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僕のスター(記憶に残っている撮影エピソード7 木村拓哉さん)

 LINE NEWSで木村拓哉さんのポートレート撮影をさせていただいたことがあります。この日はLINEのCM用の動画撮影もあり、それが終わった後に僕が木村さんを撮影する予定でした。広告代理店の方からどういう流れで撮影するか教えて欲しいと説明を求められました。広告の現場でもありますし、責任者が撮影内容を確認するのは当然のことなので説明をしました(とはいえ、立ったり座ったりするぐらいで特別なことをしてもらう訳ではありませんでした)。当日に僕が撮影現場を見て、ここでこう撮りたいと思いついたこともありましたし、本人にも説明していないので全部はちょっと難しいかもしれませんと言われました。そりゃそうだよねと思います。LINE NEWSで使用する写真だとしてもここは広告の現場ですから。しょうがない。今、出来ることをしっかりやろうと思いました。

 ちなみに過去にも木村拓哉さんを撮影させてもらったことは何度かあります。こっちがめちゃくちゃ気合いを入れて熱量マックスで撮影に臨んでもいつもドーンと受け止めてくださる方というのはわかっていました。とにかくめちゃくちゃ素敵な人なのです。

 それから暫くして木村さんがスタジオに入って来ました。場の空気がガラッと変わります。最初に、木村さんはLINEの担当者さんやライターさんたちと挨拶を交わしました。僕はそこから少し離れたところでカメラを持って立っていました。挨拶も一通り終わり、木村さんも席についてさぁこれからインタビューという流れの時に、僕の方を見て「おおっ!」って友達を見つけた時のようなフランクな感じで手をあげてくれたのです。このスタジオにいる人すべてが木村さんのその一言で「あそこにいるカメラマンは木村さんが知っている人なんだ」と印象付けられました。考えうる限り僕にとってはベストのタイミングで「おおっ!」と言ってくれたのです。驚いた僕は木村さんにぺこりとするぐらいしか出来ませんでしたが、これで撮影はうまくいくと思いました。

 これは想像でしかありませんが、木村さんはタイミングを選んで「おおっ!」を言ってくれたんだと思いました。これまで木村さんを撮影したのは雑誌の表紙の現場だったりしたから、広告の現場に慣れていない僕を助けるためにやってくれたと考えるほうが腑に落ちます。そして木村さんはこういうことを自然にやってしまう人だというのも知っています。きっと木村さんの周りにはそういうエピソードはたくさんあると思うのです。その日の撮影は木村さんのおかげでとても良い感じに終えることが出来ました。広告代理店の責任者の方からも撮影後にお礼を言われました。本当に良かったです。

 話は変わりますが、先日この時に撮影した写真を事務所のアーティスト写真として使わせていただきたいと連絡がありました。もちろん快諾しました。木村拓哉さんのマネージャーさんから「この3〜4年で一番良い表情、写真だと思います。木村としての名刺がわりになるような写真として、今後使用させていただきたいと思います。」と僕が撮影した木村さんのポートレート写真に対してそのような評価をいただきました。「嘘でしょ」と思いました。一番は絶対に言い過ぎだと思いますが、木村さんのアーティスト写真に使ってもらえるなんて光栄にも程があります。宝くじが当たったような気分です。平凡な自分でも一生懸命頑張ってるとこんなご褒美があるんだなぁ。

 20歳の頃「若者のすべて」を見てから、めちゃくちゃ憧れたあの木村拓哉さんだよ。木村拓哉さんに憧れて買ったエクスプローラーやレッドウイング。似合わないとわかっているロン毛にもチャレンジしました。木村さんの二の腕にさえ憧れました。よくよく思い返せば、誰かに憧れてこれほどまでに影響を受けた経験はないのです。彼は僕のスターみたいな存在です。

 カメラマンになって木村拓哉さんを自分が撮らしてもらえることさえ夢みたいでしたし、木村拓哉さんの名刺がわりになるような写真を僕が撮れるなんて誰が思うのでしょう。まず僕が思いませんでした。僕は本当に普通の平凡な人生を生きていたサラリーマンだったんだよ。30歳から写真の世界に入ってこんな事が起きるとは。人生はつくづく面白いです。

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