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Nurse With WoundリストとFille Qui Mousse

Nurse With Woundヒストリー(仮)に収録されるエピソードから部分的に抜粋するコーナー③

Nurse With Woundのファースト・アルバム『Chance Meeting On A Dissecting Table Of A Sewing Machine And An Umbrella』(1979)には一枚のインサートが封入されていた。ファンの間でNWWリストと呼ばれるそれには、スティーヴン・ステイプルトン含めたメンバー3人が集めた「エレクトリック・エクスペリメンタル・ミュージック」バンドの名前が列挙されている。今日、同リストに掲載されていることが一つのステータス(または唯一の情報)になっているレコードも少なくない。
インターネットのない時代にこれだけのレコードを集めたことは驚愕に値する・・・とは各所で言われ続けていることなので、今回はそういった賛辞を抜きにして、本リストに関わる一つの疑問を取り上げてみる。それはフランスのバンド、Fille Qui Mousseの名前がリストに記入されていることだ。このバンド唯一のアルバムは72年にFutura Recordsからリリースされる予定だったが、テストプレスを作った直後に発売が中止され、約5枚のテスト盤が関係者に行き渡っただけに終わった。94年にイタリアのMellowが、98年にSpalax RecordsがそれぞれCDで再発するまでは誰もその音楽を知ることがなかったので、NWWリスト入りしている事実だけが一人歩きしていた。
スティーヴン・ステイプルトンはいかにしてFille Qui Mousseとその音楽を知ったのか。以下、2018年に筆者が本人から得た証言をもとに書いていく。

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