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【2020 J1 第24節】横浜F・マリノスvs清水エスパルス マッチレビュー

1.はじめに

 ACL調整による前倒し試合。清水とも約1ヶ月で再戦となります。互いに連敗を重ねてるということもあり、勝利が欲しいこの試合。

 いやぁ、マリノス以外にも布陣が読めないチームがあるとは...メンバーを見たときは4バックだと思ってましたが、まさかのミラーゲームに。その結果はどう出たでしょうか。振り返ってみます。

2.スタメン

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■横浜F・マリノス

3-4-2-1の布陣
・松原がセンターバックで先発
・連戦だったマルコスとサントスはお休み

■清水エスパルス

3-4-2-1の布陣
・鈴木唯人をウイングバックで起用
・3トップは総入れ換え

3.まさかのミラーゲーム

■清水の狙いを考えてみる

清水の狙い

・5バックにして、マリノスの変則的な動きに対抗
・中央封鎖することで、外回しを強要する
・ウイングバックを入口とし、中央のエリアを取りたい
・そこからピッチを広く使った攻撃を仕掛けたい

 マリノスが3バックだろうが、4バックだろうが、後ろの5レーンを封鎖すれば対応しやすくなります。ウイング起用のときでも内に絞りますし、シャドー起用でも外に流れますからね。捕まえる相手をはっきりさせるためにも、5枚で守るようにしたのだと思います。

 攻撃面では、ウイングバックをサイドの入口にしたかったのでしょう。相手の中間に入り、パスを引き出す。そこから中央のボランチやシャドーに展開。この日起用された選手は、中村、後藤、河井、竹内です。いずれもスペースの見つけることに長け、狭いエリアでもプレーできる選手たちです。

 彼らにボールをおさめ、中央を制圧。中継点をたくさん置き、ピッチを広く使った攻撃をしたかったのだと思います。できればハイラインの裏を突きたい。サイドを入口とするのなら、縦へ推進力がある鈴木のウイングバック起用は納得がいきます。

 これを踏まえ、ピーターの試合後コメントを見てみましょう。

 自分たちが使えるスペースがあることは分かっていたので、そこをうまく使いたいと考えていました。ピッチの上で主導権を握りたい場所があったので、そのエリアで数的優位を作れるような形をとりたいと考えていました。

 このスペースとは、マリノス3トップの背後だったのではないでしょうか。ハイプレスを実施すると空きやすいですからね。ウイングバックを経由し、そこへ侵入したかったのだと思います。

 そして、主導権を握りたい場所は中央のスペース。ここに数的優位を作るため、後方でも仕事のできる後藤と中村をシャドーにチョイス。というのが、自分の妄想になります。真実は当人のみぞ知る…

■まさかのミラーゲーム

 前述した理由により、3バックで試合に臨んだ清水。恐らくボスも似たようなことを考えたのかも。3バック+Wボランチの5枚で、相手3トップのプレスに対抗。ウイングバックがファジーな位置を取ることで、サイドを入口に前進する。

 そんな思惑が交差した結果、まさかの3バックでミラーゲームになりました。誰がこの結果を予測しただろうか...ミラーになるとどうなるか。それを見ていきます。

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・大きく動かずとも、相手を捕まえられる
・ボールを前進させるには、相手を動かす必要がある
・各所で1対1が発生しやすい

 ミラーゲームだと、各所のマッチアップがはっきりします。相手を探す複雑性が低いので、マークにつきやすい。自分たちがボールを前進させるには、相手を動かしてスペースを作る必要があります。

 ボスになってから3年目のマリノスは、そういったことに慣れています。しかし、今季から始動している清水は、そこに課題を抱えている状態。この差が少しずつきき、マリノスの方がボールを保持して試合は進みます。

 また、マッチアップ相手がわかりやすいということは、各所で1対1が発生しやすいとも言えます。ここで相手を剥がせたら、有利な状況になりますよね。

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 1点目がまさにその典型。高野が鈴木をかわしたことで、サイド深い位置まで侵入。。相手のマイナスを取ったエリキが、難しいシュートを決めて先制しました。

 互いに本職でないポジションを務める選手がいましたよね。マリノスで言えば水沼、清水で言えば鈴木が目立つでしょう。本来攻撃的な選手が守備に晒される回数は、なるべくなら減らしたいはず。しかし前述した通り、マリノスがボールを握っているので、清水はそれを避けられない。そんなデメリットが出た1対1だったでしょう。

 マリノスは押し込んでいるため、水沼のところはそんなに使われませんでした。また、高卒ルーキーと、ロティーナ卒ベテランの差も多分にあると思います。こういった小さい差が出やすいのも、ミラーゲームの特徴と言えますよね。

4.退場が及ぼした最終ラインへの影響

 この試合、立田が仲川を倒して退場してしまいました。そこで清水が変えたのは、ディフェンスラインの人数。5バックから4バックになりました。これが与える影響は、守る横幅の違いですよね。そこに着目して見ていきましょう。

■届かないことの連鎖

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・相手ウイングバックまでの距離が遠く、寄せるまで時間がかかる
・最初からウイングバックに寄せると、センターバックとの距離が開いてしまう

