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社会的基盤の民主化「5Gによって出現するコミュニティメディア」(平野講演ログ)

このnoteでは、「社会的基盤の民主化。5Gによって出現するコミュニティメディア」についてお話しします。

これは、2022年9月20~21日、ホテルニューオータニ(東京)にて、総務省共催の「第5世代モバイル推進フォーラム」のセッション「Japan's initiatives for Advanced Service Application of 5G」で発表したものです

今日の話の前提条件ふたつを確認します。

ひとつめが「code is law」です。

Code is Lawという概念は、法学者として有名なローレンス・レッシグ氏が提唱している概念です。

わたしたちは有史以来、文字化社会の中で生きてきました。それは文字で書かれたことを理解して、それを精神力で守らなければならないというめんどくさいものでした。守らせるために罰則を用意したり、監視したり。

ですがこれからのコード化社会とでも呼ぶような世界では、プログラミングされたコードそのものが法律よりも力を持ちます。つまり、コードは書いたとおりに動くので、理解して精神力で守る必要がありません。これは破壊的なイノベーションをもたらすし、人類の世界観、社会の捉え方すべてを変えてしまう。その根幹にある社会基盤が5Gです。

今後、すべての社会インフラはコモディティ化されるでしょう。

これは、1970年代のインターネット1.0以来の50年ぶりの大きな変化です
また、これらは改良ではなく、新しい技術による社会基盤の創造です。

よって、これは僕の解釈も含まれていますが、codeと5Gインフラによってわたしたちはこの3つの挑戦をしていくことになります。

  1. コードは社会インフラを民主化できる

  2. コードは新しい働き方を生み出す

  3. コードは新しい社会秩序をつくる

もうひとつの前提条件が、「すべてはメディアである」ということです。

人が何かを感じて、何かコミュニケーションをするものはすべてメディアであり、「メディアはメッセージである」という社会学者のマクルーハンの考え方です。

ここで言うメディアとは、リベラルアーツ的な意味でのメディアであって、哲学的でもあります。わたしたちもメディアであり、社会や、例えば自動車すらもメディアなのです。

僕らがそう認識していなかっただけで、会社も、行政も、学校も、メディアだったのです。

であれば、codeと5Gによって、これらはすべて共創的なメディアに変わります。
これを僕は「コミュニティーメディア」と呼びたいと思います。

2030年までに、 学ぶ、働く、遊ぶの境界線がなくなるでしょう。
2030年までに、これらの境界線は消え、すべての社会インフラは「コミュニティ・メディア」で簡単に接続可能になります。

自己紹介をします。僕はクリエイティブの民主化をテーマに活動してきたソフトウェア開発者でメディアクリエイターです。

代表作は、1998年に発表したVJソフトウェアの「Motion dive」です。
それまでは数千万円の機材が必要だったことを、誰もがパソコン1台とモーションダイブさえあれば、コンサート会場やクラブで音楽に合わせて映像パフォーマンスをできるようにしました。これにより世界中で何十万人もの映像アーティスト生まれました。

振り返って考えてみると、このプロジェクトは、ビジュアルコミュニケーションの民主化というチャレンジでした。

そして今、僕は、新しいコミュニティ・メディア開発プラットフォーム「Teleport」を通じて、社会インフラの民主化を目指しています。

“Teleport ”は、「社会的バンド」とでも呼ぶ人たちが、社会基盤に手軽にアクセスして、新しい社会的なサービスを構築、運営することを可能にするものです。
わたしたちは今、このテレポートで革命を起していきます。そのための協力者、社会的クリエイター、投資家を募集しています。

ここでの考え方の基本は、「4人で世界は変えられる」ということです。例えばビートルズのように。

何も大きな組織をつくる必要はありません。
数人の社会的バンドが世界を変えるのです。

小さな “バンド ”がテレポートによって世界を揺るがす。
今なら、それができると確信しています。

テレポートは、社会クリエイターのためのエレキギター、楽器のような存在を目指しています。

社会的バンドによって生み出されるのが、コミュニティーメディアです。

私たちは、そのメディアをつくり、その中で生きていくことになります。
それは破壊的イノベーションになるでしょう。
なぜなら、会社や行政や学校の在り方を根本から変えてしまうからです。

テレポートとは?

