現代版ソクラテスの対話 第2回(&解説第5~9回)

大前研一学長×ソレイシィ先生セッション(その1):
シミュレーションを定めたうえで即興で話す。
①Introduction and Social ice-melting:
・相手に興味を持って、自分の興味に従って「スティーブ」という個人を理解したいと思って、具体的に質問をすることが重要。相手が何を趣味にしていて、何に興味があって、何が好きかを理解しておくことが仕事を遂行する上でも生きてくる。単に相手の情報を収集するのが目的ではない。
・自分との類似点(このケースでは奥さんが外国人)を共有するのは良いアプローチ(話を展開するきっかけとして)。
・田中氏の後任として来たという設定。田中氏のオペレーション下では上手く行かなかったから現状がある。その認識のもと、田中氏はスティーブとどういう接し方、会社運営をしていたのかを聞いている。状況を最も理解しているのはスティーブ。相手が最も状況をよく知る専門家。問題・課題があったら変えようという姿勢(Open mind)で対話している。
・相手の気にしている事項(職を失う可能性)について言及していたのは良いアプローチ。相手にとってのChoke Pointを理解、押さえることで信頼関係構築のきっかけに。
解説(重要ポイント):
About Social ice-melting
◆経営の観点から
1.相手「個人」について興味を持つこと:タフな状況になった時への備え。どこで生まれ、そこで育ち、なぜ日本に来たか、最近のイベント(このケースは結婚)、趣味をいつからどのくらいの頻度でそれをしているのか など
2.まず「聞く」:相手「個人」に興味を持って質問をする。興味を持たれるのは嬉しいこと。自分相手に聞いたら同じ質問を聞かれるつもりで聞く。自分が答えやすい質問をする。Collecting dataではなく、Following one's interest。
3.Iceは解けたとしても「距離感」は必要。欧米では自立が原則。どれだけ仲良くなったとしても他者に依存するような接し方はしない。
◆英語や英語圏文化の観点から
1.許容される/されない話題の線引き:結婚、子供、政治、宗教などの話はしない。思想や信条に関係する話はまずはしないのが無難。
2.What brought you to Japan?(無生物主語を用いた質問)という表現はよく使われて有用。Why did you come to Japan?は自分の意思で来たことが前提の質問であり強い表現。無生物主語を使うことで婉曲な表現が可能になる。
3.相槌の打ち方:日本人は相槌を打ちすぎる。現状の1/3に減らすぐらいのイメージで。"very interesting"などは相手の話を肯定的に聞いているということを表現できて有用な相槌。
4.話の切り替え方:"OK, ..."(ということで…)、"So, ..."(それでは...)の様な表現が自然。by the wayは横道に逸れるイメージになるが、本題はビジネスなのでこの会話の流れでの使用はやや不自然。
5.ジョークは必要?:不要。無理にユーモアのある人間であると思わせる必要はない。
About Business ice-melting
◆経営の観点から
1.本題(業績改善)に入る前の土台作り:まずは安心させることが重要。このケースでは、まずは前任者(田中さん)との仕事の進め方、関係性を尋ね、ソレイシィー先生がそれを良いと思っていないことを察知したうえで前任者との違いを強調。自分が意見を述べるのではなく、ソレイシィー先生の意見を聞いた(引き出した)うえで、それに反応する形で客観性を保っている。日本から来たスパイではなく、イコールパートナーであることを強調。相手をエンカレッジする表現を多用。
<英語表現>
- You can take initiatives.
- You can be proactive rather than reactive, then I would like to be very responsive.
- Always talk to me, feel free to..., I would like you to think you can do... etc.
- You and I form a home office.
2.権限でねじ伏せようという姿勢は禁物:自分も不安だが、相手はもっと不安。どんな人物か相手は値踏みをしている。これをすると相手はディフェンシブになる。Directing and tellingではなく、Empowering and motivating。
◆英語や英語圏文化の観点から
1.「基本表現」でのコミュニケーション:英語表現にはTalk about business(フォーマル表現)/Do business(現場表現)の2種類が存在。現場表現が全体の8割。現場で活躍するには、現場表現(基本単語、基本表現)によるコミュニケーションが重要。
2.How's that?:敢えて聞かなくても意見があったら言うのが欧米スタイル。その状況で敢えて質問することで、聞く耳を持っている、聞く用意があることを示している。一種の演出。相手がConfortableかどうかをチェックしているイメージ。
3.Discourse marker:これから話す内容のタグ付けの役割を担う。会話を円滑に進める上でDiscourse markerの活用は有用。
・The other thing was ... : もうひとつは... 
・Incidentally ... : 偶然にも
・Technically ... : 技術的には
・Generally speaking, : 一般的には 
・Basically ... : 基本的には

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