ってませんでした。もちろん、マリサポ含めてです。実戦でのミスは得難いもの。これを糧に成長してくれたらと思います。

 相手監督代行のコメントを確認すると、マリノスのハイライン裏を取りたかったが、起用していた選手がサイドアタッカーではなかったことでうまくいかなかったと感じているようです。つまり、狙いはサイドバックがいなくなったディフェンスラインの背後になります。たしかに奪ってから裏へ放り込む場面は多かったですよね。

 また、こちらのプレス強度についても言及しています。裏へ蹴りたかったが、プレッシャーが強くてうまくいかなかったようです。素早い切り替えからのハイプレスはアジアの舞台でも通じることが証明されましたね。独特なビルドアップを含め、我らのアタッキングフットボールは自信を持っていいと思います。

7.スタッツ

■チームスタッツ

 ACLの公式サイトは素晴らしく、様々なデータを選手ごとに可視化しています。ただいじるだけでも面白いですので、興味があれば見てみてください。

 こちらは、まちるださん@ysmf0m4c)が記事にされています。マリノス各選手のヒートマップを元に語られてるもので、データの見方の1つを提案しています。ぜひ、こちらも併せてご参考ください。

 また、パスソナー図などを作成してみました。こんなものもあるんだな程度にご覧ください。

8.おわりに

 退場者が出ても全力で走る全北の選手。ビルドアップを引っ掻けることもあり、失点もしてしまいました。ゆっくり回したい選手と、早く仕掛けたい選手がいるようにも見受けられたため、チーム内での意思統一も課題なのかなと感じました。

 シーズンが始まったばかりで、まだ昨季後半の鬼気迫るようなサッカーを見ることはできていませんが、これからだと思います。次はいよいよホーム横浜国際総合競技場ですよ!気合い入れて臨みましょう!!

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