Nurse With Woundのある曲でドラムンベースが使われているのはなぜなのか
Nurse With Woundヒストリー(仮)に収録されるエピソードから部分的に抜粋するコーナー⓶
2006年に発表されたNurse With Wound『Rat Tapes One』は、1983年から2006年までに「廃棄」された音楽の残骸をパッケージしたアルバムだった。いわばお蔵入り音源集なのだが、ここに1曲、古くからのリスナーを混乱させるものがある。
NWWにしては珍しいどころか過去になかったドラムンベースの類だ。94年に発表した『Rock 'n Roll Station』はメインストリームであるヒップホップと合流したかのように思わせる怪作だが、上の「Track 12」はトレンド(だった)クラブ・ミュージックそのものになっている。
当初、筆者はこの音源がOmni Trio期のロバート・ヘイとのセッションから生まれたと予想していた。ヘイが80年代を通してNWWのUnited Dairiesから音源をリリースしていたこともあり、彼が90年からクラブ・ミュージックのシーンへ移行した後でも両者の創作的な交流は続いていたのではないかと考えていたのだ。しかし、2016年から関係者へ取材を続けていくうちに、この出どころはOmni Trioではないと判明した。
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