えいがのはなし『John Wick: Chapter 4』(ジョン・ウィック:コンセクエンス)

マトリックス4(リザレクションズ)ネオ・アンダーソンとして復活を果たし、皆にとっての宿敵をトリニティーとともに打倒してみせたキアヌ・リーヴス。ネオという救世主として復活してみせた彼は、ジョン・ウィック――ジョナサンとしてどのような結末を迎えるのか?
ちなみに、マトリックスの副題は原題の時点でRESURRECTIONS――復活
ジョン・ウィック』シリーズは、原則として『chapter』形式となっているが、日本語版ではCONSEQUENCE――意味するところは、報い、だ。



※ぜんぶネタバレするよ よろしくね



あら(?)すじ

前作までの行動として、聖域であるコンチネンタル・ホテル・ニューヨークでの殺害により、その首に誰よりも多くの賞金がかけられたジョン。最終的にはホテルの支配人であるウィンストンに屋上で撃たれ落下するも、驚異のタフネスでキングのもとまでたどり着いた。
今作冒頭、裏の世界を牛耳っている主席連合の首長のところに出向いたジョンだが、指輪の返還と自由の担保を拒否され、あっさりと殺害する。
この一件により、ジョン・ウィックの殺害を条件に主席の代表としての座を手に入れたヴィンセント・デ・グラモン侯爵は、ウィンストンを呼び出す。弁明を試みるウィンストンだが、ジョンに続く者が現れないよう、見せしめとして、NYコンチネンタルを爆破される。さらには、NYコンチネンタルホテルのコンシェルジュであり、かけがえのない友人でもあるシャロンをも殺害される【第一の報い】。
その後、ジョンは数少ない友人である大阪コンチネンタルの支配人、コウジのもとを訪れるが、主席連合がホテルを襲撃。娘の身の安全と引き換えにジョンの抹殺依頼を引き受けた、ジョンやコウジにとって共通の友人であるケインもそこに現れる。盲目ながら凄腕のケインに対して、既に負傷していたコウジでは勝ち目がなかったが、ケインもコウジを殺すつもりはなく、諦めて遠くに逃げろと諭す。それでも義を貫こうとしたコウジは、その代償としてケインに殺されることとなる【第二の報い】。
犬を連れた「何物でもない」<ノーバディ>と語る男から、「もっと生き延びて賞金をあげてくれ」と奇妙な手助けをされたジョンは、大阪コンチネンタルを後にし、電車でコウジの娘、アキラからケインによってコウジが殺されたことを聞かされる。「あいつを殺して。でなければ私が殺す」という言葉に、「わかった」とだけ返すジョン。
キングと接触したウィンストンによって呼び出されたジョンは、形容する言葉として「友」とだけ彫られたシャロンの墓の前で、ウィンストンから主席連合における決闘のルールについて聞かされる。それに勝てさえすれば、主席連合から解放され、自由の身になれるのだという。「お前に何の得がある?」と聞かれたウィンストンは、「お前の得意なことだ」と返す。
ウィンストンが求めたもの、それはホテルの復興と、そして、侯爵への復讐だった。
参加資格として主席連合の代表組織に属さなければならなかったジョンは、古巣である『ルスカ・ロマ』を訪れるが、関わりのあった叔父は主席連合の命令によって現首領のカティアに殺害されており、その恨みとして処刑されかけるが、決闘について持ち掛けることに成功する。再び家族(ファミリー)となるための条件として、同じく主席連合のメンバーであったキーラの殺害指示を受けたジョンは、ジョンを追って訪れたケイン、ノーバディとともにポーカーの席に着くこととなるが、5ポーカー(イカサマ)で馬鹿にされた3人は結託、その場にいた護衛たちを片っ端から殺していく。逃げ出したキーラと格闘戦で戦うジョンは、キーラの巨大な体躯と膂力に苦戦するが、持ち前の化け物じみた意思とタフネスで殺害する【第三の報い】。証拠として金歯を持ち帰ったジョンは、再び『ルスカ・ロマ』の一員となる。
決闘について決める協議の場にて、代理としてケインを立てた侯爵は、それでもぬぐい切れない不安を払拭するため、ジョンが選んだ決闘の場(パリのサクレ・クール寺院)にたどり着く前に殺そうと、賞金額をさらに増やして大量の殺し屋と主席連合の追っ手を仕向ける。
来るものを片っ端から殺しまわりつつ寺院に向かうジョンを陰から手助けしつつ、賞金額について侯爵と交渉をしていたノーバディだが、満足いく額になって殺そうとしたところで、主席連合に属する追っ手によって愛犬が殺されそうになり、ジョンによって救われる。
寺院前の長い階段にたどり着いたジョンは、疲労困憊のなか殺しながら上っていくが、先ほどの追っ手に行く手を阻まれる。あと2~3分でたどり着かなければ時間切れとなり処刑されてしまうなか、彼に手を貸したのは決闘相手であるケインと、愛犬を救われたノーバディだった。
かくして、決闘の場に集ったケインとジョン。防弾スーツを脱ぎ、30歩離れたところから1発ごとに10歩進み、どちらかが死ぬまで撃ち合い続ける決闘方式で、互いに2発を撃ちあい、3発目。
ケインの銃弾に倒れたジョンを見て勝利を確信した侯爵は、自らとどめをさそうと前に出るが、そもそもジョンは3発目を撃っていなかった。ジョンに脳天をぶち抜かれた侯爵は即死し、神のごとき強大な権力に溺れた報いを受けた【第四の報い】。
侯爵を油断させるため、あえて重傷を負ったジョンは、ウィンストンに「(彼女のそばに)連れ帰ってくれ」とだけ言い残し、寺院の階段で力尽きる。かくして、自由を得たジョンは、愛した妻の横で、『妻を愛した夫』、『夫を愛した妻』として永遠に眠ることとなった【第五の報い】。
その後、主席連合から解放されたケインが、ようやく娘に会いにいこうとしたところを、アキラが殺そうとするシーン【第六の報い】で幕を閉じる。


