【2020 ACL グループリーグ】全北現代ってどんなチーム?

1.チームの特徴

■ベースシステム

ベースシステム

・4-1-4-1の布陣
・インサイドハーフには逆足の選手を置く
・KリーグMVPでチームの大黒柱であるソン・ジュンホが韓国代表に召集され不在
・インサイドハーフのレギュラー格である邦本を怪我で欠く

 全北現代の基本となるフォーメーションは4-1-4-1です。攻撃のときも守備のときもこの布陣を維持して戦います。特徴的なのは、インサイドハーフに逆足の選手を置くこと。その理由は後述します。

 今季のリーグMVPを取ったソン・ジュンホの不在は大きいでしょう。対人お化けのアンカーは、優れたプレースキッカーでもあります。攻守において多大な影響を及ぼすはず。邦本の不在も強く影響。本来ならサイドアタッカーの控えであるムリロを、インサイドハーフで起用するほどの困窮っぷり。チームの要である中盤の選手に多くの主力を欠いてACLに臨みます。

■主な戦い方

サイド攻撃

・攻撃のほとんどがクロスによるもの
・サイドの三角形で相手を崩してクロスを上げる
・中盤の選手も多くが積極的に中へ入る

 全北の攻撃はほとんどがクロスです。中央から割ることは少なく、サイドから人数をかけたものがほとんど。具体的には、サイドハーフ、インサイドハーフ、サイドバックの3人で三角形を組んで崩します。クロスを上げることが全北の第一目標です。

 クロスに合わせるのは、上げる人以外の全選手。インサイドハーフはもちろん、逆サイドのサイドハーフも必ずファー詰めをします。そのため、インサイドハーフに逆足の選手を置いてたんですね。なるべくクロスターゲットを多くすることで、得点に繋がる確率を上げます。この傾向は上海上港との試合でもよく表れていました。

 守備に関してはオーソドックスなものです。4-1-4-1ブロックを組んで、ミドルサード付近から守備を開始。人への食いつきは割と強い方です。また、中盤と最終ラインで段差ができるのも特徴。間を繋ぐアンカーが強い対人能力を持っていたので、そこに頼っている一面もあると思います。

2.リーグ戦の全得点から見られる特徴

■得点パターン

得点方法

・クロスからの得点が極端に多い
・次点はミドルシュート

 全得点の約45%がクロスによるものと、多くの割合を占めています。ここからもサイド攻撃主体なことが伺えます。これについては後ほど詳しく見ていきましょう。

 次点で多いのはミドルシュート。主なシューターは中盤の選手たち。13番のキム・ボギョン、7番のハン・ギョウォン、14番のイ・スンギになります。彼らの飛び道具にも注意が必要でしょう。

■得点者とアシスト者

得点とアシスト

・チーム最多得点者は中盤スーパーサブのハン・ギョウォン
・その他にも中盤の選手が多く得点を取っている
・アシスト最多は不在のソン・ジュンホ。セットプレーからのものも多い
・ハン・ギョウォンやバロウなど、サイドの選手も多い

 チーム内得点王は中盤スーパーサブのハン・ギョウォン。彼はファー詰めが非常にうまく、クロスに合わせて得点を量産していました。他にはキム・ボキョンやイ・スンギなど、中盤の選手が得点を重ねています。ストライカーであるグスタボより目立っているのは、クロスに合わせる人数の多さからでしょう。誰でも点が取れるチームと言えます。

 アシストについては、不在であるソン・ジュンホが最多。前述しましたが、彼はセットプレーのキッカーも任されています。その分攻撃力に打撃を受けている状況だと言えるでしょう。

 また、サイドの選手であるハン・ギョウォンやバロウなどもアシストを重ねています。後述しますが、彼らから良質なクロスが供給されていることが伺えるでしょう。

■クロス関連

クロス関連_得点

(※クロスを上げた位置以外はセットプレーを含んでいます)

・早めに上げるか、サイド深くエグってからのクロスが多い
・合わせる箇所は多彩
 ⇒ 中で合わせる選手が多くいることを証明している
・割合としては浮き球が多いが、合わせる箇所は平均的

