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【2020 J1 第3節】横浜F・マリノスvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

1.はじめに

 前節、悔しい引き分けに終わった浦和戦。再開してから初試合ということもあり、どことなく動きが重い両チーム。思ったほどパススピードが上がらなかったり。なんならズレちゃったりもするあたり、ブランクを感じてしまいます...

 けど時間は待ってくれません。中3日でもう次の試合を迎えます。相手は湘南ベルマーレ。互いにリーグ戦で勝ち星がない中、早々と迎えた神奈川ダービー。この試合を振り返っていきましょう。

 妄想絵日記はこちら↓

2.スタメン

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■横浜F・マリノス

4-2-1-3の布陣
・前節から5人先発を変更
・怪我明けの松原が先発

■湘南ベルマーレ

3-5-2の布陣
・前節から5人先発を変更
・前節ベンチ外だった山田直輝が先発

3.湘南の守備とマリノスのビルドアップ

■積極性の裏側にある安全の担保

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・2トップと中盤の3人は前から激しく寄せてくる
・後方の5バックはリトリート。ほとんど前に出ない
・前で捕まえきれなかった場合は後ろから出て対応

 試合開始早々から激しいプレッシングを敢行した湘南。恐らくスイッチはCBへのバックパスや横パスでしょう。

 主に襲いかかるのは2トップと3センターの5人。後方の5バックはリトリートして安全確保に努めます。前からはめられず、抜かれたときの保険でしょう。

 じゃあその保険をなぜ越えられなかったのか。というのはozamendiさん(@ozamendi)の素晴らしい記事がありますので、こちらをお読みください。

 前の5人で捕まえきれなかった場合は、5バックから1人が前に出てヘルプ。残った4人がスライドして中央を締めます。特に浮いたマルコスに対し、石原広教が出ていくことが多かった印象。

 湘南の守備陣はハイラインもキープ。プレッシングがはまらない場合は撤退して5-3-2のブロックを形成。これものすごく走らなきゃいけないんですよ。走行距離を見ると、5バックは全員がほぼ11km越え、金子は12kmを越える走行距離を記録。いかにタフな試合だったかがわかりますね。

■突くべきは中盤の脇

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・中盤3人の脇からボールを前進
・抜けてもその先には5バックが待ち構えている

 ではマリノスはどうボールを前進したのか。主なルートは中盤3人の脇からでした。

 前からプレスにくる湘南は、ボールサイドに寄せて迫ります。しかしこの人数なので、横幅広くカバーできません。相手を食い付かせ、素早いパスで逆へ展開。こうすると中盤の脇が空きます。

 そこに入り込むことが多かったのは松原。的確なタイミングで顔を出し、前線とを繋ぐ役割を担っていました。怪我明けとは思えない素晴らしいプレーがたくさん見られましたよね。

 しかし、そこを抜けても待ち受けるのは湘南5バック。マリノスは多くても3トップとマルコスの4人です。数的不利に陥ってるため、そこから素早い前進が中々できない

 最初のプレッシングをかわし、敵陣まで運ぶことはできる。ただ、その先で詰まってしまう。そんな閉塞感を感じたのは、湘南が確保していた後方の安全が理由だったと思います。

4.フィニッシュへの打開策

 ただ、マリノスもずっと手をこまねいていたわけではありません。いくつかの打開策を披露します。

■素早いリスタート

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【POINT】
 相手WBが戻りきらないうちに素早くリスタート

 相手の攻撃を防いだ梶川。間髪入れずに松原へスローイング。喜田、マルコスと繋ぎ、仲川まで通す。するとその先は相手3バックのみ。アーリークロスを送り、エジガルが決定機を迎えました。

 湘南は攻撃時にWBが高い位置を取ります。相手の攻撃からこちらの攻撃への切り替わったとき。素早く前進することで、相手が戻りきる前に仕掛けることができます。これだと5バックになれないので、同数に近い状況が作れます。

 ほとんど同じ光景が9:41頃にも見られました。素早いリスタートからサイドへ展開。相手ディフェンダーの背後を突くアーリークロス。これは事前に準備してた湘南対策でしょう。事前に妄想してたことと、およそ同じ狙いだったと思います。

