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20240629『若き日』セルフライナーノーツ⑨

Photo by Mikio Kitahara

ふと思い立って先の公演のセルフライナーノーツを書いてみようと思った。私たちの『若き日の詩人たちの肖像』は上演時間60分の作品で、オープニングとエンディングを合わせて20のシーンからなる。リハーサルではひとつひとつのテクストを俳優たち自身で選定し、シーンを立ち上げていった。私たちの創作はどことなく音楽のアルバムを作るときのそれに似ているような気がして、せっかくなのでセルフライナーノーツとして、覚えている限りでその過程を書き留めておければと思った。


『若き日』セットリスト。

「10 生命の輝き」はちょっとだけ前後の文脈を離れてここへ配置されている。元々は『なよたけ』を書いた加藤道夫が学生時代に当局からめちゃくちゃに弾圧されながら演劇をやっていたときに当日パンフレットに寄せた文章だった。「芸術家達の多くは、幾世代もの間、人々の感性に烈しく訴へる生命の輝きと云ふものを蔑ろにして来た様に思ひます。」と訴えるその文章は、一読したときからどうにか舞台の上に載せられないかと思っていた。

▼『なよたけ』自体も読んでみると分かるとおりものすごい戯曲で、およそ激しい戦争の最中に構想され、執筆されたということを信じられないほどに幻想的な作品である(細田守や新海誠が映画化してもそんなに驚かないような感じのト書きが炸裂している)。『若き日』の作中でも「赤鬼君」とあだ名された加藤氏が『なよたけ』と思しき作品の構想を語るシーンがあったりもするのだけれど、結構激し目の妄想に囚われているような姿も描かれていて凄まじい。

▼もともと原作だと主人公が釈放されてからふらふらと四谷の方に歩いて行って、風呂屋に入ってタオルがない、という不思議なシーンが挿入される。それもシーンの候補として入っていたのだけれど、あまりに長いので今回は割愛した(松永が覚えていた)。何はともあれ、誰であれ釈放されたら嬉しかろう、ということでこうした連なりになっている。

▼なんだかとりあえず激しくぶつかり合いたいのだというイメージがぼんやりとあって、コンタクトインプロ、ということを誰かに習ったりして詳しいわけではないけれども、とりあえずContact Gonzoのコンタクトインプロの映像を見たりしながら検討を進めて行った。
https://youtu.be/VQV2s0rcE9k?si=XLh_sXUe7aGFEr7x

▼稽古場ではほとんど相撲のぶつかり稽古みたいなことをやったりしていたのだが、思うように迫力が出てこないような気がして「もっと本気でかかって来いや!!」と思わず声を荒げたりしていた。後に犀の角へ行った時にサントミューゼでつかさんの『初級革命講座 飛龍伝』を観る機会があって、「ああ、ジェラルミンの盾に思い切り突っ込めばよかったのか」と思ったりもした。そういう激しさが欲しかった。

▼このシーンで面白かったのは、人は身体的な負荷が閾値を超えると台詞を正確に喋れなくなる、ということを身を以て体験できたことだった。基本的に誰かに演出するときは「台詞は台本通り一言一句正確に喋ってください」というスタンスで望むので、自分自身に対しても基本的にはそうなのだけれど3人の男を身体に載せて台詞を喋ろうとすると、完璧に覚えたはずの台詞でもぜんぜん思うように口から出なくなったのは、生き物としての人間の事務処理能力の限界を垣間見た気がして個人的には興味深かった。たぶん腰を据えてもっと鍛えたら5人くらいなら引きずったまま台詞が言えるようになる気もするのだが、そうなるともうびっくり人間の類いになってしまうのだろうなと思ったりもする。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
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