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『ダーウィン・ヤング』原作読んでみた。

舞台を観たあと、すぐ買ったのに読み終わるまで約三週間かかってしまった。
最近の読書への集中力のなさ嫌になる。
逆に言えば、読み応えがあり、少しずつじっくり読み進めていくタイプの小説であった。

舞台を観たあと、とにかく「ひでー話だ…。」という気分だったのだが、救いのない結末に、ただ「ひでー話だ…。」で終わっていいのだろうか、その結末の向こう側にもっと深いものが沈んでいそうだという感じがして、その正体を探りたくて原作本を買った。

しかし、一回通して読んだだけでは、その結末の向こうに潜んでいるものの正体が掴みきれない。
何度か読んでやっとわかり始めるのかもしれない。
とにかく、一筋縄ではいかない小説なのだ。

とりあえず、舞台を観たときに思ったことと、小説を読んで思ったことの差を記録しておこうかと思う。その差は私が感じとれなかったのか、舞台化するにあたってあえて変えたのかはわからないが、違うな~と思った箇所がいくつかある。

以下、バリバリにネタバレ。

そもそも、プライムスクールが共学ではなく男子校。女子には後からプリメーラスクールという女子校ができた。これ、けっこう重要なポイントのような気がする。
やはり男性優位の社会である名残と、それでは今の世の中ダメですよっていう一応男女平等の世界。
この違いで、ルミの存在がすごく変わる。
舞台のルミはそれほど嫌な女の子ではなかった。まぁ鈴木梨央ちゃんが可愛いから。
小説版のルミは、ぶっちゃけ嫌な女感がすごい。16歳特有のプライドとか正義感とか、隠さず、世間に対してトゲトゲしたもので抵抗してる感じ。
その原因が父親のジョーイのうだつのあがらなさである。平凡な公務員であることをバカにしている(が、子どもなので親の庇護がないと立派な学校には行けてない)
まぁ、反抗期だよね。とにかく父親が嫌な時期なのだわ。

そして、そのジョーイが驚き!
ジョーイは母親が浮気してできた子ども。なので、ジェイにとって異父兄弟であり、母親の罪の象徴なのですよね。
この部分読んだとき衝撃でした。
しかも、ジョーイはニースが兄を殺したことを知ってた。でも、兄の意地悪から守ってくれたニースを慕っているから黙ってる。
なんという、複雑な!

あと、舞台ではそう思わなかったなという部分がバズとレオの関係。
私はバスとレオは仲良し父子だと思って観ていたのですが、小説ではわりと冷えた関係なんですよね。
バズがあまりレオと向き合ってない。レオがプライムスクールに合格したことに対しても冷たい。
舞台を観たときにバズだけは過去の因縁たちきったのかなと思っていたのだが、なかなかそうでもないらしい。
同性親子の関係性って複雑でむずかしい。

ニースとダーウィンは、舞台で観た感じの親子関係ではあるけど、ダーウィンが途中で父が犯人であることを知って自首させようとするくだりがけっこう長く書かれている。
その葛藤から、レオを殺害したあとに、自分の地位というか、社会的身分を手にいれてダーウィン・ヤングという自己を確立させるラストが、舞台よりもはるかにぞぞぞ~ってきた(気になるかたは実際に読んでほしい)

究極の罪を犯した少年の成長物語なのだけど、よくもまぁこのような設定と心理描写を書けたものだなと感心する。
そして、とても長いが、翻訳のコン・テユさんがものすごく読みやすく訳してくれてる。

読むのが大変なのだけど、再読するか~。
しないと、感想がまとまらない💦

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