クロスを上げた人

・夏に移籍した左サイドバックのキム・ジンスが最多
・同数でバロウが最多の数を記録
・次点の邦本は怪我で不在

 クロスに関しては、浅い位置から上げるか、深くえぐったものが多かったです。サイドハーフがボールを受けて早めに上げる。サイドバックに下げて浅めの位置から上げる。サイドを崩して深い位置から上げる。これらのパターンが想定されます。

 合わせる位置は実に多彩。これは中に入る人数が多いことを証明しているでしょう。人数が多ければ、決められる箇所も増えますよね。

 クロスを上げた人を見ていくと、最多は左サイドバックのキム・ジンスと、左サイドハーフのバロウでした。前者は夏にアル・ナスルへ移籍しています。なので、要注意人物はバロウになるでしょう。彼はスピードがあり、ドリブル突破能力が高いです。内外どちらで仕事できることも特徴。プレーの幅が広がったマテウスと言えば、その脅威が伝わりやすいと思います。

3.リーグ戦の全失点から見られる特徴

■失点パターン

失点方法

・クロスが最多
・次点はロングカウンターとミドルシュート

 クロスが最多はどのチームにも言えることなので省きます。特徴的なのは、ロングカウンターとミドルシュートが多いことでしょう。

サイド攻撃の脆弱性

・両サイドバックは攻撃時高い位置を取る
・中盤はクロスに合わせるため、相手ゴール前に殺到する
・攻守が切り替わった瞬間、高い位置にいるセンターバックが晒されやすい

 前述した攻撃の特性上、攻守の切り替わりに脆弱性を抱えています。攻撃時に高く上がるサイドバック。クロスに合わせるため、中盤も相手ゴール前まで詰めます。そんな状況でボールロストするとどうなるでしょう。はい、アンカーとセンターバックが晒されます。

 帰陣が間に合わないうちに縦へ展開されると、高いラインの背後を突かれやすくなります。ここにスピードのあるフォワードをあてると、駆けっこで優位に立てるでしょう。これは攻撃方法の仕組み上、トレードオフしている部分になります。こういう意味でも、ソン・ジュンホの不在は大きく響くはず…

バイタル空く

【POINT】
深くえぐられるとアンカーがディフェンスラインに吸収される

 4-1-4-1で守る都合上、アンカーが最終ラインのカバーをする頻度が高くなります。サイド深くえぐられたとき、サイドバックが出ていった間を埋めることもその1つです。そうすると、中盤のとの間が大きく空くことに。このバイタルエリアを活用され、ミドルシュートの失点が多くなったと考えられます。

■クロス関連

クロス関連_失点

(※クロスを上げた位置以外はセットプレーを含んでいます)

・浅い位置からではなく、サイドをえぐられた位置からのクロスが多い
・中央やファーで合わせられるものが多い
・浮き球で頭に合わせるものが多い

 ある程度サイドに入り込んだ位置からクロスを上げられると弱いようです。合わせる場所もニア以外が効果的。これは前述したアンカーが最終ラインに吸収されることが理由でしょう。マイナスの位置が空きますよね。

 浮き球で頭に合わせられると失点しやすいようです。このことから、遠くのクロスに対してボールウォッチャーになりがちなことがわかります。

4.リーグ戦の得失点の時間別割合

 得点と失点を90分の中で15分ごとに6分割したもので見ていきます。

得失点時間

・後半深い時間に得点することが多い
・前後半の開始あたりか終了あたりに失点が多い

 得点に関しては、後半深い時間に多いことがわかります。強力なブロックを構えて守り、粘り強く戦えてるのでしょう。選手個々のスタミナがあることも伺えます。

 失点に関しては試合の開始直後と終了直前が多いようです。試合にスムーズに入れなかったり、集中力が最後までもたないということだと思います。このタイミングは攻勢を強めるポイントになるでしょう。

5.リーグ公式動画チャンネル

 Kリーグ公式のYoutubeチャンネルになります。ハイライトなどありますので、気になるチームの確認にどうぞ。

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