 2点目に繋がったクロスがそうだったのですが、4バックになることで、サイドバックと相手ウイングバックの距離が広がります。当然アプローチも遅くなりますよね。水沼にこれだけの時間と空間を与えると、あれだけエグいクロスが入るようです。

 その光景が頭に残ったのか、それ以降は水沼に対してあらかじめ距離を詰めるようにします。しかし、今度はセンターバックとの距離が遠くなります。マリノスの選手はここを突いてサイド深くをえぐるの大好きですよね。3点目のときも、オナイウがここを抜け出したことでアシストしています。

 相手が4バックになった影響を、マリノスはここを有効活用できていました。前半優位に立てたのはそこが大きかったのでしょう。清水は準備してきた守り方が、退場によりできなくなった形でした。

■改善した後半

清水後半の改善

【POINT】
中盤を3枚並べることで、サイドバックを前に出さなくてよくなる

 しかし、いつまでも弱点を放置する清水ではありません。六平を投入し、中盤を3枚に増やします。前半は中村の激しい上下動で誤魔化していましたが、ハーフタイムではっきりさせたようです。

 これにより、サイドバックが前に出る頻度が激減。マリノスが突きたいハーフスペース奥が、固く閉ざされてしまいます。これが浅い位置からクロスをあげざるをえなかった理由でしょう。

 前半にここが空くことがわかったので、ボスは天純を投入したのだと思います。(大津や大然という選択肢もありましたよね)しかし、このように閉ざされては、彼の入る隙間がありません。輝く姿が中々見れなかったのは、こういう理由からだと感じました。

5.活かせない人数差と無駄な数的優位

 この試合、センターバックの振る舞いに疑問を持ちました。それが原因で、1人退場した人数差を活かせなかったのだと思います。それを見ていきましょう。

■動かないセンターバック

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・ウイングバックとの距離が遠くてもパスをつけてしまう
・選手間が広いので、奪われるとピンチになる

 大外で孤立しているウイングバックめがけ、長めのパスを入れていることがありました。近くにサポートがいない状態で奪われると、相手にスペースを渡すことに。できるのなら、自分の前にあるスペースを消してから出せるといいですよね。

 こういったことは、正確なキックを持つ松原に多く見られました。自慢の武器も、使い方次第ではリスクを背負うのです。まさに諸刃の刃。ちなみに、チアゴは持ち上がることが多かったです。これは最後方で長い時間プレーしている年期の差でしょう。

■後方に過剰な人数をかけた結果…

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【POINT】
後方狭いエリアに多くの人数をかけてビルドアップを行う

 相手は1人少ない10人のはず。なのに、それをあまり感じない。それは、ビルドアップに人を割きすぎたことと、立ち位置に問題があるからではないでしょうか。

 ティーラシン1人に対し、マリノスは4人が密集する。なるほど、そこは数的優位ですが、そこから先は数的不利になります。相手が1人退場してるのに、数的不利な箇所ができるんですよ。これっておかしいですよね?

 今季のビルドアップは、後ろに多くの人数が割かれている光景をよく見ます。この日もそれに該当していました。後ろに過剰ということは、前は寡少な状態になります。1人の退場を活かしきれなかったのは、ここに理由があるはず。前節のセレッソを見ると、その差がわかると思います。

■改善案

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・センターバックは外に開いて相手の脇を取る
・スペースがあるのなら持ち上がって相手を釣る

 まず、センターバックが外に開くことを徹底しましょう。今季はゴールキックやキーパーからのパスでも、この動きをサボりがちです。この動きはセレッソがうまいので、いいお手本になると思います。

 また、スペースが前にあるのなら持ち上がりましょう。そこで相手を1人引っ張ってこれれば、敵の守備人数を割くことができます。こうすると前線は楽ですよね。神戸の選手たちはこれを徹底しています。彼らの模倣から始めてもいいのではないでしょうか。

6.スタッツ

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■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 まさかのミラーマッチは、マリノスが優位に立つことができました。相手を動かすことに関しては、一日の長があると証明できたはず。早い時間に先制し、追加点も取れたことが試合を楽にしました。

 しかし、数的優位をあまり活かせず、後半は攻撃が停滞。清水の対応を上回ることができませんでした。後ろで貯金が全くできず、敵を動かせなかったからでしょう。

 松原が大外をオーバーラップしたときを思い出してみてください。あのときはサイド深い位置まで行けましたし、相手の不意も突けました。清水は1人少ないんですよ。こういうプレーもリスクに繋がりにくいので、どんどんチャレンジしてほしかったです。

 それでもリードしてるチームの振る舞いをして、無失点で試合を終えられたのはよかったと思います。不満も多いですが、最後まで試合をコントロールできたことは評価すべきだと思います。

 また、今季後回しにしてた課題が一気に押し寄せた試合だったとも感じています。ここを1つずつクリアしていき、今季のマリノスが織り成すサッカーのレベルを上げていきましょう。

 チームの最適解なんて、この特殊な状況と日程では毎回違うものになります。ボスはそんな中、毎試合探っているのですよ。何がいいかな?こうかな?といった具合に。今はその形が、たまたま3バックなだけ。布陣は関係ないのです。マリノスのやるべきことを、しっかりとやる。そんな姿を次節は期待しています!

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