【2020 J1 第34節】横浜FCvs横浜F・マリノス マッチレビュー
1.はじめに
ACLが終わり、帰国してのシーズンラストマッチ。今季の集大成と、来季への展望が見られると期待した試合。奇しくも最後は横浜ダービーというのも、どことなく運命的なものを感じます。異例のシーズンだった一年もこれで最後。さあ、振り返っていきましょう。
2.スタメン
■横浜FC
・4-4-2の布陣
・現状のベストメンバーにて臨む
■横浜F・マリノス
・4-2-1-3の布陣
・仲川は怪我で右サイドには水沼が入る
・外国籍選手たちは既に帰国済み
3.遅さが生んだ広がり
「あれ?なんか選手同士の距離が遠いな。いつもならもっと密集するのに…」こんな違和感を持った前半。遠いということは、それだけ動いてないということ。スタミナがないのではなく、"いつもの"スピード感を取り戻せていなかったからです。
自陣から素早く展開したこのシーンは典型的でしょう。自分たちの上がりが遅いので、ボールを持つ水沼からのパスコースは全て遠い。辺りを見渡し、前進を諦め渋々天野へパス。しかしこれは戻った志知にカットされてしまいました。自分たちの上がりが遅いだけでなく、相手の戻りが早かったため、試合のイニシアチブを握られてしまうことに。
このシーンもそれを表していたでしょう。梶川から素晴らしいフィードが天野に渡るものの、こぼれ球を相手に拾われてしまいました。なぜそうなったかと言うと、天野の周りにマリノスの選手がおらず、FCの選手が多かったから。これは切り替えの早さからくるものでした。
自分たちの動き、パススピード、切り替え速度。全てのスピードがFCより遅いことで自分たちが間延びする。間延びした陣形はスペースを多く生みます。前回対戦したガンバは密なブロックを敷いていたので、それに比べたらさぞやりやすかったでしょう。これが前半最初の方、試合を支配されてた要因ではないでしょうか。
4.なぜ左サイドばかり狙われたのか
1つ目の要因は解説である岩政さんが仰っていた通り、マリノスの攻撃が左サイドに偏っていたからでしょう。当然高野も高い位置に上がるため、ボールを奪うとカウンターの入口にしやすいです。これはリスクリターンのお話ですね。
もう1つの要因は、マリノス守備のやり方にあると思います。
・扇原は前に出て守備をする傾向が強い
⇒ 喜田と縦関係になる
・FCのサイドハーフは内側に絞ってボールを受ける
⇒ マリノスボランチの位置に入る傾向がある
ハイプレスを仕掛けるとき、扇原が前に出て喜田が残りますよね。そうなると、扇原の背後にスペースが生まれます。FCのサイドハーフは内に絞るので、ちょうど空いたスペースを使うことができます。ここにマギーニョも上がってくるため、高野は1対2のような状況になることも。反対の右サイドには喜田が残っているので、同じ状態になりにくかったです。
1失点目も高い位置取りが仇になっていました。扇原が高い位置にいるので、喜田がディフェンスラインのカバーをしづらい状況。槙人と高野が順々にズレますが、こうなると中の人数が心もとないことに…クロスが上がったとき、ファーががら空きになるのは人数不足が招いた結果でしょう。
これだけ前に人数をかけているのなら、もっと激しくプレスをかけないとリスクに見合いません。このとき田代に悠々とボールを蹴らせていますしね。それか前に出れないのなら、重心を下げて構えることに切り替えてもよかったように思います。そういった判断ができなかったことも、寄せるスピードが遅かったことも、しばらく試合をしてなかった影響なのでしょう。期間が開くと難しい面もあるんですね。
5.攻めてるのに点が取れない
この試合で多くのシュートを浴びせましたが、取れたのは1点だけ…その要因は、サイド深くを攻めることができなかったからではないでしょうか。
このシーンでは大然が外でなく中にいるため、サイドを崩す人数が不足しています。高野と天野だけではサイド深くまで攻められず、クロスを上げるしか選択肢がありません。この位置のクロスだと相手守備陣は前を向いて対応できます。跳ね返すのは容易ですよね。
このようにサイド深くを攻められなかったのは今季何度もありました。多くのクロスを上げたホーム神戸戦もそうでしたよね。年間通して苦戦したことを象徴したような最終戦になってしまいました…
ちょっと足りないですが、このくらいの深さでも効果は覿面でした。相手に後ろ向き対応を強いることができますし、マイナスを空けることもできます。ただ漫然とサイドからクロスを上げるのではなく、深くまでえぐることをもっと追及したかったです。(ウイング不在のシーズンだったことが大きく影響していたように思いますが、それはまた別の記事で…)
6.スタッツ
■sofascore
■SPAIA
■トラッキングデータ
7.おわりに
まずは今シーズン無事終えることができたことに対しまして、クラブに関わった全ての方へ、深くお礼を申し上げます。マリノスの試合を見て喜怒哀楽するという『当たり前のこと』ができたのも、ひとえに皆様のおかげです。本当にありがとうございました。そして、お疲れさまでございました。
最後の試合が敗戦という悔しい結果になってしまいましたが、これは今季のマリノスを象徴する試合だったと思います。悔しい、ただひたすらに悔しい。特殊なシーズンでしたが、それをうまく味方につけることができませんでした。それも確固たるスタイルがあるからです。こういう結果になっても自分たちのサッカーは揺らぎません。来季も自分たちらしく、ただひたすらに勝利を追い求めていきましょう!
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