報い、その意味

今作で死んだ主要人物について、ほとんどは自分がしてきた罪や失敗への代償として「報いを受けた」のだが、ジョンに限って言えば、「報われた」と言えるように思う。
どのように生きたかではなく、どのような死に方をしたか。
それを最善の形で――己に課せられた責務を清算し、ただの妻を愛したジョナサンとして、彼女のもとで眠る。
少なくとも、寺院に向かうため地下水路のボートから降りるとき、ウィンストンに墓標を伝えたときには、その結末を望んでいたのではないだろうか。


ジョンの強さ、その所以

戦闘技術は前提として、ジョン・ウィックが伝説の殺し屋たる所以には、明確なものがふたつある。
それは、第一作から言われていた尋常ならざる意思と、それを支える化け物じみたタフネスだ。
銃弾はスーツで防護できている部分であれば有効打になりえないが、弾の衝撃や落下の衝撃が殺せるわけではない。特に今作は、ちょっとおかしいレベルでジョンが吹き飛ばされたり落下したり轢かれたり転がり落ちたりているが、これは彼の意思とタフネスを強調する演出だろう。
常人であれば今作だけで幾度も気絶している、というか落下については普通に何度か死んでいるレベルである。
ジョン・ウィックこっわ。そりゃババヤガって言われますよ。


金字塔

3作目のときにアクションの見本市と書いたけれど、今回のこれはシリーズ全体を総括しての意見だ。
1作、2作で世界観とアクションを充実させ、3作目でアクションが進化、4作目で物語としてもアクションとしても見事に『金字塔』と称賛できるまでに昇華した。
それには間違いなく、ケイン役を演じた世界的アクションスター、ドニー・イェンの存在があるだろう。盲目ながらに超一級品の殺し屋、という極度に難しい役回りを見事に演じてみせた彼には、ひたすら脱帽するばかりである。
アクションのみならず、ジョンの旧友たちとその娘の存在は、ジョン・ウィックというひとつの物語のクライマックスにおいて、「ジョンの存在感を薄めることなく別の家族の物語を埋め込み、物語の中核に合ったものを再認識させる」ことに成功している。1作目から3作目までで、犬、車、家、そして自分そのものを愛する妻との思い出として描いてきたわけだが、ジョンではなく別の家族でも描くことで、普遍的なテーマであると印象付けているようにも思う。


好きなシーン

・お相撲さんくっそつよい。
・大阪のホテルでラーメン食ってるドニー・イェン。
・敵の身体で太鼓を演奏するジョン。
・とりあえずポーカーはやる3人。
・イカサマしたキーラに「こいつマジでクソだな」ってなって共闘する3人。開始の合図はジョンのカードナイフ(?)。
・寺院前の階段でもう一回共闘する3人。
・ジョンの3発目に「やりやがったぜ」って笑うノーバディ。
・タマ。
・「助けないの?」って顔。
・顔面に放尿。

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