えいがのはなし 2023.10月号

今月は以下の3本。
『イコライザー THE FINAL』(The Equalizer 3)
『ザ・クリエイター/創造者』(The Creator)
『ドミノ』(Hypnotic)

※ネタバレ注意。

イコライザー THE FINAL

言わずと知れた名優デンゼル・ワシントンの、近年における著名なシリーズ作品である『イコライザー』、その3作目にして最終章。
元DIA工作員のジョン・マッコールが諸悪を裁く物語は、舞台をイタリアに移しても変わらない。「自分は善い人ではない」「自らの欲望(正義心など)を満たすための私刑に過ぎない」と思いながらも、愛着を抱いた街、そしてそこに住む人々のため、彼は悪を裁く。
「9秒で全員倒す」というシーンは、キャッチコピーとして優れるためコマーシャルに使われがちだが、このシーンは彼の強さを印象付けるためのシーンに過ぎない。
シリーズを観たことのある諸兄であればご存知のように、アクションを基軸とした作品ではなく、デンゼル・ワシントンが得意とする社会派のずっしりとした演技と、そこに裏付けされた「悪側から観たこの男の恐ろしさ」を楽しむもので、その味は3作目であっても変わらず美味だった。


ザ・クリエイター/創造者

デンゼル・ワシントンの長男にして、俳優としての頭角を現しているジョン・デヴィッド・ワシントンを主演に、AIと人間の戦いを舞台として、愛情や宗教、エゴなど、人間が持ちうる美醜を描き出した、SF作品にしてヒューマンドラマだ。
特殊部隊の隊員ジョシュア・テイラーは、AIの設計者”ザ・クリエイター”を探し出すために潜入した先で愛した女性マヤを喪い、失意の中除隊する。その後、マヤがまだ生きているかもしれないと聞かされたジョシュアは、”ザ・クリエイター”捜索に再び参加するが、そこで子供の姿をしたAIのアルフィーと出会い、AIと人間の戦争の渦中へと飲み込まれていく。
人間のエゴ、AIの宗教、そして人間とAIの愛情を描き出すことにより、そこに何の違いもないのだと印象付け、人間とAIをひとつの種族<ヒューマン>として描いたヒューマンドラマ。それが観終わったときに抱いた印象だった。
「AI≒人間」というのは、AIという存在を描くうえである種「王道」ともいえるテーマのひとつだ(ゲーマーとしては『Detroit: Become Human』を想起せざるを得ない)が、その王道として文句なしの作品だろう。


ドミノ

では、SF作品をもうひとつ。
ベン・アフレック主演のこの作品は、原題を『Hypnotic』という。催眠を意味するこの言葉の通り、主軸となるのは催眠術だ。そこを『DOMINO』としたのは、和訳のセンスが光るところだろう。作中でも印象的なシーンに使われているだけでなく、「並べたものが連鎖して崩れていく」というドミノ倒しの遊び方は、この作品のモチーフとして適しているからだ。
あらすじを書いたところで、そのあらすじのすべてがひっくり返るタイプの(大どんでん返し系)映画なので、ここでは控えておくが、根底にあるのは家族としての信頼・愛情である。あと、ひとの嗜好として大きく分かれるところなのでこれだけ書いておくと、「主人公悪役ではない」――果たして誰が敵で、誰が味方なのか……あなたは見抜けるだろうか?
とにかく、ネタバレを踏んでしまうと面白さが一気に削がれるので、この作品は特に初見で楽しむべきだろう。

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