サムネ

【2019 J1リーグ】横浜F・マリノス ~マルコスシステム①~

1.ベースフォーメーション

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 第12節から第20節まで使用した、マルコスを主軸としたフォーメーションになります。彼の動きで攻撃の全てが決まるため、これを『マルコスシステム』と呼称することに。

 マルコスが自由に動く中、サイドバック、ボランチ、エジガルがバランスを取って動く。中央から崩すこともできますし、ワイドに張ったウイングからサイドを攻略することもできました。

 ただ、マルコスへの負担が激しく、どの試合でも前半で走行距離が6kmを越えるほど。彼の創造性を存分に活かした形は諸刃の剣でした。

 手痛い敗戦を受けた11節のセレッソ戦以降に開発されたこのシステムは勝利を量産しました。

2.出場選手

マルコス1出場時間

・黄色:先発フル出場
・オレンジ:先発から途中交代
・赤:途中出場
・数字:出場時間

(データ元:Football LAB

 全試合フル出場を果たしたのはパギ、ティーラトン、畠中、喜田、渓太の5人。チアゴ、マルコス、仲川、エジガルもほとんど先発と、実に9人が固定されていたようです。ティーラトンはここから定着していったんですね。

 右サイドバックは和田が長らく務めていましたが、17節FC東京戦でフィジカル面の問題が露呈。以降は広瀬が務めるようになります。

 もう1つ固定されなかったのはボランチの一角。こちらは扇原が頭角を現していましたが14節湘南戦で負傷。その後は天野が務めました。左ボランチは主にこの2選手だったでしょう。

 三好はスーパーサブとして主に起用。マルコスとの交代でトップ下に入ることが多かったです。

 ほぼメンバーを固定したことによって、シーズン途中に開発したシステムにも関わらず得点を量産。急遽考案したボスのすごさが伺えますね。

3.得点とアシスト

マルコス1得点_1

マルコス1得点_2

・各数値は90分あたりのものに補正してあります。
・途中出場が多く、数値が跳ねている選手は最高値比較から除外します。
・枠内率 = 枠内シュート数 / シュート数 *100 (%)
・決定率 = 得点数 / シュート数 * 100 (%)
※李、大津、三好は途中出場が多いので数値が跳ねています。

(データ元:SPAIA

 このシステムで得点を最も量産したのはエジガル。8得点を挙げた彼はシュート数、決定率、枠内率も一番高い数値を記録。たくさんのシュートを撃ち、多くを枠内におさめ、そして決める。まさにストライカーらしい仕事をした証なのでしょう。このシステムはエジガルにとってやりやすいものだったのかもしれません。

 アシストを多く記録したのは左ウイングに定着した渓太。平均クロス数も最多を誇っており、サイドから多くのチャンスを作り出したことが伺えます。仲川も2アシストを記録。エジガルが中央を務めるこのフォーメーションはサイド突破がしやすかったのかもしれませんね。

 得点に関与した選手の中で平均パス数が最も多いのが扇原。彼がこの布陣における潤滑油だったようです。左サイドから組み立てることは多かったですよね。

4.ゲームモデル

 このシステムのゲームモデルを、サッカーにおける4局面ごとに見ていきます。

サッカーの4局面_マルコス1

■攻撃時

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・SB-CH-OMFの三角形がローテーションして後方でのボール保持を安定
・WGは大外で固定気味になる
・CFが下りてレイオフからの中央突破もある
・その際はWGが中へ、大外はSBが駆け上がる

 攻撃時はSB、CH、OMFの3人がローテーションして三角形の形を変えていきます。選手たちが絶えず移動することで、相手のマークを攪乱。ポジションに囚われない動きビルドアップを安定化させます。

 このローテーションの動き方は、まずマルコスが自由に位置を取る。その後サイドバックやボランチがバランスを保つ位置へ移動するという手順で行われます。詳しくは第12節のレビューをご覧ください。

 このローテーションにウイングは参加せず、基本的には大外高い位置をキープして幅を取ります。後方でボールを回して相手の隙を伺い、ウイングが相手ディフェンダーと1対1になる状況を作り出す。それを見つけたらボールをつけてサイドから一気に崩します。

 また、サイドだけでなく、中央からの崩しも見られました。これはエジガル限定ですが、彼が下がってきてボールを受ける。それを中盤の選手へ落とす。空いた中央にウイングが絞って入るのでそこ目がけてパス。大外はサイドバックが上がることによって活用します。

■ネガティブトランジション

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・ボールホルダーを中心に近くの選手たちが寄せる
・ボランチとディフェンスラインの選手は元のポジションへ戻ること優先

 前線の選手たちは、ボールホルダーを中心にどんどん相手に寄せて即時奪回を狙います。この勢いは昨季より少し増した気がします。

 この寄せで時間を作っている間、ボランチとディフェンスラインの選手たちは元のポジションへ戻ります。即時奪回を狙いつつ、後方ではブロック守備の準備を整えています。

■守備時

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・両WGを下げた4-5-1のブロック守備
・エジガルがコースを消しながら寄せることがプレス開始のスイッチ
・前に出て相手を捕まえる。追い込み方向はサイド
・ボールサイドへスライドして横幅をコンパクトに
・逆サイドは捨てて、ボールが入ったらスライドして対応

 両ウイングを下げた4-5-1のブロック守備を行います。プレス開始のスイッチはエジガルの寄せ。彼は位置取りがうまく、相手のパスコースを消しながら近づいていきます。これに連動して後方の選手たちが近くの相手を捕まえ、パスコースを削っていく。相手をサイドへ追い込むことが目的です。

 ブロック自体は横へコンパクトな陣形を維持しつつ、ボール方向へスライド。ハイラインを敷いていることもあり、縦横に圧縮して相手へ迫っていきます。この守り方の都合上、逆サイドの選手は基本的に捨てている状態。ボールが入ったらスライドして対応しています。

■ポジティブトランジション

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・3トップは前線へ上がり、横一杯に広がって幅を取るようにする
・第一優先は最前線へのパス
・前に出せないのなら後ろで回して時間を作る

 3トップは前線へ上がり、横に目一杯広がって幅を取ります。これによって相手ディフェンスラインの間隔を空け、そこを素早く突きます。

 ボールを奪った後の第一優先は最前線へのパス。カウンターで3トップに刺せるのならそこへパスを出します。それが無理なら後方でボールを回して場を整える。主にU字に回して時間を作り出します。

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