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泣いたことがないのなら、瞳は美しくなれない。2

 昨日、声をかけたあの男の人は、キーホルダーを持って帰ってくれただろうか? 今朝登校するときには、昨日置いたあのキーホルダー確かになかった、昨日は坂の下から随分長く彼の様子を伺っていたけど、麻美がいる間にあの男が、キーホルダーを取りに来る様子はなかった、誰かほかの人が持っていたのもしれないし、同じ学園の小学部の子供たちが持っているかもしれない、この暑い盛りにあの坂道を登っていく人はすくないし、ましてや病院に用のある人はもっと少ない、けど手に提げていた見舞いの品らしいもの、この暑い盛りに坂の下まで来るバスに乗らず地下鉄駅からきた様子、自分の眼には狂いはなかったはずだ。そう彼女は確信していた。

 確かにあの男の人は病院に用のあった人だ。「ほら、もう帰るよっ・・・」ユミの声に促されて我に返る、席を立ってユミを追いかける。正門まで来るとユミに追いついた。立ち止まるユミを追い越すと、さっつと坂道を眺める、歩道を女子生徒たちが波の様に坂道を下りていく、麻美はその波をかき分けるようにして、昨日キーホルダーを置いた場所へ再びそれをおく。やわらかい土の上草木に隠れるように転がった、、振り返るとユミが立っている、「あんたはホント、真面目だね・・・」再びあきれ顔で、麻美を見つめてる。「じゃあね、また明日ね」麻美はそういうと、再び校門まで戻る、あれを拾ってくれそうな「獲物」を物色するためだ、坂を下る女子生徒たちの波は途切れることなく続き、登ってくる人はそれの陰に隠れて見えない、ひょっとしたら今日はそんな人は一人もいないかもしれない、できれば昨日の人の様に、優しそうで、声の掛けやすい一人で歩いている人がいい、女の人でもいい、もちろん直接渡せばいいだけのことだが、やはり落とし物だと偽って、あのキーホルダーを気付かせるのが最善の方法に思えた。「やっぱ、少し手伝うわ」突然の声に驚くとすぐ横にユミがいた、いつ戻ってきたのかわからかったったけど、麻美は驚くようにユミの顔を見るとなんで?という顔をする。



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今宵も最後までお読みいただきありがとうございました。

はじめ、超短編を作ろうと思って書き始めたのですが、やっぱり長く

なってしまいました・・・

けど、次回で最終回です。

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