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敬慕する人

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いつもお邪魔している皆様の記事から、わたしが特に思い入れのあるものを集めさせていただきました。 プロの方々も惜しみなくその作品を公開してくださるというこの環境が奇跡です。ありが…
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#小説

文庫本が出ます!

筆者の仕事と趣味についての記事です。博物館巡りに対する想いも述べさせていただきます。 美原さつきよりお知らせ美原さつき、幸いにも短編小説を書かせていただけることになりました(決してエイプリルフールではなく本当の話です)。 この度、ミステリー作家36名が集まり、3分間ショートストーリーを2作ずつ執筆いたしました。合計2冊の短編集となり、宝島社さんより文庫本として出版されます。 文庫タイトル 『衝撃の1行で始まる3分間ミステリー』 『驚愕の1行で終わる3分間ミステリー』 価格

【短編小説】なつむし

 棚田を断ち切るようになだらかに上る一本の坂道を、一人の老婆が登っていく。丸まった背中が乳母車を押しながら、山の端に隠れそうになった夕日の最後の光に紅に染まり、ゆっくりゆっくりと登っていく。  道の両側からはカエルたちの合唱がにぎやかに響き、老婆の体を包みこんでいる。  そういえば、あの時もこんな音に包まれていた・・・。  昭和20年5月初頭。  裏山でしきりに鳴くホトトギスの声を聴きながら、菊枝は井戸端でノビルやアマドコロの根を洗っていた。配給米では父母と幼い兄弟を養

言葉に 言葉で打つから 言葉で打ちのめされる

壮絶な喪失から立ち上がる女性を描いた雄大かつ優しい物語『川が流れるように』(シェリー・リード著)訳者・桑原洋子によるあとがき

アメリカでは発売前から話題になった『川が流れるように』(シェリー・リード、桑原洋子訳)。17歳の女性を主人公に、喪失と再生を経て自立していく姿を描いた感動作です。その読みどころを、訳者の桑原洋子さんに語っていただきます。 訳者あとがき桑原洋子 『川が流れるように』はシェリー・リード(Shelley Read)著Go as a River(2023)の全訳である。 物語の主人公は、桃農園の娘で17歳のヴィクトリア・ナッシュ。彼女は、自動車事故で母を失くしてから、家族に残っ