15歳の地図

先日、兵庫県のとある公立高校に通う生徒さんが研修に来た。
3日間という短さだったが、当社にとっては初めての経験、本人は高校一年の夏休み必須仮題という研修で、当然これも初めての経験。
初めて同士の体験だったが、これが実に有意義だった。

事前に高校側から連絡があり、生徒がウチを希望している旨の連絡があった。面白そうなので二つ返事でオーケーしたが、はて、いったい3日間をどうしようかと思った。

学校側は何でもやらせてくださいと、そう言う。しかし、受け入れるこちらとしては何でも、というわけにはいかない。掃除ばっかりさせても意味ない。第一、15歳である。今回は女の子だったということもあり、それなりに考えることは少なくない。

結局、1日目には、デザインという仕事の社会的な意義と、グラフィック広告の役割を講義して、2日目には、その講義内容に連動した実作業をMacでやってもらい、3日目は、また別の仕事の概要を講義しながら、まとめにはいる、というカリキュラムを考えた。
最後には、実際にやってもらった仕事の資料とか、おみやげをいっぱい持たせて、『またいつでも遊びにおいで』と送り出した。
正直、来週も来てくれたらと思うくらい、いい子だった。

ウチのような極小企業を見つけることは、須磨の海岸からひとつぶの貝殻を見つけること以上に奇跡的なことだと思っているので、選んでくれた事自体を感謝した次第。

来てくれた女子高生は、ほんとうに素直でマジメで、明るい子。昼ご飯も会社のスタッフと同じものを食べてもらい、良くお喋りして屈託なく笑う、素敵な女の子だった。講義は真剣に聴き、実践の仕事も驚くべき吸収力で覚えてしまう。家族がみんな仲良しで、うらやましいくらいのびのび育てられた女の子だった。

こちらは少人数なので、全員総掛かりでおつき合いしたが、当社のスタッフは全員すがすがしい気持ちで一杯だったようで、それも良かったと思っている。

将来デザインを仕事にしたいと、高校一年生段階で考えている事自体、私はあっぱれだと思うが、よくよく聞くと、その高校がそういう方向性をしっかりと持っていて、生徒にかなり厳しい指導をしているらしい。
そんなに厳しかったら、不登校の生徒もいるだろう? と聞くと、皆無だという。

その高校は、兵庫県下でも有数の優良校だということが、その後わかった。
先生方も生徒たちも、毎日を真剣勝負のように生きているようで、この時代にもそんな骨のある教育環境があるのだと、自分の不勉強を思い直した次第である。

私が高校一年生の時は、デザインのことも、編集のことも、何にも考えていなかった。
思い出すのは、高校一年の時にジョン・レノンが暗殺されて、アルバム『ダブル・ファンタジー』を何度も聴いたなあ、ということ、漫画の『あしたのジョー』に夢中だったなあ、ということくらい。

確かに、3日間は時間をたくさんつかって研修生と過ごしたが、とても満たされた時間だった。
来てくれた生徒さんと、送り出してくれた学校、そしてご両親に感謝したい。

Nori
2008.08.23
www.hiratagraphics.com