2020/4/8

背に腹はかえられぬ、とはよく言ったもので、背は腹にはかわらない。いやもう背に腹はかえられねえ、このままじゃ野垂れ死んじまう、家族のためだ、すまねえなオラを恨まんでくれろ、ってな事態が方々で起こっているかも知れない。多少の犠牲を払ってでも守りたいものは必死で守るのが人であろう。ただ気をつけなくてはいけないのは、混沌の中では、背は腹に変わる可能性を十分に秘めているということだ。歴史は必ず繰り返すのだから。

昨日まで背と定めていた人間の背部、これは本日から腹とする。昨日まで腹と呼んで五臓六腑を仕舞い込んでいた人間の腹部、これは本日より背とする。お上のお達しである。すると品行方正な正直モノはみな、おいおい、お上のお達し聞いたかい源さん、どうやら今日から腹は背、背は腹って呼び名に変わるってゆうじゃねえか、穏やかじゃないねえ。いやいや、十分に穏やかじゃねえか、今まで腹って呼んでた腹を背、背中って呼んでた背中を腹って呼びゃあイイだけの話だろい?って世のマジョリティが源さんだとしたら、背に腹がかわった瞬間の到来である。

腹番号3、長嶋茂雄である。いやあマジ背中減ったわー、全部のせ麺ましまし野菜、かくじつイクっしょーって学生の会話が飛び込んでくる事態の発生である。ボクらはより一層、氾濫する情報、発令、決定を、自分のアタマでよく考え精査し、自ら判断して行動することを求められている。巧妙にデザインされた統治機構はあっと言う間に世の中を変えてしまう。変えられてしまう。そして変えられたことを気づかないまま生きてしまう。

現実を受け入れることと、現実を受け止めること、この二つには大きな差がある。自分に言い聞かせる。現実を受け止めて生きる、背と腹はかえさせない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?