米国政府のデータ品質管理の取り組み
データ品質の重要性が指摘される中で 、従来のデータベースやシステム視点のデータ品質管理でなく、もっと大きな視点でのデータ品質管理が求められている。
ソフトウェアエンジニアリング視点での整理も必要であるが、ここでは国内最大のデータオーナーである米国政府の取り組みを整理してみたい。
情報品質法(データ品質法)
米国政府は透明性の向上に力を入れてきているが、政府の情報を正確に公開するため2001年にConsolidated Appropriations Act, 2001のSection 515、通称Information Quality Act(IQA)を制定している。そして、IQAを受け2002年にOMBがGuidelines for Ensuring and Maximizing the Quality, Objectivity, Utility, and Integrity of Information Disseminated by Federal Agenciesを公開し、各省は、これを受けデータ品質管理のガイドラインを整備している。
GSAは、情報品質ガイドラインを整備し、その中でデータ品質ガイドラインを整備しており、各省もガイドラインを整備、公開している。
2019年に、情報品質法は改善されている。影響の大きい情報の定義(いわゆるハイバリューデータセット)、オープンデータの強化、データ再利用、モデル化と機械学習、政府外の情報、保護データの扱い等が追加されている。
データ法
2006年に、Federal Funding Accountability and Transparency Act (FFATA)が制定され、各省は調達契約情報を予算支出情報公開サイトであるSpending.gov(現Usaspending.gov)に公開することが求められるようになった。2014年にはThe Digital Accountability and Transparency Act、通称データ法が制定され、予算情報と支出情報を紐付けて公開することが求められるようになった。
そして、OMBが、予算、金融、金融支援、調達情報の標準を作り、財務省がUsaspending.govに送信するためのスキーマを定義した。
その上で、2018年にOMBはAppendix A to OMB Circular No. A-123, Management of Reporting and Data Integrity Riskを公表し、各省はData Quality Plan (DQP)を作ることとなった。
こうして予算関連を中心にデータ品質管理の強化が求められたことにより、政府全体におけるデータ品質の意識の醸成が図られている。
Federal Data Strategy(FDS)
2018年に米国政府のデータ戦略であるFederal Data Strategyが公表された。10原則で構成されるが、そのうちの4番目であり、設計に関する原則のトップがデータ品質である。
この原則を実現するために40の実践項目に分解されるが、そのうちの11-26までの項目が、データのガバナンス、管理、保護に関する項目で、データ品質に関する項目が提起されている。
さらに、優先的に取り組むころを定めたFederal Data Strategy2020アクションプランでは、ガバナンスの強化とデータ品質管理の強化が求められている。
統計委員会の取り組み(Action19)
データ品質管理に専門的知識を持っているのが統計委員会である。また、政府データの中で、統計は重要な基本情報である。そこで、FDSのデータ品質のデータ品質のガイド作成は統計委員会が行うこととなった。
これを受け、2020年に統計データの品質を管理するためのフレームワークがFederal Committee on Statistical Methodology (FCSM) 2020-4, A Framework for Data Qualitとして整備されている。
Federal Data Strategy Data Governance Playbook
データ品質を確実かつ安定的に確保するためにはガバナンスの仕組みが必要である。
そこで、FDSではデータガバナンスプレイブックを作成している。体制整備と成熟度測定やアーキテクチャ整備の方法を示している。
まとめ
米国にはデータマネジメントの民間団体であるDAMAもあり、DMBOKv2の13章でデータ品質の解説をしている。一方でデータ品質管理はまだまだ発展途上でガバナンスやトラストなど様々な観点から取り組みが行われている。また、開発手法や人材ガイドなどにも埋め込まれているので着実にデータ品質の向上は測られている。
FDSの動きは動いていないように見えるが、CDOカウンシルや民間の動きなど今後も注視していきたい。
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