 この日のマリノスはスローインやコーナーキックでも再開が素早い。特に梶川はゴールキックも含め、リスタートが非常に早かったです。このように、流れを途切れさせないプレーは非常に大事。セーブ以外も目を離せませんね。

外を瞬く間に埋める高野

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【POINT】
 長い距離をスプリントし、一人で大外を埋めてしまう

 低い位置からマルコスにボールを預けた高野。エリキが中央に入ってるため、外側に誰もいない状態。そこを埋めようと、長い距離をスプリント。勢いを殺すことなくドリブルで前進。岡本を振り切ってファーサイドへ素早いクロスを送りました。

 このスピード、上下動の強度。これはティーラトンにない高野の武器でしょう。それは対人守備でも発揮されていましたね。比較的自由に動くエリキ。空けたスペースを素早く埋める高野。この2人の補完性は高いかもしれません。

また、28:54頃にも外側にいる高野からファーへのクロスが上がっていました。こちらも再現性があったため、大外からのクロスはファーへ。という湘南対策だったのかもしれません。

5.ファイヤーフォーメーションに隠れた狙い

 後半63分に3人を交代したマリノス。オナイウとエジガルを2トップとした4-2-4のような形になりました。これは前線の枚数を増やし、とにかく攻めようというファイヤーフォーメーションに見えます。しかし、ボスの狙いはそれ以外にもあったのではないでしょうか。

■アンカー脇を攻める選手の増加

マリノス2トップ3

【POINT】
 オナイウが下りることで天野と2人でアンカー脇を突く

 オナイウが下がりめの位置を取ることで、金子がそれに対応。相手を外側に追いやったので、中央にスペースが生まれます。そこに走り込んだのは天野。水沼からのパスは通らなかったものの、中央攻略の一手を垣間見れた場面でした。

■前線に人数を増やして相手5バックに蓋をする

マリノス2トップ1

【POINT】
 最前線に人がいることで、相手5バックが前に出づらくなる

 前述した通り、前半はディフェンスラインの選手たちが前に出て中央を埋めていました。しかし、この場面ではオナイウと仲川が位置することで、彼らに蓋をしています。そのため、下りたエジガルを捕まえる選手が不在に。中央にできたスペースで水沼からのパスを受けます。

■片方が下がっても必ず最前線に1人いる

マリノス2トップ2

【POINT】
 片方のFWが中央を離れても相方が必ず最前線中央にいる

 オナイウが下がって金子を中央から引っ張る。それでも相方のエジガルが最前線に張ってくれています。そのためスペースができますし、天野がボールを受けた時、中央でワンツーという選択肢も生まれます。トップ下と違い、前から下がるような動きなので捕まえにくい、という利点もあったでしょう。

■まとめ

①アンカー脇に侵入する選手を増やす
②最前線の人数を増やすことで相手に蓋をする
③CFが2人なので片方が最前線でプレッシャーをかけつつ、相方が自由に動ける

 恐らくボスの狙いはこれらのことを駆使し、相手ディフェンスラインの手前中央にスペースを作り出すことだったでしょう。相手中盤選手たちのスタミナが尽きつつあったことも、うまくいった要因だと思います。疲労からか、プレスバックが遅く、コンパクトネスも徐々に薄れていきました。

 実はガンバ大阪戦でエリキを中央に投入したことに似ています。あのときは中央にスペースができているが、使う選手がいなかった。そこでIHにエリキを入れることで、中央を活用するというアプローチをしていました。

 恐らく交代した3人は、あらかじめ60分に交代する予定の選手たち。そして本来は扇原ではなく、エジガルを下げる手筈だったのではないでしょうか。しかし、試合展開から2トップにする必要があり、急遽変更したように思います。天野が2点目を取ってすぐエジガルを下げてますしね。こういった臨機応変な対応ができるボス。末恐ろしや…

6.スタッツ

マッチレポート - J1レポート note用-1

■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 久しぶりのジェットコースターゲームでしたね。いやぁ、懐かしい…今季はガッツリ対策されますし、過密日程からオープン展開が早まります。恐らくこのような試合が増えるでしょう。我々も心臓を鍛えないといけないかもしれませんね。

 さて、次も中3日で試合です。今節は5人の変更がありました。次節も同じくらい先発が変わるかもしれません。それを想像するだけでも楽しいですよね。では、また近いうちにお会いしましょう。

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