テレポートはルーム(楽屋)とステージ(舞台)とステーションの3の環境で、コミュニティに関わる裏方、演者、参加者のすべての関係者に必要な機能を一つのプラットフォームで提供します。
テレポートを使えば、誰でもノーコードで、あらゆるコミュニティを開発・運営することができます。

  1. 社内コミュニケーションのための "Backstage "機能

  2. Eコマースやイベント運営などのための "Stage "機能

  3. ライブストリーミングやポッドキャストのための "Station "機能

これで、社会的バンドが活躍する場が整います。
あとは、5GでIoTと連携させたり、ブロックチェーンと組み合わせてDAOを構築・運用できるようにしていくことで、社会的基盤の民主化を推し進めていきます。

実証実験

テレポートは創業1年半の日本発のスタートアップです。
現在、急ピッチで開発を進めて、来年までに10を超える地域でコミュニティーメディアの実証実験を行なっていく計画です。

やがて世界に広がって、都市プラットフォーム、教育プラットフォームのエコシステムを構築していきたいと考えています。

まとめ

メディアの近代史

  • 20世紀、マスメディアは、一部の特権階級がそれ以外の99.9%の人たちに情報を一方的に伝えていく空間でした。わたしたち人類は、夢中になってそれを見ました。

  • 次に21世紀に入り、ソーシャルメディアの登場で、誰もがマスメディアになりました。わたしたち人類は、発信することに夢中になりました。夢があるかと思ったけど、現在のところディストピアに向かっています。

  • そして今、コミュニティーメディアを発明します。つまりは何かの志や目的を共有する人たちと、仕事、学び、暮らしを再構築していくということなのです。

  • このコミュニティメディアは、双方向なだけではなく、社会的基盤へのアクセスが可能で、様々な「仕組み」を市民が考案し、その「仕組み」がテンプレート化され、それらをさらに多くの人が活用することで、DAO的な世界が構築されます。

150人の小さな村

  • 人間の脳や心は、実は150人までとしか良好な関係をつくることができません。

  • これはダンバー数として広く知られています。

  • ダンバー数とは、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限です。ここでいう関係とは、ある個人が、各人のことを知っていて、さらに、各人がお互いにどのような関係にあるのかをも知っている、という状態を指します。

  • つまり、私たちが生きるこの地球は、150人の小さな村が無数につながっている状態なのです。それを、何百万人、何億人といった塊で見るグローバルマーケットだと考える我々の社会の捉え方に限界がきているのが、今日現在の私たちが立っているところだと思います。

民主化の必要性

  • 今、国民国家(nation states)と経済システムは無数の問題を抱えています。それを解決するために、素敵な150人の小さな村をつくっていきましょう。

  • そのために社会インフラに誰もがアクセスして活用できる民主化が必要なのです。

  • その小さな革命が世界中で起こることこそが、人類を次のステージへと向わせるのだと、僕は信じています。

  • その突破口を開く技術が、5Gであると思います。

それでは最後に去年12月に、小中高大学生の社会的クリエイターたちと行なった、テレポートとメタバースの実証実験の様子をご覧ください。

最後に

今日、この「第5世代モバイル推進フォーラム」には、世界中から技術者が集まっています。みなさんのうち、かなりの方々が数十年前のインターネットの誕生に関わり、築き上げてきたはずです。
あの頃、超高速な電波で世界中の空中が満たされるなんて考えたでしょうか?そのとき、どれだけの人がそれを理解できたでしょうか?
でも今、それは当たり前のことになっています。

あの頃、想像もできなかった未来に私たちは生きています。
であれば、これからの5Gの技術開発も、後々振り返ったら、今日の時点で想像できなかった未来を実現しているはずです。

つまり、わたしたちのエンジニアリング力と、クリエイティブ力が試されているのです。これまでのビジネスの限界を超えて、新しい社会基盤になるためには、想像力が必要です。

社会は、外的に組み立てるだけのものではなく、生き生きと中身でうごめくものとの一体感で、これからは設計されるべきです。
構造や制度のような社会的ハードウェアと、中身を運用する社会的ソフトウェアとの一体化によって、これからの生命的社会が誕生するでしょう。
私たちは、こうした社会的ソフトウェアという認識の重要性を感じています。

ありがとうございました!


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