見出し画像

新美育文先生の債権法の試験に寝坊した(後編)

大学2年の春から講義が始まり、1年半後。
6単位の授業を終え、満を持して迎えた試験の朝。

私はまんまと寝坊した。

明け方まで勉強しており、つい「2時間だけ仮眠を取ろう」
と思ったのが間違いだった。

午前10時スタートの試験で、気づけば午前9時51分だった。

試験を受けることは諦める他はない。

そして私は考えた。

「体調不良ということにしよう」

姑息な男だ。

それから大田区鵜の木駅近くのクリニックを受診し、診断書を書いてもらった。

医師が書いた診断書にはこうあった。

「悪心による吐き気」

日本語は深いものだ。

「悪心」を「おしん」と読むと、
「吐き気を催すこと。胸がむかつくこと。」

「悪心」を「あくしん」と読むと、
「悪いことを企てようとする悪い心」とある。

医師がそこまで意図してこの言葉を使ったのかまではわからない。

ただ、当時の私はすべてを見透かされているものと感じた。


果たして私はその診断書を持って、追試を受けさせてもらうことができた。
それがどのくらいあとに実施されたかの記憶はない。

ただ、万全の準備を持って追試を受けることができたわけではない、というのは記憶がある。

私は、たしか7月の末か8月に実施された追試を受けて、めでたく、正式に「不可」をいただいた。
あのとき寝坊しないで、普通に試験を受けることができていたら、おそらく「不可」は避けられたんじゃないか、という自負はある。

私は債権法という6単位、1年半の科目を再履修することになり、ラストチャンスに賭けることになる。

それから1年半後のラストチャンスには万全の?準備をして臨み、私はめでたく明治法学部を4年で卒業することができた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?