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Fishmansという「推し」に萌える日常

最近はFishmansに夢中だ。彼らを知ったのは今年に入ってからだ。彼らが活躍していた時代、私の辞書にはFishmansもなければ、彼らの音楽もなかった。

Fishmansは「アメリカ最大の音楽レビューサイト「Rate Your Music」では日本のアーティストグループとして最高評価を得ており、海外の音楽リスナーから強い支持を受けている」(Wikipedia)。

こういう音楽との出会いかたもあるのかと感心する。久しぶりに出会えた「推し」の佐藤伸治さんはずっと33歳未満で死んでいる。私は48歳でYOUTUBE越しに彼の才能や危うさに萌え、ときめき、安心する。佐藤伸治さんは死んでいるのだから私は今後彼に失望することも「推し」を失うこともないことに安心する。思う存分Fishmansをデジタルの世界で楽しめる。

「推し」にリアルに萌えるという現象は、失うこと、失望することもセットだった。私はWARRANTのJaniLaneの熱狂的なファンだった。この世界にこんなに美しい旋律を創るこんなにハンサムで才能に満ち溢れた人間が存在するのかと夢中だった。彼が「いけないチェリーパイ」のPVのモデル、ボビーブラウンと結婚したことで何となく失望し、売れなくなっていい作品を落とさなくなったことに失望し、激太りして劣化したことで更に失望し、モーテルでアルコール依存症で孤独死したと聞いて深い悲しみに暮れた。そういう一連の感情を経て今でも私にとってJaniLaneは特別な存在だが「推し」ではなくなった。彼は私の10代を想起させてくれる不思議な存在だが、もはやときめくことは一切ない。

今、佐藤伸治さんに抱くこのときめきは、彼の老化や才能の枯渇と直面しなくてもよいという意味でも、最高の「推し」を見つけたぜという感覚だ。私が佐藤伸治さんを失うことはない。

彼の創造した世界観や音楽は信じがたいほどに心地よい。WeatherReportを聴きながら2023年の春を生きている。佐藤伸治さんの声は、すごい。

余談だが私の夫と佐藤伸治には共通点がある。同じ学年に生まれ、同じように世田谷の団地で生まれ育っている。同じ時代、同じ風土で育っている。夫も創作を生業にしている。が、しかし夫はFishmansを知らないし属性が180度違う。夫は5歳の娘とプリキュアに夢中だ。うちの夫には一切の危うさはない。夫が心身ともに健康的な人間だというのは家族という共同体を営む上で最高のギフトだが、夫にもはや萌えやしない。私はFishmansの楽曲の中でプカプカと浮遊するように心地よさを求める。美しい佐藤伸治の瞳をYOUTUBEで見惚れる。失われた美しい瞳を不思議な気持ちでみつめる。



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