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おじさんの世界を乗り越えていくこと

揺るぎようのない事実として、わたしたちのほとんどは現代の社会における学校教育や家庭の皺寄せを受けて育っている。だからその呪縛や自分を守るための鎧を一枚脱ぐ時、少なからず相手との間に精神的な衝突、対立、否定などが発生する。

そこで大抵の人はその瞬間に逃げてしまったり、衝突した瞬間に「攻撃された」と身構え、より防衛を強めて心を硬く閉ざす。「空気読めむ」「ことなかれ」がこれ。時と場所を間違えると再起不能なまでに叩きのめされる。恐怖だし、苦しい。ピリッとした空気をつくってしまったと思った時、「ごめんなさいごめんなさい」と、本当は悪くもないのに謝って自分を責めてしまう。そして過剰に反省する。鬱憤は溜まっていく。それをどう誤魔化すかが生きる上での重要な課題になってしまう。

だけどそのザワザワとした心地悪さやヒリヒリとした感情を、お互いが自分の殻から出て、お互いが素直に話し合おうとしている前兆なのだと気づくことができたら、そのザワザワとヒリヒリの先には、お互いの発見や成長や赦しがある。たまーーーに起こる「友だちになる瞬間」がこれ。涙が出るほど気持ちが救われる瞬間でもある。お互いの違いを認め合うことで相手と安心して話せる状態になる。

ただお互いが素直になりたいだけなのに、どうしてこうした感情的衝突が起こり、それを乗り越えないと仲良くなれないのはなぜだろう?

それは、「言うことを聞き、目的のために我慢ができる人を良質な人材とする」とする学校教育に原因があり、そこで育った親もまた子どもにそれを期待し、社会全体もそれを良しとする環境になったからだ。もともとは国家として強くなることで、他国に侵略されないためのものであったのだろう。しかしこれが今になって大きな負の連鎖として私たちを苦しめている。

僕にはそれが、今の社会で肯定されている暴力のように感じられる。そしてこれを良しとするのが #おじさんの世界 であり、これが前提だから各自自分で自分に我慢させたり、言うことを聞くように訓練されている相手を見つけてパワハラしたり、この世界の中でザワザワヒリヒリする領域に踏み込むと「生意気な」と怒り怒られるのが、おじさんの世界なのである。

そして、怒られて否定される側になりたくないから、誰かを陥れてでも上に立ちたい、いじめられる立場になりたくない、有利な立場になりたいと必死になり、その立場を得たらそこから移動したくないとあらゆる画策をするのが、これまでわたしたちがこれまで生きてきた世界なのである。

…と、おじさんの世界の全体を俯瞰してみた。

で、改めて思うのだけど、僕らはせっかくこの世に生まれてきたのだから、もっと「優しい世界」で暮らしてもいいはずだ。必要以上に苦しむ修行のためにこの星にやってきたのだろうか。違うと思う。

仮にこのおじさんの世界の中で攻撃から身を守る避難所を作っても、それは傷の舐め合いやより身を固くすることにしかならないだろう。おじさんのアンチテーゼとしての避難所では心の歪みは治らない(でも怪我して動けない人には避難所が必要だとは思う)。

だから目指すなら、「おじさんの世界」から「優しい世界」への引っ越しだなぁ、と改めて思うのだ。

極端なユートピアは目指さず、極めて地味に、実感のこもったリアルな日常をコツコツとつくっていくこと。相手との人間関係を(通過儀礼としての多少の火花が散ろうとも)丁寧につくっていくこと。お互いをリスペクトし、対等に話が出来て、助け合える関係性の中に生きること。うん、現実的で悪くない。

そう考えると、やはり僕はおじさんの世界から少し距離をとった新しい村や街に引っ越したい。開拓時代だ。多少の不便さや苦労よりも開拓仲間との日々の方が楽しい人生だと思える。その日々を想像すると、なんだか今まで感じたことのない心の奥底からの「ワクワク」が込み上がってくるのを感じることができる。希望だ。希望がある人生が良い。

その途中段階で、ザワザワとした感情やヒリヒリとした空気になってしまい、それを「ザワザワしてるねー!」「ヒリヒリしたー!」と言い合って確認し、認め合うことを何度も何度も繰り返していかないと、僕らはお互いに素直になれないのは仕方のないことなのだ。

だからヒリヒリしよう、ザワザワしよう。

その違和感から逃げて、ぬるま湯に浸かるのが、おじさんの世界なのだから、違和感や不快感やちょっとした対立が起きた時に「あ、対立起こったねー!なんでだろうねー?」って言い合えた時、わたしたちはおじさんの世界から少し抜け出せているはずだ。

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