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沢田研二2021 ソロ活動50周年ライブ「BALLADE」

バラードと銘打ちながら、隙あらば叫んでいた。
バラードとはなにかを問い直す、御年73歳のジュリーライブ。


2021.09.21 沢田研二2021 ソロ活動50周年ライブ「BALLADE」@京都 セットリスト

30th Anniversary Club Soda
時の過ぎゆくままに
君をのせて
追憶
海にむけて
あの日は雨
コバルトの季節の中で
根腐れpolitician
三年想いよ
雨だれの挽歌
TOKIO
渚のラブレター
明日は晴れる
Help! Help! Help! Help!
届かない花々
いくつかの場面
ヤマトより愛をこめて
ハートの青さなら空にさえ負けない

TOKIOは、バラードだったろうか。

1980年1月1日。
80年代の幕開けと共に鳴らされたディストーション・ギター。
耳を奪うイントロ。目を奪うパラシュートと電飾。糸井重里氏の歌詞。

どこから思い出してもTOKIOはバラードではない。バラードではないはずだ。何故セトリに入っているのか。


今年も一昨年同様、ジュリー&柴山和彦さん(ギター)のふたりだけで行われるライブ形式。
衣装は、紫地のヨーロッパ貴族風。

ご時世上、100%(満席)で開催されるライブ会場は、ここ京都と横浜くらい。その他の会場は50%で開催される。そもそも、開催会場が少ない。つまり、チケットの争奪戦が普段より熾烈だった。無論、普通に取れなかった。

通常販売でのチケット争奪戦に敗れ、流石に今年は無理だろうかと諦めかけていたとき、運良くリセールチケットを入手できた。有難い。今年もジュリーの歌が聴ける。
9月に入り、チケットを発券する。


まさかの1階席14列だった。

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豆粒ほどしか見えなかった一昨年の4階席とは違い、肉眼でもジュリーが見える。

リセールしてくださった方にあらん限りの感謝をしつつ、単眼鏡で余すことなくジュリーを眺めまわした。

何故、単眼鏡? 双眼鏡ではないのかって? 
それはもう、両目で見つめてはジュリーが眩しすぎるので。


いくつかの印象深い場面とともに曲感想。

30th Anniversary Club Soda

「終わらぬショウへ さあようこそ」の歌い出しから歓迎が伝わる。

時の過ぎゆくままに

イントロが鳴った瞬間、前曲からの拍手が一瞬で止んだ。
会場が即座に「よし聴くぞ」モードになる。

ザ・タイガースから数えて50年以上。
半世紀をともにするジュリーファンは百戦錬磨の猛者揃いだ、曲構えが違う。

君をのせて
追憶
海にむけて
あの日は雨

すこしのMC後、ソロデビュー曲「君をのせて」から再開。隙あらば叫ぶジュリー。

コバルトの季節の中で

コバルトブルーのライトで舞台を染めるかと思いきや、メインライトはオレンジ色だった(バックライトはコバルトブルー)。
秋色がよく似合いますね。

しあわせの手触りを感じていたところ、曲は足早に過ぎていった。

根腐れpolitician
三年想いよ

メッセージの強い曲たち。

雨だれの挽歌

本日のハイライト。ジュリーが歌詞を間違える。

「凍てついた~」から「~歌い続けて」までをすっぽかした。そのため、ラストフレーズのギターが若干狂った。本来はラスト前なのでカズさんが正しい。むしろ、1・2音でジュリーの間違えた方へ即座に修正したカズさんはすごい。


曲終了後。

『……間違えたな? 間違えたよ。オイラが間違ったんだな。カズさんあってたよね?』

(カズさんを見るジュリー)
(何も言わず、真顔のままのカズさん)

『すいません、そこからやります。何事もなかったかのようにきいてください。』

(「雨だれが~」から歌い直す)

『あの……ここからやっても、あかんかったな。もうちょっと前からやらんとあかんかったな。えー……あー……「色のない」から。』

(カズさんが該当箇所から弾きはじめる)

『あっ、あ、その前、その前から!』
(カズさんが「その前!?」と、困惑した目線を真顔でジュリーに送る)

※「色のない」から歌い直せば、すっぽかした箇所をカバーできるのに、「その前から」と言われ、カズさんは困惑したと思われる。

結局、3回歌った。

この間、会場は笑いに満ちていた。
ジュリーの話術は、すべての失敗を笑いに変える。芸人も驚きの話術である。

TOKIO

一瞬、なんの曲がはじまったかと思ったら「TOKIO」だった。印象的なイントロから変えていく大胆なアレンジ。

Q. TOKIOは、バラードだったろうか。
A. 間違いなくバラードです。
※ただし、このツアー限定。

渚のラブレター
明日は晴れる
Help! Help! Help! Help!
届かない花々
いくつかの場面

時折バラード、時折シャウトの後、いくつかの場面で泣かせてくる。


『ありがとうねー』と、挨拶をしつつ舞台を去るジュリー。ファンはいつもの通り、アンコールまでを拍手で繋ぐ。

すると、案外はやくジュリーが戻ってきた。

はやく戻ってきたのは恒例のアンコールお着替えがなかったためで、後ろのご婦人が、『今日はお着替えないのね。残念だわぁ。』と、漏らしていた。


アンコール前のMC


コロナの話から、自身や音楽業界の現状。ずっとライブに来てくれるファンへの感謝。若い頃、早川さんに20cmのロンドンブーツを履かされたことなどを徒然と話した後。

映画のこと。そして、キネマの神様について。

元々は、志村けんさんが演らはるはずの映画でした。
僕は、やっぱりどうしても、志村さんが演らはったほうが面白かったと思う。けど、そんなことを言うてもしょうがない。

僕が選ばれてしまって……とにかく、演ることはすぐに決めました。
ただ、一晩考えて。やっぱり、元々そういう話ではなかった。元々、自分ではなかったものを、壮年期、青年期を演って、自分の映画のように振る舞うのは、僕自身の気持ちとしては、どうも納得がいかない。

だから、条件はつけさせてもらいました。

宣伝活動については、僕だけのコメントを出すことはさせてもらいますが、舞台挨拶や取材については辞退したいと思っている。それでも良いのなら。

もうひとつは風体。ボサボサでしたけど、あの役はボサボサでも成り立つと思うたんです。ヒゲもそのままで。それでも良かったら演らせてください、と言うたんです。

なんやゴチャゴチャ言わんと、受けたらええやんと言う話かもしれません。が、ここまで、折角積み上げてきたと言いますか、そのキャリアを踏み外すことのないようにしたいな、と思った訳です。

こうして、みなさまからお仕事をいただける状態ですし、ここから先、僕がよっぽど、毎回毎回、何曲も間違えない限り、呼んでいただけるのではないかと期待をしている訳です。

好きな仕事は、映画もありますが、第一にライブをと思っている訳です。

みなさまには、重ね重ね、元気でいらしていただけるようお願いいたしまして、本日の挨拶と代えさせていただきます。

笑いと拍手に包まれる会場。
失敗を笑いに、さらに感動に変えてきた。
芸人どころの騒ぎではない話術である。

ヤマトより愛をこめて
ハートの青さなら空にさえ負けない

「BALLADE」と銘打ちつつ、歌い方は一昨年の「SHOUT!」が混ざっていた気もする。
が、ソロデビュー曲である「君をのせて」からの50年を物語ったライブであると考えたとき、今回の表題は確かに「BALLADE」だった。

ジュリーとともに歩んできたファンはしあわせである。
こうして半世紀以上にわたり、今なお、心に熱い火を灯してくれるのだから。


一昨年「SHOUT!」


気と機が向きました際に、是非。